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ひとりお美しいお富士さん 深尾須磨子 レマン湖のほとりより われルソオと共に恍惚として モン・ブランを仰ぎたりき われルソオと共に陶然として レマンの都を顧みたりき ヘン お富士さんだって? おもしろくもないよ 薄情に冴えきった冬の鏡の中の 白のクラシックのニュー・ルック いやだね それだれの真似? バラック屋根の東京からじゃ まるで掃きだめに鶴だよ 蒼ざめたそこいらの詩人さんなら 泥沼の白鳥だなんてこじつけるだろうよ あの白が剥いじゃいたいね 第一 あのポーズが気にくわないよ あんなの叩っこわしておはぐろ溝へちゃいしたい ああああ おはぐろ溝とバラックの聖地東京 この寒さに 蠅やしらみや二足獣がうじゃうじゃしてるよ ね お富士さん ここからおがむと たしかにあんたは貴婦人さん ヘン ひとりお美しいお富士さんか (後略) 天沢退二郎ほか『名詩渉猟』(詩の森文庫)より |