書標 2005.1月号
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歳時記1月

ひとりお美しいお富士さん      深尾須磨子
      
   
レマン湖のほとりより
   われルソオと共に恍惚として
   モン・ブランを仰ぎたりき
   われルソオと共に陶然として
   レマンの都を顧みたりき


 ヘン お富士さんだって?
 おもしろくもないよ
 薄情に冴えきった冬の鏡の中の
 白のクラシックのニュー・ルック
 いやだね それだれの真似?
 バラック屋根の東京からじゃ
 まるで掃きだめに鶴だよ
 蒼ざめたそこいらの詩人さんなら
 泥沼の白鳥だなんてこじつけるだろうよ
 あの白が剥いじゃいたいね
 第一 あのポーズが気にくわないよ
 あんなの叩っこわしておはぐろ溝へちゃいしたい
 ああああ おはぐろ溝とバラックの聖地東京
 この寒さに
 蠅やしらみや二足獣がうじゃうじゃしてるよ
 ね お富士さん
 ここからおがむと
 たしかにあんたは貴婦人さん
 ヘン ひとりお美しいお富士さんか
 (後略)
                              天沢退二郎ほか『名詩渉猟』(詩の森文庫)より