書標 2004.9月号
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今月の表紙  その196 伊丹三樹彦



 風化仏までの巌上(がんじょう) 仙人草

 丹後半島の間人(たいざ)に有名な立岩(たていわ)がある。その手前は美しい砂浜で日本海の白波が打ち寄せてくる。映画のロケ地としてもよく使われるところだ。けれど玄武岩がそそり立つ立岩の上に、こんな風化仏があるのは土地の人しか知らない。
 幸い、僕には北近畿博士とでも呼びたい句友の蔭山光延が豊岡に居るので、彼の車で案内して貰った。それはもう三十年程前のことだが、目下は『日本夏色』(仮題)なる写俳集の為の撮りたしをしているので、再会の旅をした。晴れたり曇ったり降ったりの気儘な天候だったが、何とか撮影出来た。立岩へ登るのに道はない。素手で手掛り足掛りを探して巌上にやっと出ると、断崖絶壁の観があり、足がすくむ。石仏は風蝕されて目も鼻も口も定かでない。盛夏は夕菅、晩夏は仙人草がほとりに咲く。






(表紙題字 陳舜臣)