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辞書や事典は、とにかく数多く出版されていて、いったいどんなものがあるのかということをすべて把握するのは難しいが、次に挙げる本が参考にはなる。 『辞書の図書館』(清久尚美編・駿河台出版社・3990円)は総記、哲学、歴史、社会科学、自然科学、技術、産業、芸術、言語、文学などのカテゴリーに辞書を分類する辞書の辞書。 『辞書・事典全情報90/97』(日外アソシエーツ・19950円)は、90年から97年までに発行された辞書・事典を網羅している。98年以降の情報の載っているものの発行が待たれる。 「辞書」「事典」「図鑑」のランキングをつけているのが『この辞書・事典が面白い!』(室伏哲郎監修・トラベルジャーナル・1260円)だ。品切のものも含まれているし、これも五年前の本なので最近の書籍は含まれていないが、読み物としてとにかく楽しい。割り切ってトップテンを選んでいるのもわかりやすくてよい。が、この本を読んだだけなのにいろいろな分野に詳しくなった気になってしまうのには要注意。 これらのうちの一冊あれば今回の特集はおしまいでいいのではないか、などと言ってはいけない。編纂に長い時間がかかる辞書も、どんどん新しいものが出版されているのだ。
前述した『新明解国語辞典』の三省堂は辞書・事典をたくさん出版している。『民間学事典 人名編』(鹿野政直、鶴見俊輔、中山茂編・7980円)は、市井の研究者たちを集めた事典。学者ばかりというわけでもなく、「古賀政男」や「吉屋信子」という項もある。同じ編者の『民間学事典 事項編』(6930円)もでている。 『日本山名事典』(徳久球雄、石井光造、武内正編・5565円)は、二万五千分の一の地図に記載されている山や峠をすべて収録したもの。異称、標高、所在地、緯度経度などのデータはもちろん、鉄道駅からの方角と距離まで載っている。 大修館書店も多い。『〈さようなら〉 の事典』(窪田般彌、中村邦生編・大修館書店・2100円)は、フランス、イギリス、アメリカの詩や映画や日記から、別れや死に関するものを抜き出したものだ。現代から過去へとさかのぼっていく形式になっている。最初のページはウッディ・アレンの言葉。最後のページは叙事詩「ベオウルフ」からとられている。 普通の人は、道を歩いていてスフィンクスに謎かけされたり、洞窟でなぞなぞ合戦をするはめになったりはしないと思うが、そんなときにもきっと役立つのが『世界なぞなぞ大事典』(柴田武著・大修館書店・16800円)だ。世界七十か国、6600のなぞなぞを集め、日本語訳と原文をどちらも記載した世界初の大事典。ただしとても重いので携帯は難しい。 『〈つまずき〉の事典』(中村邦生編・2310円)は、失敗や挫折から生まれた名言、名句を集めている。つまずいてばかりいても、文学作品や映画のなかではこんな言葉で飾られているのだと思えば元気もでるというもの。作家、作品案内としても使える。 また、東京堂出版は面白い辞典や事典の宝庫だ。本屋で、こんな変わった辞典もあるのか!と手にとると東京堂出版だったということが多い。目録をめくってみると、あまりにあることに驚く。ここ2ヶ月間に出版されたものに限っても『古代ギリシア遺跡事典』(周藤芳幸、澤田典子編・3360円)、『甲子園高校野球人名事典』(森岡浩編・2520円)、『西洋たべもの語源辞典』(内林政夫編・2940円)など、広い分野にわたっている。 『からだことば辞典』(東郷吉男編・3045円)は、顔が広い、目が飛び出る、腹黒い、手を焼く、足を洗う、身銭を切るなど、体の働きから連想して作られた語六千語を網羅した辞典。「頭が上がらない、頭隠して尻隠さず、頭金など、慣用句や熟語も収録している。 『ペンネームの由来事典』(紀田順一郎著・2730円)は、夏目漱石、太宰治、中村草田男、司馬遼太郎など近代の作家、詩人、歌人のペンネームの由来を説明している。二葉亭四迷が父親から「くたばってしめえ」といわれたからだとか、江戸川乱歩がエドガー・アラン・ポーだとかいうことは知っていても、逆に本名はあまり知らないということに気づかせられる事典。 日本人はやたらと年齢を気にする国民性だといわれるが、誰が何歳で何をなしとげたかということを調べられるのが『年齢の事典』(阿部猛編・2100円)。徳川綱吉が生類憐れみの令を出したのも、湯川秀樹がノーベル賞を受けたのも、小松左京の『日本沈没 上下』(光文社文庫・650円)がベストセラーになったのも、大厄の42歳のときだそうだ。 マジックに関する事典もいろいろある。『コインマジック事典』(高木重朗、二川滋夫編・2625円)、『カードマジック事典』(高木重朗編・3990円)、タバコ、コップなどありふれた道具を使う『クロースアップ・マジック事典』(松田道弘著・3045円)、『クラシック・マジック事典』(松田道弘著・3570円)、難しいテクニックを使わずできる『セルフワーキング・マジック事典』(松山光伸著・2520円)など。マジックについてだけでもこんなにも種類がある。もちろんタネを明かしているのでマジックを見るほうで楽しみたい人は開かないほうがよい事典だ。 ストレスの多い時代を生きぬくため、「癒し」に関係する事典もでている。『モニカ・ヴェルナーのアロマテラピー実践事典』(モニカ・ヴェルナー著・畑澤裕子、林真一郎著・2940円)はドイツの代表的なアロマテラピストによる本で、ハーブなどの植物から摘出した精油の香りで心と体のバランスを整えるアロマテラピーの具体的なレシピが多く収められている。『アロマセラピーとマッサージのためのキャリアオイル事典』(レン・プライスほか著・ケイ佐藤訳・2730円)は、アロマセラピーに利用される各種の植物油の抽出方法や成分構成、注意事項などの情報を収録している。ほかにも、英国式足裏健康法の『リフレクソロジーの事典』(塩瀬静江著・2730円)や花の力で癒すという自然療法を紹介した『バッチフラワーエッセンス事典』(ゲッツ・ブローメ著・5145円)というものもある。 『英国らしさを知る事典』(小池滋著・2730円)は、日本人がイギリスと聞いて思い浮かべる語を90取り上げ、その実際を解説する。アイルランド、アーサー王伝説、アフガニスタン……。思い込みを正し、本当のイギリスを知ることができる。 そのほか、各社さまざまな書籍を出している。 『新編 漂着物事典』(石井忠著・海鳥社・3990円)は、漂流物を分類して並べているだけではない。古来どんなものが海岸に流れ着いているのかだとか、各地でのフィールドワークの様子、漂着物と環境との関わりなど、さまざまな問題に言及している。普通の人にはゴミとしか思っていなかったものも、見方によって宝の山となるということを教えてくれる。海に流れ着くのは椰子の実ばかりではないのだ。 『図説 日本未確認生物事典』(笹間良彦編・柏書房・2854円)は、「幻人・幻獣・幻霊」をさまざまな文献から集めている。出典も詳しく書かれているので後からあたりやすい。「擬人的妖怪編」「魚と亀の変化」「龍蛇類の変化」「獣類の変化」「鳥類の変化」「湿性類の変化」に分けられている。同じ著者の『図説 世界未確認生物事典』(2940円)も出ている。『いろの辞典 改訂版』(小松奎文編著・文芸社・2625円)は、色といってもお色気や色事の辞典。辞書を作れるほど色事に関する言葉があるのか……ということにまず驚く。出版直後はTVなどでも紹介された。最近刊行された官能小説から性的な表現を集めた『官能小説用語表現辞典』(永田守弘著・マガジンハウス・2415円)もある。 『NHK日本語発音アクセント辞典』(NHK放送文化研究所編・NHK出版・3990円、CD‐ROM版18690円)では、共通語のアクセントを参照できる。NHKのアナウンサーのように話したい人に最適な辞書。アナウンサーを目指す方だけではなく、全国をとびまわるお仕事の方にも役立つ辞典だ。 『ニュースポーツ事典』(北川勇人著・8400円)は、レクリエーションを目的としたニュースポーツを、アウトドア系、ウォータースポーツ系、ダンス・体操系、ターゲット系、チーム・ボール系、ゴルフ系、テニス系、バレーボール系、ウォールゲーム系、ホイール系、格闘技系に分けて紹介。オリンピック種目にない、知らないスポーツは実はこんなにあったのだ。 『完訳世界文学にみる架空地名大事典』(アルベルト・マングェル、ジアンニ・グアダルーピ著・高橋康成ほか訳・講談社・7980円)は、ホグワーツ、中つ国、プロスペローの島、ムーミンパパの島、オズの国など架空の世界のガイドブック。イラスト満載、出典索引もバッチリの夢広がる事典。 『クロスワード辞典』(ニコリ編・波書房・4587円)は、文字数順に、カタカナで言葉が収録されている。意味や用法などは全く無し。ひたすら言葉の羅列だ。これで自分でもクロスワードパズルが作れるようになる。逆に、クロスワードパズルを解いていてどうしても思いつかない言葉をこれから捜すこともできる。パズルを解く、という楽しみはなくなってしまうが……。 「ブライス」や「スーパードルフィー」など今や大人気のお人形。一九五一年以降に発売されたお人形の正面と後姿の写真を網羅した『お人形事典〜ファッションドール編』(たいらめぐみ著・グラフィック社・2625円)は、ABC順に並べられていて、索引もつけられている。美しい写真が特徴だが、そればかりではなく、身長やメーカーなどデータも詳しい。 便利なのかどうかわからない珍道具ばかりの事典が『仰天珍道具事典』(日本珍道具学会編・カタログハウス・999円)だ。雑誌「通販生活」の一コーナーがまとめられたもの。「洗濯物乾燥ゴルフクラブ」「だんご繰り上げ器」など、ばかばかしい珍発明の数々に笑わずにはいられない。パート2、3もあります。 若い人は知らないだろうが「月刊ビックリハウス」という何ともふざけた雑誌が昔存在した。その誌上で繰り広げられていた言葉遊び「大語海」と、現在でも売られている「御教訓カレンダー」を合体させたのが『御教訓大語海』(榎本了壱監修・PARCO出版・1600円)だ。「御教訓カレンダー」というのは、日めくりで「お父さんお母さんを猥褻にしよう」だとか「手を上げて渡る世間に鬼はなし」だとかという文句があらわれる脱力カレンダーで、これが24年分収録されている。「大語海」は「すこんぶ→はき古したクツ下のこと」などというこれまた脱力国語辞典。
なにかわからないことを引くという用途ためというよりも、読んで面白い辞典の定番に、アンブローズ・ビアスの『悪魔の辞典』がある。 |