書標 2004.8月号
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今月の表紙  その195 伊丹三樹彦



 湖面映りは 夢二好みの雲で山で

 「NHK俳壇」誌の伊香保大会があり、講演の仕事の為、同地の温泉旅館に泊った。名は「福一」で歴史のある有名な宿だった。大女将が俳人でもある関係で、庭付、茶室付の貴賓用の部屋を提供された。六月の雨季だった為に降りみ降らずみの天候だったが、緑に洗われた眺めも良かった。
 翌日は見事に晴れたので、榛名湖への車を都合して貰った。観光客がまだ来ない早朝の為、人影も少なく、僕と同伴の妻は山気を存分に味わった。空には巻雲と思われるが、鳥が飛ぶさまにも似た姿が好個の被写体になった。
 運転手が、「湖畔の宿」の記念碑を案内してくれた。佐藤惣之助作詞服部良一作曲で、高峰三枝子が歌って一世を風靡したナツメロである。その上手には竹久夢二のアトリエも復元してあった。正に榛名湖は現代版歌枕の地だった。






(表紙題字 陳舜臣)