書標 2005.2月号
今月の表紙 歳時記〈2月〉 著書を語る 特集「ジュンク堂の新書100冊」 書標・書評
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ジュンク堂の新書100冊

 最近はいくつもの出版社から新書が発売され、活況を呈している。『バカの壁』のヒットも記憶に新しい。数が増えたことで内容も多岐にわたり、いろいろなテーマに触れることができるようになった反面、どれから読んだらいいのか迷ってしまうということも起こりがちだ。そこで今月は、ジュンク堂の専門書の書棚でロングセラーとなっている、読んで間違いのない基本の百冊を選び出して解説をつけた。読書の指針となれば幸いである。

■社会

法医学入門』(八十島信之助著)小説やドラマなどで死因を判定する場面をよくみるが、実際はどのようにして判断がなされているのか、図を多用してわかりやすく解説する。

日本人の法意識』(川島武宜著)日本人の法に対する意識に焦点をあて、法律との間に存在するずれの変容や消滅の過程を事例とともに考察する。

法とは何か 新版』(渡辺洋三著)長く読まれてきた法学入門書の全面改訂版。近現代法史や人権、国際法の新項目も盛り込まれ、初学者のためのテキストとしてより充実した構成となっている。

国際政治』(高坂正尭著)平和を実現するためにはどうすればいいか。国家利益のみならずイデオロギーが絡むことによって複雑怪奇さが増している「国際政治」を軍備、経済などの具体的事例から平易に解析する。

戦略的思考とは何か』(岡崎久彦著)日本における初の国家戦略論。発刊から20年以上経ち、国際情勢の変化から当時より日本が否応なく戦争に直面する場合を想定することが荒唐無稽とは言えなくなっている現在、戦略的思考を学ぶことが以前に増して必要かもしれない。

なぜ国家は衰亡するのか』(中西輝政著)大英帝国、ローマ帝国などの例から国家が衰退するのは外的要因ではなく「内なる原因」からであることを検証し、衰亡へと進んでいる現代日本が再生するための道を示す。

セーフティーネットの政治経済学』(金子勝著)長期停滞を解消するためには将来不安の解消が必要であり、そのための方策としてセーフティーネットを張りなおす制度改革が必要である。従来の経済学の二分法を越えた第三の道を示す。

社会的共通資本』(宇沢弘文著)市民的自由が最大限に保障され、人間的尊厳と職業的倫理が守られ、しかも安定的かつ調和的な経済発展が実現するための装置としての「社会共通資本」という考え方に基づいた現代の諸問題への著者の思索。

幻想のグローバル資本主義 上』(佐伯啓思著)アダム・スミスとケインズという二大経済学者の「グローバル・エコノミー」への視点を読み解くことで現代のグローバリズムの問題点への見方に繋げ、現代のグローバル資本主義がはらむ矛盾と危険性を論じる。上巻がアダム・スミス編、下巻がケインズ編。

資本論の世界』(内田義彦著)人間にとって資本主義は何を意味するか。「資本論」体系という形を取らざるをえなかったマルクスが現代のわれわれに何を伝えようとしているかが見えてくる。

貨幣とは何だろうか』(今村仁司著)「人間にとって貨幣とはなにか」という問いに対して、経済的な側面からではなく、人間の根源的条件から考察する。ゲーテやジイドの小説を貨幣との関わりから読み解くなどの試みが興味深い。

経済学の考え方』(宇沢弘文著)経済学とはどんな学問であるか、経済学の考え方とは何かについて、著者がこれまで感動を覚えながら読んだ経済学書を中心にして自身の考え方を著している。文献は古典から現代までにわたっている。

日本経済図説 第三版』(宮崎勇著)豊富なデータと図表を盛り込んだ日本経済の解説書。最新版への改訂にあたり、「IT革命と情報化社会」の一章も新たに加えられた。好評入門書。

豊かさとは何か』(暉峻淑子著)物質的には豊かだが、精神的に満たされていない日本の姿を問うた本。本書はバブル期に書かれたものだが、現在でも十分通用する内容である。15年間で変わったこと、未だに変われないでいることなど、比較しつつ読むと一層興味深い。

不平等社会日本』(佐藤俊樹著)「努力すればナントカなる」のか「努力してもしかたがない」のか? 長年の社会調査を基に「総中流」時代が終わり階級社会に近づきつつあることが社会に歪みをもたらしていると解析し、真の機会平等社会への道を模索する。

人口減少社会の設計』(松谷明彦著)現代日本の急速な人口減少が厳然たる事実であることをふまえ、それをただ憂慮すべき事と捉えるのではなく、その変質のプラス面を生かすことで質的に成熟した社会を作る方策を示す。

現代社会の理論』(見田宗介著)現代社会をゆたかな社会としている情報化/消費化社会という社会システムが持つ魅力と、必然的に直面する限界を環境、公害、資源、飢餓などの問題から直視する。

日本の思想』(丸山眞男著)日本の思想史の包括的な研究がなぜ貧弱なのか、という問題提起から、その日本的特質が何に由来するものかを構造的に読み解き、これからの日本の思想はどうあるべきかを問うた文明論的考察。

ナショナリズム』(浅羽通明著)著者の企画する日本思想入門シリーズの第一弾。近代日本のナショナリズムの起源とその諸相を小説から軍歌の歌詞、コミックなどのテキストを用いて網羅。同著者の『アナーキズム』もおすすめ。

「不自由」論』(仲正昌樹著)昨今何かというと「自己決定」が求められるようになってきているが、意味が曖昧なままで言葉のみが独り歩きしている。その前提である「自由な主体」の契約により社会が形成される、という西欧近代思想の考えの限界が明らかになりつつある現代において「自己決定」とは何かを考える。

フォト・ジャーナリストの眼』(長倉洋海著)時に死と隣り合わせになりながらも写真を撮り続けるフォト・ジャーナリストは何を見ているのか。海外でも日本でも「右目でファインダーを、左目でそこには映らない世界を」見てきた著者の12年にわたる取材の記録。

「知」のソフトウェア』(立花隆著)知的情報のインプットとアウトプットという分野は一般論が成り立たない。方法論は多くあるが試行錯誤は無益だ。長年それを生業にしてきた著者が方法論発見のヒントとして個人的な覚書を書いた。

発想法』(川喜田二郎著)著者の野外科学研究におけるデータの整理と統合のために考案され、ビジネスの現場でも創造的発想法として広く用いられたKJ法の技法と効果の解説書。60年代の出版であり、やや古いと思われる部分もあるが発想の方法そのものは現在でも有用だ。

社会科学の方法』(大塚久雄著)自然科学とは違い人間の営みを対象とする社会科学において科学的認識は成立するのか。マルクスとヴェーバーがこの問題をどのように捉えていたかを例にとって検討し、今後の社会科学の方向をも指し示す。

分かりやすい表現の技術』(藤沢晃治著)不親切な案内標識、使えないマニュアル。日常に氾濫する「分かりにくさ」を生み出す犯人を見つけ出し、具体的な対応策を提示する。


■人文

歴史とは何か』(E.H.カー著)「歴史とは何か」「歴史的事実とは何か」「歴史は科学なのか」。本書は、こういった歴史というものの根本問題について丁寧に論じた歴史哲学の書物であり、「歴史」という学問を考える上で重要な一冊である。

日本社会の歴史 上  』(網野善彦著)日本列島で生活していた人々が最初から日本人であった訳ではない。「はじめに日本人ありき」といった歴史の見方を改め日本列島の人間社会の歴史を民衆社会の側から捉え直した、新しい試みの書。

神々の明治維新』(安丸良夫著)廃仏毀釈・神仏分離とは、明治維新という大変革の中で起きた単なる一時的な逸脱ではない。廃仏毀釈・神仏分離が引き起こした日本人の精神史の一大転換を克明に描き出した好著である。

キメラ――満州国の肖像』(山室信一著)日本人が初めて経験した多民族共生国家「満州」とは一体如何なるものであったのか。「満州」を様々な角度から分析し、さらにそれを支えた近代日本の国家観や民族観、アジア観をも問い直す、意欲的な一冊である。

民族と国家』(山内昌之著)冷戦後、浮き彫りになった民族と国家をめぐる未曾有の問題について、著者の専門であるイスラーム史の視点からアプローチしている。現在のイラク問題を考えるうえでも、重要な視座を与えてくれる論考。

バナナと日本人』(鶴見良行著)安価でどこでも手に入るバナナだが、その生産や流通の在り方、歴史を追ってゆくことで、バナナの裏側にある「アジアの貧しさ」の構造やアジアと日本の歪んだ関係をはっきりと浮かび上がらせる。

タテ社会の人間関係』(中根千枝著)日本のあらゆる社会集団に共通して見られる人間関係の分析を通して、社会人類学の立場から日本的社会構造の特性を「タテ関係」と論じた著。刊行以来、百万部を超え、外国語にも翻訳された本書は、日本社会を考えるうえで今も大きな影響を与えている。

気違い部落周游紀行』(きだみのる著)社会学者が戦中・戦後を通して過ごした、とある集落の生活の記録である。そこに書かれた村人の言動は、外から来た観察者ではなく、一村人として村の中で生きた著者だからこそ記録しえたものである。

社会学講義』(富永健一著)新書で読める最もまとまった社会学概論。社会科学一般に関するある程度の予備知識を前提として書かれており水準は高い。広範な研究領域にまたがる今日の社会学を網羅的に解説した本書は、その全体像を把握するのに役立つだろう。

自由とは何か』(佐伯啓思著)自由の概念をめぐる歴史的変遷を辿りながら、現代における自由の意味を根源から問い直したもの。保守論客としても知られる著者だが、「個人の選択の自由」を謳う現代リベラリズムに対する批判は手厳しい。

大衆教育社会のゆくえ』(苅谷剛彦著)高学歴を求める風潮と学歴崇拝や受験戦争に対する批判。こうした日本独特の教育に対する考えが生まれた経緯を探り、またこうした考えが日本社会の形成にどう影響していったかを鋭く分析する。

弱者とはだれか』(小浜逸郎著)日本社会において「弱者」を語る時に感じる、言いにくさや遠慮がなぜ生じるのかついて考察したもの。障害者や部落差別、マスコミの自主規制などの例を挙げながら、その問題点を抉り出し乗り越えるための方法を提案する。

子どもの社会力』(門脇厚司著)「社会力」とは著者の造語で、社会を作り変革していく力を指す。いじめや学級崩壊など子どもの社会力が低下している現象を取り上げ、その原因や背景を考察。子どもの社会力育成には多様な相互行為の場が必要と指摘し、地域社会による教育の重要性を説く。

子どもと自然』(河合雅雄著)著者は日本における霊長類学の創始者の一人。子どもを取り巻く自然や環境がヒトの発達に及ぼす影響について考察したもの。サル社会との比較を交えつつ、人類学的見地から論じられる教育問題への提言は示唆に富んでいる。

子どものための哲学』(永井均著)「なぜ悪いことをしてはいけないか」、「なぜぼくは存在するのか」――。著者が子どもの頃に抱いた、この二つの素朴な疑問をめぐって徹底的に考えた。〈子ども〉の驚きをもって発した自分だけの問いを出発点にして、自分ひとりで哲学をやっていくための見本を示してみせた。

時間と自己』(木村敏著)分裂病や鬱病などの精神病者に特徴的な時間意識構造を分析。時間が自己の存在とは切り離せない「こと」的現象であるとの認識から、精神病を自己の病理であると同時に時間の病理でもある事態として捉えた。精神病理学の立場から書かれた時間論。

ユングの生涯』(河合隼雄著)分析心理学の創設者で集合的無意識を提唱したスイスの精神療法家、カール・グスタフ・ユング(一八七五〜一九六一)の生涯を日本におけるユング心理学の第一人者が丹念に描き出したもの。

量子力学が語る世界像』(和田純夫著)量子力学の「多世界解釈」と呼ばれる立場に立つ著者が、その考え方を平易に解説したもの。コペンハーゲン解釈の代替案として新たに登場し、宇宙構造にまで量子効果を見る多世界解釈が描く世界像へ読者を招待する。

はじめての構造主義』(橋爪大三郎著)理論社会学者である著者が、フランスを代表する構造人類学者・レヴィ=ストロースの理論を紹介しながら、「構造主義」の考え方を明快に解説した。難解と言われる構造主義の入門書として定評がある。

フェミニズム入門』(大越愛子著)近代自由主義思想の中から「女性解放」という課題を掲げたフェミニズムが登場してから既に二百年以上が経過した。本書はフェミニズム思想の諸潮流と辿りながら、その成果と課題を検証し解説した一冊。

近代の超克』(河上徹太郎著)雑誌「文学界」が一九四二年に開いた特別座談会(京都学派、日本浪漫派、文学界グループの三派が共同で行った)と戦後、竹内好によって書かれた論文を合わせて収録したもの。昭和精神史を考えるうえで、この上なく重要な一冊。

現代日本の思想』(久野収、鶴見俊輔著)哲学者である二人の共著。20世紀前半における日本の思想を「観念論」「唯物論」「プラグマティズム」「超国家主義」「実存主義」の五つに分類し、それぞれを代表する思想家や思想運動を取り上げながらその特徴を位置づけた著。

儒教とは何か』(加地伸行著)我々は、儒教的な部分が少なくない文化の中に暮らしながら、儒教についてよく知っているとは言い難い。儒教を根本から問い直し、またそれが現代にどう関わっているかを分かりやすく教えてくれる一冊。

唯識思想入門』(横山紘一著)煩瑣かつ難解な唯識思想だが仏教思想を学ぶうえでは避けては通れない。唯識思想の内容や歴史を分かりやすく解説してくれる、初学者に格好の入門書である。

インド仏教思想史』(三枝充悳著)インド仏教は仏教の源流であり、その思想は仏教がどれほど広まろうと仏教の根本となることに変わりはない。その思想の中でも特に重要な部分を、あまり専門用語を使わずに読者に解説してくれる好著。

■理工

数学入門 上』(遠山啓著)今日、数学はあらゆる分野で活用されている。その数学の基礎知識を、日常生活の論理に沿ってわかりやすく説き、ビジネスはもちろん、家庭生活にも活かせる内容となっている。
零の発見』(吉田洋一著)「0」は、6〜7世紀頃インドで発見された。この人類文化史上の大発見を背景から説き起こし、エジプト、ギリシャ、ローマなどにおける数を表すための様々な工夫、数字と計算法の発達の歴史を紹介する。

詭弁論理学』(野崎昭弘著)議論上手になるよりも、議論を楽しむゆとりを身につけたいという人のための本。ルイス・キャロルのパズルや死刑囚のパラドックスなど、論理パズルの名品をはじめギリシャの哲人から寅さんまでが登場し、論理学が楽しくなる。

物理学はいかに創られたか 上』(アインシュタイン、インフェルト著)20世紀を代表する物理学者・アインシュタインとインフェルトによる現代物理学の入門書。物理学の予備知識を持たない人でも読めるよう、数式を用いずに相対性理論・量子論を平易に説く。

科学の方法』(中谷宇吉郎著)自然科学が目覚しく発展し続ける現代、その将来のありかたが問題となっている。雪氷学者として知られる著者は、今日の科学によって解ける問題と解けない問題とを明確にし、自然の深さと科学の限界を知ってこそ新分野を開拓できると説く。

理科系の作文技術』(木下是雄著)理科系の研究者、技術者、学生のために、論文、レポート、説明書、手紙の書き方、学会講演のコツを説く。文のうまさに主眼をおいた従来の文章読本とは違い、明快・簡潔な表現を追及している。

山の自然学』(小泉武栄著)お花畑に雪渓、岩肌にやせた尾根、多彩な美しさに満ちた日本の山の自然はどのようにしてできたのか。日本各地の山をとりあげ、植物分布や地形・地質の不思議を語る。図版も多数収録。

パタゴニア探検記』(高木正孝著)パタゴニアは、南アメリカの南端に位置する。本書は、日本・チリ合同パタゴニア探検隊が、言語・風俗・習慣の違いを超え、共に前人未踏の大氷河地帯を突破し、処女峰アレナーレスに登頂した記録である。

栽培植物と農耕の起源』(中尾佐助著)イネ、ムギ、イモ、雑穀、マメ、茶など人間と切り離すことのできない栽培植物。人類文化の根元ともいえるこれらの起源を追求すべく、アジアの奥地や南太平洋全域を探査した貴重な記録。

照葉樹林文化』(上山春平著)稲作技術渡来以前の文化=縄文文化については必ずしも十分な考察が進められているとはいえない。日本文化の原型を東アジア全体の視野で考察し、新しい視点の提示を求めて開かれたシンポジウムの記録。

日本の米』(富山和子著)米を通して日本の歴史を検証する。水、森林、古墳、さらにはコンピュータに強い現代人の特質までも米の文化の所産であると説き、日本人が米作りを放棄すれば、環境も文化もアイデンティティも失うと警告する。

都市と水』(高橋裕著)戦後の都市の変貌により、人間と水との関係は大きく変化した。現在では、人と水との共存を図り、各地で水環境を重視した事業が行なわれている。都市化が進む中で水環境をいかに守るかを説く。

地球環境報告』(石弘之著)生態系の崩壊は、北極から南極、成層圏から深海底まで、グローバルな範囲で加速度的に進行している。八十カ国以上を自らの足で調査した著者による、傷ついた地球の現状を訴える迫真のルポルタージュ。

自然保護という思想』(沼田眞著)生態学のパイオニアである著者は、半世紀にわたって自然保護に精力的に取り組んできた。自然保護思想の発端と経過、わたしたち人間の自然との共存方法を先人たちの軌跡や自らの体験を踏まえて語る。

自然再生』(鷲谷いづみ著)20世紀後半、多量の資源を消費し廃棄物をまき散らすという人類のライフスタイルにより自然の多様性が失われ、地球規模で影響が出ている。環境を改変できる唯一の生物であるヒトが、今考えるべき自然再生の思想と方法を解説する。

進化とはなんだろうか』(長谷川真理子著)地球に生きる多種多様な生物は、どのようなプロセスを経て今日のような形になったのか。適応、自然淘汰、オス・メスの性差の意味などについて、豊富な具体例とエピソードを紹介し、進化のメカニズムの謎にせまる。

生物進化を考える』(木村資生著)分子生物学は進化論をいかに豊かにしたのか。革命的な「分子進化の中立説」を提唱し世界に大論争を巻き起こした著者が、ダーウィンの「種の起源」から中立説までの進化の考え方をやさしく説く。

分子生物学入門』(美宅成樹著)分子生物学は、従来の生物学の理解はもちろん、ゲノムや脳の解明にも欠かせないものとなっている。「情報」「機械」「エネルギー」という三つのキーワードをもとに、生命の複雑な現象を解説する。

胎児の世界』(三木成夫著)わたしたちの誰もが、かつて胎児であった「十月十日」の間、羊水の中で劇的な変身をとげた。その変身劇は、太古の海に誕生した生命の進化の悠久の流れを再演する。養老孟司の恩師である解剖学者が人類の生命記憶の故郷へと誘う。

ゾウの時間ネズミの時間』(本川達雄著)動物の機敏さ、寿命、行動圏、生息密度は、サイズと一定の関係がある。ところが、一生の間の心拍数や体重あたりの総エネルギー消費量は、サイズによらず同じであるという。『歌う生物学』で知られる著者による「一生のうた」つき。

私の脳科学講義』(利根川進著)著者は、抗体の多様性の謎を解明し1987年ノーベル生理学医学賞を受賞した。脳にためた記憶を再生するプロセスをはじめ、自らの研究成果を通し、脳科学の最先端を紹介する。

人間であること』(時実利彦著)ことばを話す、笑う、学習する、時間を考える、これらはいずれも人間にのみ備わった能力である。これらの機能を司る中枢である脳の働きと、知性、感情、行動との関連をとらえ、人間の全体像を明らかにする。前著『脳の話』の応用編。

風景学入門』(中村良夫著)急速な都市化の中で美しい国土景観が失われつつあるのを受け、2004年景観法が公布された。本書は、景観の意味と価値を問い直し人間の生活環境を整える技術的知識体系の一環として「風景学」を構想する。

日本美の再発見』(ブルーノ・タウト著)ナチスを逃れ日本に滞在した建築家ブルーノ・タウトは、桂離宮、伊勢神宮、秋田の民家などの美を再発見し、それらの日本建築に「最大の単純の中の最大の芸術」の典型を見出した。日本建築、日本文化に対する、タウトの批評と評価。

日本の近代建築 上』(藤森照信著)元祖建築探偵・藤森照信による日本近代建築案内。上巻では幕末・居留地の西洋館から和洋折衷の洋館、御雇い建築家による本格建築を経て日本人建築家が誕生するまでを描く。下巻では大正・昭和をたどる。


■文芸

漢字百話』(白川静著)太古の呪術や生活の姿を伝える、漢字の世界。漢字文化研究の第一人者、白川静が厖大な資料考証によって、文字の原始の姿を確かめ、原義を鮮やかに浮かび上がらせる。入門に絶好の、刺激的な書。

漢字と日本人』(高島俊男著)英語圏の読者を対象にして書かれたものをベースにしているせいか、大変わかりやすい。現代日本語と英語の関係を引き合いに出しつつ漢字の日本語への受容を解説した。

古典がもっと好きになる』(田中貴子著)古典はオカルトあり、恋愛ありの面白さの宝庫。教科書でもおなじみの作品を〈超訳〉 で紹介しながら、自称「古文おちこぼれ」だった国文学者が、奥深い古典の世界の楽しみ方、文法にしばられない原文の読み方を案内。

百人一句』(高橋睦郎著)「古事記」から現代俳句まで、旋頭歌の片歌や連歌・俳諧の発句を含めた五七五の名作を通時代的に選んで、日本人の美意識の本質と変遷を探ろうとする一冊。

俳句的生活』(長谷川櫂著)俳壇の気鋭である著者が俳句について、俳句の技法や鑑賞の要諦を自由に述べ俳句の本質に触れることのできる一冊。

折々のうた』(大岡信著)詩人である著者が俳句・短歌・漢詩・現代詩。様々なジャンルの短詩型文学から秀作を選び折々の季節に合わせてその豊かな表現を鑑賞している。短詩型文学鑑賞の入門書。

夏目漱石を江戸から読む』(小谷野敦著)小説家であり英文学者でもあった夏目漱石。ロンドンへの留学経験など、英米文学の受容とともに語られることが多かった漱石を、人形浄瑠璃や読本など江戸期の文学と西洋文学の交点としてうまれたとして比較文学の手法を用いて論じた一冊。

ヒロシマ・ノート』(大江健三郎著)ノーベル文学賞受賞の文学者である著者が見たヒロシマ。被爆から十年以上経って突然宣告される死。平和の思想の人間的基盤を明らかにし、現代という時代に対決する告発の書。

物語論』(ジャン・ミシェル・アダン著)さまざまな物語を、科学的に分析する。ウラジーミル・プロップが起源となり、ロラン・バルトを経てウンベルト・エーコに継承される「知的読解術」の実例を紹介し、作家をめざす人にも役立つ、文芸評論のための基礎知識。

動物化するポストモダン』(東浩紀著)いまや文学にも進出してきた「萌え」。オタクたちの消費行動が社会に与える影響とは。気鋭の評論家が論じる現代日本文化論。

日本語練習帳』(大野晋著)日本語学者として知られる著者が、普段何気なく使っている日本語の正確な使い方を問題とその解答を織りまぜながら紹介し、読者に日本語の奥の深さや面白さを再発見させてくれる。

教養としての大学受験国語』(石原千秋著)学力低下が言われる昨今、知識量の低下というよりは、思考能力が低下しているのではないだろうかと、数ある実際の受験問題から良問のみを厳選し、考える能力を養おうという一冊。

翻訳夜話』(村上春樹、柴田元幸著)翻訳未経験者、翻訳学校の生徒、翻訳家と異なる聴衆に向けて行った3回のフォーラムの記録。レベルの異なった参加者との質疑応答の形をとっているために、回答内容が少しずつレベルに合わせて変わり、一冊で入門、初級、超上級向けの三段階の翻訳指南書を兼ねている。

■芸術

名画を見る眼』(高階秀爾著)ただ美しいだけの絵画は存在しない。一歩進んだ鑑賞のお供に最適の一冊。続篇『続・名画を見る眼』と合わせ、ファン・アイクからモンドリアンまで29点の名画を解説。

ロシア・アヴァンギャルド』(亀山郁夫著)20世紀芸術の頂点を、同時代のパリと分かち合った、モスクワの芸術運動、ロシア・アヴァンギャルド。後進国であったロシアに、この運動がどのように生まれ、潰されていったかを知る最適の書。

江戸の絵を愉しむ』(榊原悟著)江戸時代、成熟しきった文化は、アッと驚く仕掛けや、ことば遊びに満ちた絵画を生み出した。なぞなぞを解くような楽しさのある一冊。

てりむくり』(立岩二郎著)「てり」とは「反り」のこと。「むくり」は「ふくらみ」。てりとむくりが連続した、唇の輪郭のような曲線が、「てりむくり」。建築や工芸品にみられる、日本に起源をもつ独特の形を読み解く。

写真の読みかた』(名取洋之助著)記号としての写真は、技や味に重点をおいて鑑賞すべきではない。では、どう読むのか。小説を読むように写真を読む法を伝授する。

写真美術館へようこそ』(飯沢耕太郎著)やはり、写真の見かたを伝授する一冊。写真家が何を、どう見たのかを知るために必要な知識が身に付く。紹介されている写真のほとんどが、図版として掲載されているのも嬉しい配慮。

日本映画史100年』(四方田犬彦著)日本映画を体系的に知ることで、小津安二郎から押井守につながる糸が見えてくる。巻末に簡単な用語集付き。

銀幕の東京』(川本三郎著)昭和2、30年代の映画に登場する、ボート小屋、堀や川、土の道路、お化け煙突、有楽町のすし屋横丁などの東京のイメージの断片をもとに、失われた都市、東京を再現する。

江戸の見世物』(川添裕著)江戸っ子の3分の1から半分近くが、ドッと押し寄せたという見世物のパワー。細工、曲芸、ラクダにゾウ、女相撲に菊人形。流行し出したら止まらなかった、江戸庶民最大の娯楽を、読んで楽しむ。

狂言役者 ひねくれ半代記』(茂山千之丞著)オペラや新劇、歌舞伎など、他分野の芸術に縦横無尽に参加し、狂言界の異端児と呼ばれた茂山千之丞が、狂言の魅力を余すことなく伝える。

超ブルーノート入門』(中山康樹著)「スウィングジャーナル」元編集長が、ブルーノートの傑作シリーズ、1500番代の名盤を超解説。もう一つの傑作シリーズ4001〜4100番台を解説した『超ブルーノート入門 完結編』も好評。

バルトーク』(伊東信宏著)ハンガリー農民の奏でる民謡を収集した、民俗音楽学者としてのバルトークを再評価。農民に歌ってもらうことによる収集の困難さや、リストによる「ハンガリー音楽=ジプシー音楽」という誤った見解に対する批判など、バルトークの活動を深く掘り下げる。