書標 2005.12月号
今月の表紙 歳時記〈12月〉 著書を語る 特集「ロイヤルファミリー」 書標・書評
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ロイヤルファミリー

  先月、紀宮様の結婚式が行われた。シンプルで現代的なお式であった。民間に嫁がれることで、苦労も、また新しい幸せもこの先待っていることだろう。
 皇室典範改正など、皇室に関る様々な問題が叫ばれている今、これからの皇室を考えてみたい。そこで今月は、ロイヤルファミリーを特集しようと思う。

■ロイヤルファミリーの生活 〜日本編〜

 平成になり、開かれた皇室を目指す天皇皇后両陛下のご尽力によって、その存在はずいぶん身近になった。それまでは菊のカーテンに覆われていたロイヤルファミリーの生活も、垣間見ることができるようになってきた。だがそうは言っても、まだまだ雲の上の存在である。
天皇家の生活99の謎』(福知怜著・二見WaiWai文庫・520円)は、そんな天皇家の謎についてあれこれと答えてくれる。真偽のほどは定かでないが、つい「へぇ〜」と声が漏れてしまうトリビア満載だ。『天皇家の人々 皇室の全てがわかる本』(神一行著・角川文庫・480円)には、数多い天皇家の人々の簡単な紹介と相関図が付いていて、わかりやすい。式部職・書陵部など、皇室独特の官職にも触れてあり、現代に残された雅な世界を読むことができる。
 トーストにハムエッグ。日本の代表的な朝食のメニューだ。実は、これは昭和天皇が始めたそうだ。新しい食のスタイルは、まず皇室に入り一般へと降りてくるようだ。『昭和天皇のお食事』(板垣信久著・旭屋出版・3675円)は、そんな天皇の食事を写真入りで丁寧に紹介してある。普段の食は驚くほど質素であり、栄養バランスのよいものだ。『宮中の食器』(毎日新聞社・3990円)と合わせて眺めると、イメージがしやすい。どの食器も優雅なスタイルで、きらりと光る菊の御紋がまぶしい。こちらも儀式用の華美なものから、普段使いのシンプルなものまであり、いつも贅沢をしているわけではない。
 さらに紹介したいのが、『昭和天皇と鰻茶漬』(谷部金次郎著・文春文庫・560円)と『殿下の料理番』(渡辺誠著・小学館文庫・500円)の2冊である。前者は昭和天皇に、後者は現皇太子殿下に仕えた料理番だ。大膳と呼ばれる皇居の料理番は、フォーマルな料理から、毎日の食事までマルチにこなさなくてはならない。求められるのは、味もさることながら安全であること。天皇が唯一口に出来ない食材は、フグだそうだ。そんな特殊な料理人の仕事場から、食を通した天皇の人柄、食から見える時代の変化を、生き生きと伝えてくれる。前者は和食、後者は洋食の担当ということで、宮中儀式や晩餐会の裏話が覗けるのも楽しい。
 天気のよい日、丸の内を抜けて散歩へ出かけたくなるのが皇居だ。広い庭内と大きな緑は、東京の中心とは思えない豊かさを醸し出している。『皇居の森』(姉崎一馬、今森光彦ほか著・新潮社とんぼの本・1365円)は、そんな日本の中心を紹介した一冊。多くの写真で、皇居の四季を色鮮やかに綴る。『皇居 吹上御苑の生き物』(世界文化社・2520円)で、さらに詳しく皇居の生態系を調べてみるのも面白い。
 象徴天皇とは、日本特有の抑制文化が関係していると、『天皇の人生儀礼』(所功著・小学館文庫・580円)は語る。誕生前から、古式ゆかしい様々な儀礼が待ち受け、一つ一つが意味を持つ儀式を執り行う天皇は、最も厳しい抑制を受けていると言えよう。これだけの数をこなしながら国務も勤める体力には、脱帽の一言。

■ロイヤルファミリーの生活 〜世界編〜

 世界中に現存する王室、滅びた王朝を紹介した『世界王室最新マップ』(時事通信社編・新潮OH文庫・670円)は、読みやすく情報量も多いのでお勧め。どの王室にも歴史があり、ドラマがあり、今なお闘っている最中だ。相手は議会であり、軍であり、世論である。どこも、その存続をかけた必死の闘いだ。
 民衆とは隔絶されたヒマラヤの王室もあれば、北欧では本屋で立ち読みをしていたら、隣に女王がいたなんて話もある。だが全体の流れとして、王室も国民と共に生きようとする傾向にあるようだ。
ヨーロッパ王室物語』(別冊歴史読本・新人物往来社・2100円)では、普通の若者と変わらない、現代風の恋愛をするプリンセスたちを特集している。家柄・過去・国籍さえも問わない自由な感覚は、親しみを持たせる一方で威厳の失墜をも招き、王室の存在意義そのものにも関ってきている。
「百年後も残るのは、トランプのキングと英国王室だけ」と称された英国王室でさえも、存続の危機に立たされている。『ザ・ロイヤルズ』(キティ・ケリー著・祥伝社・2625円)は、その腐敗ぶりを厳しく暴いていく渾身の一冊。イギリス王室とドイツの関係など、あまり知られていない事実も載っており、興味深い。そして英国王室を語る上で外せないのが、ダイアナ元妃である。『別冊歴史読本 プリンセス・ダイアナと英国王室物語』(新人物往来社・2100円)は、ダイアナの子ども時代、チャールズとの愛憎劇、不倫相手の存在など盛りだくさんで、好奇心を満たしてくれる。愛用の宝石や、絵画、王宮の紹介もあり、きらびやかなロイヤルの生活を垣間見ることができる。
英国王室御用達』(恒松郁生著・小学館ショトルシリーズ・1575円)と『図説英国貴族の城館』(田中亮三著・河出書房ふくろうの本・1890円)を開くと、贅沢の規模が違う世界が広がる。皇太子の使いを追い返した職人の武勇伝もあり、日本とは異なる、王室と国民の関わりを読み取れる。



■ロイヤルファミリーを目指そう

 ロイヤルファミリーには憧れるけれど、世界が違うわと思っているあなた、そんなことはない。ロイヤルファミリーに倣うための本はたくさんある。
 まずは『ロイヤルグルメ』(谷部金次郎監修・成美堂出版・1260円)で、本物の味を知ろう。昭和天皇の好物鰻茶漬など、一生に一度は口にしてみたいものばかりだ。
 御用達という制度自体はもうないが、その信頼度は今でも高い。『皇室ご愛用こだわり銘品図録』(晋遊舎・1500円)を参考に、あの時あの方が! という物で身を包んでみるのもいいだろう。ロイヤルな気分に浸れることも魅力だが、商品の高品質は写真でも一目瞭然だ。
 ベーシックなデザインの中にも、控えめな刺繍やレースなどをちりばめた愛子様ファッション。愛子様とお揃いの服やおもちゃは、飛ぶように売れるそうだ。『愛子さま「モノ」語り リトルプリンセスのお気に入り』(松崎敏弥監修・天才工場編・東邦出版・1575円)は購入ガイドとともに、モノにこめられた皇太子御夫妻の愛情が感じられる。
 
 形が整ったら、次は内面磨きへ。『もしも宮中晩餐会に招かれたら 至高のマナー学』(渡辺誠著・角川oneテーマ21・600円)は、ある日突然、菊の御紋入りの招待状が届いたらという設定で、招待状の読み方や衣装の選び方、食事の進行に合わせた様々なプロトコル(世界共通のマナー)を、丁寧に説明してくれる。ただマナーとは、自分や周囲が心地よく過ごすための気遣いであり、自発的な礼儀作法であるべきと著者は言う。ロイヤルの気品を身に着けるためには、弛まぬ努力が必要のようだ。
 文字通りのロイヤルファミリーを目指すなら、一般人の場合、皇族と血縁関係になるしかない。それにはやはり、『學習院初等科受験バイブル』(山本紫苑著・ゴマブックス・1575円)で、わが子をご学友にするしかない。受験までの日々の過ごし方や面接日の服装など、かなり具体的なバイブルとなっている。

■法律改正論議

 現在、問題となっているのはお世継ぎについてである。『お世継ぎ 世界の王室・日本の皇室』(八幡和郎著・平凡社・1470円)はタイムリーにその問題を扱った新刊。日本だけでなく、世界的に深刻な難題を、ゴシップも盛り込みながら、総合的に論じている。
 皇室典範には、皇位の継承は男系男子に限ると規定されているが、皇室には長い間男の子が誕生しておらず、このままでは皇室の存続が危ぶまれる。そのため、皇室典範の改正が論議されているのだが、問題はそう簡単ではない。
 歴史的には女性天皇の前例はあるが、女系つまり女性天皇の子孫が皇位を継いだ例はないというのが、通説となっている。女系だろうが男系だろうが、どっちでもいいじゃないかという感覚からいくと、女系継承を認めないのは不自然であるが、皇位継承の歴史や伝統、現代日本における天皇制の意味などを踏まえ、様々な意見がある。
天皇家の掟』(佐藤由樹、鈴木邦男著・祥伝社新書・840円)では、皇室典範改正を議論している。女帝を容認するかどうか、女系への継承も認めるか、男女の区別なく第一子に継承してはどうか、など皇位継承のいくつかの論点をわかりやすく説明してあり、手ごろな入門書。戦前および現在の新旧皇室典範を、成り立ちから詳しく解説してあり、議論を深める資料となる。右翼の論客・鈴木邦男が各項目に、独自の視点で寄せたコメントも面白い。
女性天皇論 象徴天皇制とニッポンの未来』(中野正志著・朝日選書・1365円)は、朝日新聞の元論説委員がこの問題についてまとめたもの。皇位継承を男系に限るのは、大日本帝国憲法下で天皇を神格化しようとしたイデオロギーの名残であるとして、歴史的には女系への継承もあったのではないかと、徹底的な検証を行っている。
 皇室典範に関して、憲法学者の立場から議論を深めているのが『「萬世一系」の研究』(奥平康弘著・岩波書店・5145円)である。日本国憲法において「万人」に保障された「人権」が、天皇には認められていないことは(例えば、退位の自由がないことなど)象徴天皇制度における大きな矛盾ではないかと指摘する。
 いずれの本でも、伝統的にどのような皇位継承が行われてきたかを紹介している。それを確認するのに便利なのが、『歴代天皇総覧 皇位はどう継承されたか』(笠原英彦著・中公新書・987円)だ。即位の経緯や事跡など、天皇に関するあらゆることがまとめられている。著者は『女帝誕生』(新潮社・1470円)という本も執筆している。こちらでは、旧皇室典範における男系男子継承の規定は、側室によって支えられることを前提としていたものであり、大正天皇以降、側室制度を廃止した現代においては、女性天皇を認めるべきだとしている。
 また、それとはまったく反対の立場から書かれた『語られなかった皇族たちの真実』(竹田恒泰著・小学館・1365円)が12月中旬に刊行される予定だ。竹田宮恒徳の孫である著者が、旧宮家の立場から「皇室の存在意義を守り抜くために、旧皇族の男系男子は責任を果たさなくてはならない」と語る。

ロイヤルファミリーの肖像

 ここでは、天皇・皇族の人間像を追った書籍を紹介していこう。
大正天皇』(原武史著・朝日選書・1365円)は、あまり実像の知られていない大正天皇について詳しく取材したもので、大きな話題となった。一般に伝わる大正天皇像は病弱で、「遠眼鏡事件」などの噂もあり、精神状態にも問題があったように語られている。本書ではこのような風説がどのように発生したのかを調べるとともに、側室制度を廃止し、家族思いで子煩悩だった大正天皇の真の人間像に迫る。
 昭和天皇については数多くの本が出ているが、『昭和天皇』(保坂正康著・中央公論新社・3360円)が、昭和史に関する本を数多く執筆しているジャーナリストによる評伝で面白い。大戦を挟んで、立憲君主から象徴天皇へと天皇の地位は大きく変化した。その中での一貫した人間像、昭和史において天皇の果たした役割などを読める。
陛下の御質問 昭和天皇と戦後政治』(岩見隆夫著・文春文庫・550円)は、毎日新聞論説委員を経験した著者が、昭和天皇の肉声に接した歴代首相経験者や官僚に取材したもの。なかなか知ることのできない、天皇の意外な素顔を垣間見ることができる。
四代の天皇と女性たち』(小田部雄次著・文春新書・735円)では、明治から平成へ至る四代の天皇と、その皇后、側室について取材している。一夫一妻制を是とする国民感情の変化に合わせ、側室が廃止された経緯を詳しく紹介するなど、あまり表立って取り上げられない皇室の姿を多数の写真を混ぜながら描く。著者は『ミカドと女官』(扶桑社文庫・750円)でも、近代の天皇と後宮をテーマにしている。
秩父宮』(保阪正康著・中公文庫・1500円)は、昭和天皇の弟宮であり、戦前は陸軍の軍人として、戦後はスポーツの振興に尽力し、秩父宮ラグビー場にその名を残す秩父宮雍仁親王の評伝。2・26事件の黒幕説もあった親王だが、著者はこの噂を断ち切り、大戦前の反英米の潮流にいかに抵抗したか、終戦工作に果たした役割、また戦後に開かれた皇室を模索した姿などを描いている。
高松宮と海軍』(阿川弘之著・中公文庫・560円)は、やはり昭和天皇の弟宮である高松宮宣仁親王について書かれた本。親王は昭和史研究の第一級資料といわれる「高松宮日記」を残しており、その日記を公刊するに当たって編纂作業に携わった著者が、出版までの苦労話を交えながら親王にまつわるエピソードを紹介している。
 高松宮については喜久子妃殿下が書いた『菊と葵のものがたり』(中公文庫・680円)という本も出ている。最後の将軍・徳川慶喜の孫として生まれ、高松宮妃として皇族となった妃殿下が、慶喜公の思い出話や、皇室秘話、「高松宮日記」公刊に至る経緯などを語っている。
 皇族とは、あまり注目されない存在だが、周辺から皇室を支える、重要な人々なのだ。
おことば 戦後皇室語録』(島田雅彦編著・新潮社・1470円)は、玉音放送から神格否定発言まで、戦後60年を「おことば」から振りかえるアンソロジー。多くを語らない彼らの、貴重な記録となっている。
 現皇后陛下だけのお言葉を集めた『あゆみ 皇后陛下お言葉集』(海竜社・3990円)は、皇后になられてからの17年間をまとめた、分厚い本だ。昭和天皇と今上天皇に支えられて、今の自分があるというスタンスを、皇后陛下がずっと守り続けていることがわかる。英文学にも造旨が深い皇后陛下の、英語でのスピーチも原文で載せられていて、まさに全記録だ。
 ご結婚と合わせて『ひと日を重ねて 紀宮さま御歌とお言葉集』(紀宮清子著・大東出版社・2310円)も刊行された。内親王という立場、皇室から民間へ嫁いでいくまでを丹念に綴っている。鳥類の研究をされていただけあって、御歌には自然への愛情があふれている。





■ロイヤルファミリーを語る

 皇室を語る本は多く出ている。
図説 皇室のすべて』(学習研究社・1365円)は、世界最長を誇る日本の天皇家について、あれこれと解説している。最新の出来事ももれなく拾ってあるので、現在の皇室を読むのによい。
 皇室ジャーナリストという新しい立場を確立した著者が語る、『戦後60年、私が見てきた天皇家の愛と苦悩』(河原敏明著・講談社・1575円)が、10月に刊行された。皇太子独占取材までの経緯や、紀宮様ご結婚の裏話など、各事件の取材秘話が語られる。
 これまでの皇室報道の方向を指摘する『皇室報道の舞台裏』(皇室担当記者OB編・角川oneテーマ21・650円)は、宮内庁とマスコミの対立や、皇室をどう伝えるかといった問題に触れてある。
 雅子様の御懐妊報道騒ぎにも見られる、公人と私人の線引き問題などは、非常に微妙であるため、各取材人の良識によるようだ。メディア自体が法律の枠内で様々なタブーを抱えており、自然と報道は冠婚葬祭に集中する。
 なにか別の切り口はないかということで書かれた『天皇家の財布』(森暢平著・新潮新書・714円)は、予算から定量的に皇室を分析した一冊。皇室の家計簿という観点で、細かく金額を上げて論じてある。皇太子の留学費は帝王学勉強ということで公費、秋篠宮様の家族旅行は私費、など絶妙なやりくりからも皇室の難しい財政が見えてくる。
 また、精神科医・香山リカが皇室を分析する『〈雅子さま〉はあなたと一緒に泣いている』(筑摩書房・1365円)は、雅子様を手がかりに現代女性のおかれた状況や問題を追及している。
 仕事と出産の両立という、現代女性なら誰もがぶつかる壁に、雅子様も直面した。皇室存続という重い課題が彼女の細い肩にのしかかっていることを思うと、そのプレッシャーたるや想像を絶するものがある。女性の真の幸福とは? 緒方貞子、田中真紀子や小渕優子といった他のキャリアウーマンたちも例に挙げながら、検証していく。そのダイアナ妃版ともいえる『結婚幻想』(ちくま文庫・609円)という本もある。

■ロイヤルファミリーと文化

 様々な文化にも寄与してきた皇室。
皇室切手』(内藤陽介著・平凡社・2310円)は文字通り、皇室切手をまとめた一冊。たかが切手と侮るなかれ。この本を読むと、国家のメディアとして様々な時代の様相を反映してきたものだとわかる。
皇室の名宝・名所ガイドブック』(米田雄介著・毎日新聞社・1470円)は、皇居から京都御所までの数々の名所や、正倉院の宝物など、独特の様式美を堪能できる一冊。休日には、本を片手に古きよき日本を訪ねてみるのも、乙なもの。
 皇室と縁の深い地として、軽井沢が第一に挙げられる。避暑地として人気の高い軽井沢のテニスコートで、天皇陛下と皇后陛下が出会ったことは有名だ。『軽井沢のほん』(星野和彦著・信濃毎日新聞社・1785円)は、演出家の著者が撮り下ろし写真とイラストとエッセイで、軽井沢をコレクションする。文学散歩の最中に、あなたにも運命の出会いが訪れるかもしれない。
 天皇一家の音楽を書いた『音楽の聞こえる小さな家 ハーモニーに包まれた皇室の肖像』(鎌田勇著・時事通信社・1890円)は、皇太子殿下のビオラ、雅子様のフルートと、音楽でつながった家族のあたたかい時間を伝えてくれる。会社の社長と、オーケストラを二足のわらじでやってきた著者の人生論も、興味深い。
皇后さまの御親蚕』(扶桑社・2400円)は、毎年、春から夏にかけて皇后陛下が紅葉山御養蚕所で養蚕をする様子や、それが正倉院の宝物染織復元に使われるまでを描いた本。
 皇后陛下のご活躍は多岐にわたる。歌集である『瀬音』(大東出版社・3675円)も出版されている。
 さらに、教育にも関心が高く、それまでの慣習をやぶってご自分で、皇太子殿下たちを育てたことは知られている。その姿勢は今の皇太子殿下にも受け継がれ、雅子様と一緒に、愛子様を育んでおられる。
 皇后陛下の文学性と、教育への関心が結びついたのが、児童文学の世界だ。ご自分で訳されたものに、『どうぶつたち』(まどみちお詩・安野光雅絵・すえもりブックス・2100円)と『ふしぎなポケット』(まどみちお詩・安野光雅絵・すえもりブックス・2100円)の二冊がある。「ぞうさん」などでお馴染みのまどみちおの詩と、対訳として皇后陛下の英文が載せられている。詩の語感を忠実に再現したその訳は世界的に評価された。美しい切り絵もぜひ見て欲しい。
 そんな、皇后陛下の児童文学にかける思いを知ることが出来るのが、『橋をかける 子供時代の読書の思い出』(すえもりブックス・1365円)と『バーゼルより 子どもと本を結ぶ人たちへ』(すえもりブックス・1890円)だ。前書は1998年9月、ニューデリーで行われた国際児童図書評議会第26回世界大会での、皇后陛下の全講演を収録。後書は2002年9月、バーゼルで開かれた同会に出席された陛下のスピーチや、現地での写真や日程表を加えた記録だ。皇室史上初の皇后単独の海外訪問としても、話題となった。
 皇太子殿下が書中の詩を記者会見で紹介して話題になったのが『あなた自身の社会 スウェーデンの中学教科書』(アーネ・リンドクウィストほか著・新評論・2310円)だ。(※)その詩は、『子どもが育つ魔法の言葉』(ドロシー・ロー・ノルト著、石井千春訳・PHP文庫・580円)にも別の訳で載っている。「けなされて育つと、子供は人をけなすようになる。励ましてあげれば、子供は自信を持つようになる」など、シンプルだが納得させられる子育ての言葉がたくさんだ。
 そして愛子様お気に入りの絵本として、どこの書店の児童書コーナーにも山積みしてあるのが『うずらちゃんのかくれんぼ』(きもとももこ作・福音館書店・880円)だ。3〜4歳向けの絵本だが、その優しい絵と、ほのぼのとしたストーリーは大人が眺めても楽しい。『うずらちゃんのかくれんぼ 英語版』(ミア・リン・ペリー訳・アールアイシー出版・2100円)も出版されている。

 以上、皇室に関して本を紹介してきた。様々な分野に跨っているので、まとめきれていない感は残るが、調べてみて感じたのは、その出版点数の多さであり、それだけ関心が高いということなのだろう。
 お世継ぎ問題や、紀宮様ご結婚で、また皇室に注目が集まり、新刊が争って出版されている真っ最中である。この特集で興味を持ったなら、ぜひそちらも手にとってほしい。


※本誌で『子どもが育つ魔法の言葉』を皇太子ご夫妻が紹介した、としていましたが誤りです。平成17年2月21日の記者会見で皇太子殿下が紹介されたのは『あなた自身の社会 スウェーデンの中学教科書』です。お詫びして、訂正いたします。