書標 2005.9月号
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今月の表紙  その208 伊丹三樹彦


 亀も龍も馬も刻まれ 神の使者

 御存知の神田明神の大門だ。近年、建替えられたので、朱塗も鮮やかである。斗きょうと稱して、垂木と共に組物が実に美しい。と、いっても韓流や中国流の方が、もっと混み入っている。いわゆる唐様と和様の相違であろう。
 門前で旧知の俳句仲間と出喰わした。彼らは会旗を飜し、20名前後は居たか。やあ、やあと声を交して、僕たち一行とは、すれ違った。門前に新旧の甘酒屋が、競って居る。僕たちは旧の店構えを選んだ。
 ここは甘酒の素を地下で仕込んで居り、小さな狭い店と思いきや、複雑な構造を見せる。といっても、実はテレビで見たのであって、僕たちは、狭い店内に陣取って甘酒の類を好みに応じて摂ったに過ぎない。客はひっきりなしにやって来、少々の待時間は心得がち。それに、明神境内には銭形平次らの記念碑などがある。小説の主人公なのに……。


(表紙題字 陳舜臣)