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終戦60周年を迎える今年4月、広島県呉市に大和ミュージアム(正式名称・呉市海事歴史科学館)がオープンした。12月には映画「男たちの大和YAMATO」(原作辺見じゅん著『決定版男たちの大和 上下』角川春樹事務所・ハルキ文庫・各735円)も公開予定ときく。今年は戦艦大和にとっても沖縄特攻作戦の途上、米軍機の激しい攻撃を受け、坊ノ岬沖に無念にも沈んでから60年にあたるのである。
大和ミュージアム内には戦艦大和の10分の1模型が置かれている。模型といっても本物は全長263メートル、その10分の1でも全長は26メートルになる。復元は細部にもこだわり、妥協を赦さない精密なもので、「模型をつくるのではない、10分の1の大和を造船するんだ」という意気込みで造られた。そのプロジェクトのスタッフの苦労と闘いの様子を大和ミュージアムの館長である戸高一成氏が『戦艦大和復元プロジェクト』(角川Oneテーマ21・760円)に描いている。
正確に復元するには図面の正確な再現が必要になる。しかし戦艦大和の資料は機密保持のため終戦時にほぼ焼き尽くされており、終戦直後に大和の設計主任だった牧野茂氏がGHQからの要請で復元した図面や、戦艦大和の基本計画メンバーだった松本喜太郎氏が残した資料(『戦艦大和の設計と建造 大和型戦艦主要全写真集+大型図面』アテネ書房・21000円)、呉海軍工廠に勤務していた北木兼一氏が保存していた資料(『呉市海事歴史科学館図録日本海軍艦艇写真集別巻 戦艦大和・武蔵』ダイヤモンド社・3990円 この度初公開)、ポーランドの研究家ヤヌス・シコルスキー氏の驚異的作図能力による『戦艦大和図面集』(光人社・5250円)に加え、百枚を越える大和・武蔵の写真、海底調査のビデオから出力した2000枚もの写真をもとにした資料などが図面作成のもとになったという。
海底調査は戦後何度か行われた。生還した元乗組員で結成された「戦艦大和会」により水中撮影に成功したのは1982年。さらに85年、作家の辺見じゅん氏が委員長を務める「海の墓標委員会」が潜水艇での探索を実現。実弟の角川春樹事務局長が実際に潜水艇に乗船して大和の菊花紋章を確認、ビデオに収めた。その模様が『戦艦大和発見』(辺見じゅん、原勝洋編・ハルキ文庫・714円)にまとめられている。沈没位置の確認、戦没者の鎮魂・慰霊にいたる探索のルポルタージュに元乗組員100人の証言、建造時の設計秘話を所収。
さらに1999年、テレビ朝日の番組「今よみがえる戦艦大和」のためにタイタニック引き揚げチームが大和を探索している(『タイタニックから戦艦大和へ』工作舎・江野夏平=番組のディレクター著1680円)。さらにテレビ朝日では、日本海軍艦艇模型保存会を主催していた河井登喜夫氏が戦後50年を記念して作成した100分の1のスケールモデル、戦艦大和を建築スコープカメラを用いて特写し、あたかも我々が大和に乗艦したかのような映像を公開した(『甦る戦艦大和』工作舎・3360円)。この時既に河井氏は10分の1の模型の建造を計画、完成品は呉市が建設予定中だった博物館へ寄贈することになっていたが、平成11年に夢を果たすことなく他界された。その夢を呉市が引き継ぎ、今回のプロジェクトとなったわけだ。
資料としては他に『戦艦大和建造秘録 完全復刻資料・写真集』(原勝洋編著・KKベストセラーズ・7000円)や、精密3DCGで再現された『戦艦「大和」』(歴史群像太平洋戦史シリーズ・学研・2100円)や『戦艦大和』(CG製作松野正樹・双葉社・3990円)がある。
また、前述の松本喜太郎氏や開発・建造に携わった造船官らによる証言(船体構造から、射撃システム、光学機器など技術面)を集めた『戦艦大和開発物語 最強戦艦誕生に秘められたプロセス』(光人社NF文庫・730円)や、建造について書きながらも大和を戦艦という形にしていった工員、技手たちの“人間の記録”に主眼を置いた『戦艦大和の建造』(御田重宝著・徳間文庫・560円)も大和を後世に伝える貴重な資料である。
戦艦大和の最期がはじめて一般に明らかになったのは1952年である。戦艦大和から生還した若き海軍士官吉田満氏が敗戦直後に一気に書き上げた『戦艦大和ノ最期』(講談社文芸文庫・987円)がやっとこの年完全なかたちで刊行されたのである。虚飾も誇張も交えぬ文語体で書かれた迫真の手記であるが、書き上げた直後は戦争肯定の文学、軍国精神鼓吹の小説であるとして、米軍の検閲で発禁処分となった。『戦艦大和』(吉田満著・角川文庫・504円)にはそのいきさつのわかる「占領下の『大和』」、52年に世に出た後も日本人の文芸評論家や学者から同様の批判があり、風当たりが強かったことが記されている「一兵士の責任」など六篇とともに、阿川弘之、林房雄 、三島由紀夫、小林秀雄らの解説文も付されている。その後、吉田氏は日本銀行員、キリスト教信者として生涯を送りながら戦争の悲惨さや空しさの体験をあらゆる機会をとらえて語り伝えることを使命として活動した。吉田氏と同じく日銀で働きながら氏とともに行内文芸誌の編集に携わった千早耿一郎氏が吉田氏の没後25年の昨年に刊行した『大和の最期、それから 吉田満戦後の航跡』(講談社・1995円)には吉田氏のひととなりとその生き方が詳細に記されている。
戦艦大和の生還者や元乗組員が当時を語ったものには、『戦艦「大和」暗号士の終戦 一海軍予備学生のフィリピン戦記』(永沢道雄著・光人社NF文庫・780円)、『戦艦大和いまだ沈まず』(小板橋孝策著・光人社NF文庫・760円)、『戦艦大和の最後』(坪井平次著・光人社NF文庫・760円)などがある。艦橋見張員だった小板橋氏は同僚の下級兵士たちが艦を守りながら海に沈んでいったさまを語る。氏自身も「大和」の鋼板の破片を体に受けたままである。
戦艦大和の研究書は数多く刊行されている。『戦艦大和』(平間洋一編・講談社選書メチエ・1680円)では戦艦大和に対する日本人の関心が高く出版物も多いが、不正確な記述も多いとしている。本書では最新の研究を元に大和建造の意味と沖縄特攻について分析を試みている。
戦艦大和研究の第一人者、原勝洋氏には『伝承・戦艦大和 上下』(光人社・各2650円)、『真相・戦艦大和ノ最期』(KKベストセラーズ・2520円)、『決戦戦艦大和の全貌』(アリアドネ企画・2730円)、『戦艦大和のすべて』(インデックスコミュニケーションズ・3465円)など多くの著書があり、研究成果を知ることができる。
『「大和」とは何か 巨大戦艦にみるソフト学』(日下公人、三野正洋著・ワック・1680円)は、経済評論家の日下氏と空気工学の専門家で軍事・現代史の研究、著述家でもある三野氏という全く異なる視点をもつ2人が独自の見解をキャッチボールしながら「大和論」を繰り広げる。
最後に戦艦大和から着想を得て、生み出されたシミュレーション小説を紹介したい。
『超航空戦艦「大和」戦記1』(遠藤昭著・コスミック出版・900円)航空戦の時代を生き抜くために大和は航空戦艦として誕生し、暴れまくる。『戦艦大和修羅の航跡』(稲葉稔著・ワンツーマガジン・3巻まで刊行・各840円)大改造して当時のハイテク技術を搭載した大和が活躍。『飛行戦艦大和出撃』(青山智樹著・経済界・3巻まで刊行・各890円)では、ついに「大和」は空を飛ぶ。
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