日本は有事に弱い、と言われる。危機管理がなっていないとも。日本には活火山がいくつもあるし、地震もよく起こるから自然災害にいつ見舞われるかわからないし、テロの危険性もある。しかし、これらが本当に起こりえるのだという気構えができている人はどれくらいいるだろう。何の対策も施さないでただ待っているのはとても心もとない。今回は、生き残るための「サバイバル本」を集めました。
不慮の事態に巻き込まれ、謀らずも極限状態でのサバイバル体験をするはめになってしまった人々がいる。
わたしたちが「サバイバル」と聞いて連想するのはやはり「ロビンソン・クルーソー」のような海での事故による漂流・遭難ではないだろうか。事実、この手の本はかなり多く出版されている。
中でも1914年、南極大陸横断を目指し航海中であった英国人探検家・シャクルトンたちを乗せた船・エンデュアランス号の漂流については『エンデュアランス号漂流』(アルフレッド・ランシング著・山本光伸訳・新潮文庫・820円)『エンデュアランス号―シャクルトン南極探検の全記録』(キャロライン・アレグザンダー著・畔上司訳・ソニーマガジンズ・3780円)『エンデュアランス号漂流記』(アーネスト・ヘンリー・シャクルトン著・木村義昌ほか訳・中公文庫ビブリオ・820円)『エンデュアランス号 奇跡の生還』(アーネスト・ヘンリー・シャクルトン著・奥田祐士訳・ヴィレッジブックス・882円)『エンデュアランス号大漂流』(エリザベス・コーディー・キメル著・千葉茂樹訳・あすなろ書房・1470円)など、多数の関連書籍あり。

『エンデュアランス号大漂流』
あすなろ書房・1470円
氷の海に取り残された彼らの生き残りの術とは? また、危機に瀕したとき、リーダーはどう動いたのか?この事件からは、様々なドラマを読み取ることが出来る。
『大西洋漂流76日間』(スティーヴン・キャラハン著・長辻象平訳・ハヤカワ文庫・756円)は、1982年2月4日深夜小型ヨットが突然沈没したことから始まる、海洋史上に残る壮絶なサバイバルの記録を収めた一冊。
『奇跡の生還 〈ローズ・ノエル〉号119日間の漂流』(ジョン・グレニー、ジェーン・フェアー著・浪川宏訳・舵社・1890円)はトンガに向けニュージーランドから航行中だったヨットが転覆、半水没して逆さになった船室の中に閉じ込められるという状況からの脱出劇が描かれる。
『たった一人の生還 「たか号」漂流二十七日間の闘い』(佐野三治著・新潮文庫・460円)は、国際外洋ヨットレースに出場していた「たか号」の転覆、船長の死、そして辛うじて救命ボートに救われた6名の当てのない漂流を、たった一人の生存者である著者が記したもの。
『あきらめたから、生きられた 太平洋37日間漂流船長はなぜ生還できたのか』(武智三繁著・石川拓治構成・小学館・1260円)は、そのひょうひょうとしたキャラクターでいっとき時の人となった、武智三繁さんによる漂流の手記。
では次に、山でのサバイバルを扱った作品を紹介したい。『山頂に立つ 登山家たちのサバイバル』(クリント・ウィリス編・藤井留美ほか訳・扶桑社セレクト・790円)は、登山家達による山岳ドキュメンタリー集。1978年、たった3人だけのチームで世界2位の高峰K2に挑んだ彼らを雪崩が襲う「冷酷なる大地」を始め、第一級の登山家達の手記を読むことが出来る。
『空と山のあいだ 岩木山遭難・大館鳳鳴高生の五日間』(田沢拓也著・角川文庫・620円)は、登山ブームに沸いた昭和30年代終わりに起こった、冬の岩木山での高校生たちの遭難・生還の記録。第8回開高健賞受賞作。
『死のクレバス アンデス氷壁の遭難』(J.シンプソン著・中村輝子訳・岩波現代文庫・1050円)は、氷壁初登攀の成功から一転、度重なる災難から絶望的な状況に陥ったクライマーが、いかにして「死のクレバス」から脱出したのかを描く迫真の山岳ノンフィクション。
『生還 山岳遭難からの救出』(羽根田治著・山と渓谷社・1680円)では、趣味として山に登る人たちが、予期せぬアクシデントに見舞われたとき、何を考えどう行動するか。彼らの生死をわけるものは何か。山の極限状況下を生き抜いた人々へのインタビューを集める。

『生還 山岳遭難からの救出』
山と渓谷社・1680円
海や山と同様、人の行くところならどこだって、災害の起こる可能性をはらんでいる。宇宙だってその例外ではない。『アポロ13号奇跡の生還』(ヘンリー・クーパー・Jr著・立花隆訳・新潮文庫・540円)は、制御不能に陥った宇宙船の中で、乗組員たちが絶体絶命のクライシスに立ち向かうさまを記録した迫真のドキュメント。逃げ場のない宇宙空間で発揮される、精神力の強さに圧倒される作品だ。
近年、大きな気候変動の前触れなのではないかと思えるくらい、気温が以前よりも高いように感じる。最近公開された映画「デイ・アフター・トゥモロー」でも自然災害に翻弄される人々の様子が描かれていて、人智の及ばぬ災害とはどのような凄まじさなのか映像で見ることができる。ここでは、実際の災害のレポートやその対策についての本を紹介する。
『気候変動 水没する地球』(ディンヤル・ゴドレージュ著・戸田清訳・青土社・1995円)は、地球温暖化によるさまざまな問題――人体や生態系への影響、食糧不足などを章ごとに分け、対策を提示している。

『ツバル 地球温暖化に沈む国』
春秋社・2100円
『ツバル 地球温暖化に沈む国』(神保哲生著・春秋社・2100円)や『モルジブが沈む日』(ボブ・リース著・東江一紀訳・NHK出版・2625円)は、国土が水没する危機にある二つの国がどのような対策を講じているかが書かれている。地球温暖化は、先進諸国による温室効果ガスの影響が大きい。対策を怠ると、これは天災というよりも人災である。『よくわかる地球温暖化問題』(気候ネットワーク編・中央法規・1890円)は、用語集もついていて問題の全体を俯瞰するのに都合がいい。
『夏が来なかった時代』(桜井邦朋著・吉川弘文館・1785円)や『歴史を変えた気候大変動』(ブライアン・フェイガン著・東郷えりか、桃井緑美子訳・河出書房新社・2520円)では、歴史上の大きな気候変動の影響がどのようなものであったかを紹介している。ここでも、気候変動もさることながら、人間の誤った判断がより被害を大きくしていることが指摘されている。
日本で度々起こる災害は、地震だ。記憶に新しい「阪神大震災」は何をわれわれに突きつけたのか。『地震と社会 「阪神大震災」記 上下』(外岡秀俊著・みすず書房・各2940円)は、現地取材を中心に歴史的なパースペクティヴと数々の資料を織り合せ立体的に描いた、ドキュメント。
『ライフクライシス 百年の忘却 レポート備えあれど憂いあり』(山下亨著・近代消防社・1890円)では、トルコから福島まで津波や地震など各国に降りかかった様々な災害現場でなにがおこったか、被災者は何を考えていたか、災害伝承とは何かをレポートしている。
大正12年には、マグニチュード7.9の大地震が関東一円を襲った。当時の文学者たちはそこに何を見たか。『関東大震災 ドキュメント』(現代史の会編・草風館・2625円)は、新発見の写真多数と生き地獄を活写したスケッチと絵で大震災を立体構成し、当時厖大に書かれた体験記・見聞記を種々な角度から精選した大災害の実録。
『大地動乱の時代』(石橋克彦著・岩波新書・819円)では、今まで日本で起きた大地震からどのようなことが学べるのか、また同じようなことにならないために、どのような対策を施すべきなのか、著者の考えが示されている。
大きな被害をもたらす地震だが、地震を予知し、対策を立てようという試みもなされている。今まで大きな地震が起こった地域を調べ、これからどこでどの程度の地震がおこるのかを予測しているのは『日本の地震地図』(岡田義光著・東京書籍・1890円)だ。地震はどのように起こるのかについても知識が得られる。

『日本の地震地図』
東京書籍・1890円
悲劇を生む大災害は、地震のほかに火山の噴火がある。一番有名な火山の噴火は歴史上の出来事であるポンペイの滅亡であろう。
『ポンペイの滅んだ日』(金子史朗著・東洋書林・1995円)は地震に脅え、噴火や火砕流から逃げまどう人びとの姿と、ベスビオ大噴火で埋没した古代ローマ都市と日本を重ね合わせている。
『浅間山大噴火』(渡辺尚志著・吉川弘文館・1785円)は、天明3年(1783年)の大噴火の原因のみでなく、被災から人々がどう立ち直っていったのかにもかなりのページがさかれている。
『磐梯山噴火』(北原糸子著・吉川弘文館・2730円)は、明治21年(1888年)の噴火について書かれている。江戸時代は、災害は天罰だと思われていたなど、災害観の移り変わりについての章がとくに興味深い。
近年では2000年に北海道の有珠山が噴火している。『2000年有珠山噴火』北海道新聞社編・北海道新聞社・1680円)は記者が有珠山噴火の様子を追いかけたドキュメントである。
『火山災害 人と火山の共存をめざして』(池谷浩著・中公新書・798円)は、先の有珠山や三宅島が相次いで噴火し、108もの活火山が存在する世界有数の「火山国」日本で暮らしていくには、ふだんからどのような心構えと対策が必要なのかをわかりやすく解説している。火山の恵みを生かし、よりよい共存を実現するための方策も提言。
三宅島の火山噴火では避難した人々の飼っていたペットのことが度々取り上げられた。『いざというとき役立つ犬と猫のための災害サバイバル』(香取章子著・学習研究社・1470円)では、災害に遭ったときに家族同然のペットと共に生きのびる方法が書かれている。
ペットだけでなく非常時に生きのびるには日頃からの心構えが大切である。『人はなぜ逃げおくれるのか 災害の心理学』(広瀬弘忠著・集英社新書・735円)では、災害時の人間の心理を解き明かし、生きのびるためにはどうしたらよいかを説いている。
『6・26白川水害50年 昭和28年6月26日の記録と記憶』(熊本日日新聞情報文化センター編著・熊本日日新聞社・2100円)や『三陸海岸大津波』(吉村昭著・文春文庫・460円)では水害がどのようにやってきたか、生死を分けたのは何だったのか―前兆、被害、救援の様子を体験者の貴重な証言をもとに再現している。
『水をめぐる危険な話 世界の水危機と水戦略』(ジェフリー・ロスフェダー著・古草秀子訳・河出書房新社・1890円)ではダム崩壊で洪水に襲われた町、水を得るために生命をかける民や、水の利権をめぐる熾烈な国際紛争、水の商品化と環境破壊など様々な水をめぐる生存競争が紹介されている。水の管理の失敗は人々をとんでもない方向へ導いてしまうとしている。
突然襲ってくる災害を回避する事は難しい。しかし、日頃からの心構え次第によって生きのびる確率をより高くすることが出来る。
いざというとき日頃文明の利器に囲まれて生活する私たちは生きる術を知らない。しかし大地震やテロを目の当たりにしてみれば自分の身を守るのは自分しかないのだと思えてくる。そんな時代を反映してか「サバイバル本」は最近とみに多く出版されている。それらを紹介したい。
『まさか!のときの生き残り塾』(進士徹著・家の光協会・1365円)では、マッチがない時のきりもみ式火おこし術、にごり水をろ過する方法、空き缶と新聞紙でごはんを炊く方法など、都市機能がマヒ状態に陥った時に生きのびる方法が図入りで解説されている。阪神淡路大震災の被災者にも取材した実用書である。
「飢えない」ことに重点を置いた『実践サバイバルのすすめ』(大海淳著・主婦と生活社・1365円)では山菜や魚貝類など比較的素人でも受け入れやすいものから、兵糧食や仙人食、山伏食といった木の根や地衣食物(木や山に生える海苔のようなもの)など唸る他ないような天然食材の食べ方を微細に記した貴重な一冊。キノコだけなら『詳細図鑑きのこの見分け方』(大海秀典ほか著・講談社・2100円)など毒きのこを見分ける本は多数ある。アウトドア色を強くした『自然の中で生き残るためのサバイバル読本』(工藤章興編著・主婦と生活社・1260円)は野外での衣・食・住を徹底解説。いざという時だけでなくキャンプにも応用できる。
野外での危険に対しては『知っておきたいアウトドア危険・有毒生物安全マニュアル』(篠永哲監修・学習研究社・1575円)や『図解猛毒動物マニュアル サソリ、毒グモからフグ、コブラまで』(同文書院・1325円)が出ている。
ダイビングを楽しむ人には、『海で死なないための安全マニュアル100』(マリンダイビング編集部編・水中造形センター・2100円)や『もし、サメに襲われたら!』(鷲尾絖一郎著・水中造形センター・1995円)がある。前者は潜水事故への対策だけでなく、漂流してしまったとき、サメや危険な生物に遭遇したとき、水中で地震がおこったときなど、想定される危険への対処法が記されている。

『縄文人になる!』
山と渓谷社・1260円
アウトドアを楽しむ方におすすめなのは『縄文人になる!』(関根秀樹著・山と渓谷社・1260円)。脱サラして髪とヒゲをのばし、竪穴式住居を建てて「縄文人」になってしまった山崎三四造氏の生活ぶりをもとに原始技術史研究所主幹の著者が縄文式の生活技術を語る。
とはいえなんといっても究極のサバイバル人間は、『洞窟オジさん』(加村一馬著・小学館・1260円)である。氏は13歳の時、両親の虐待に耐えかね家を出て以来、57歳の時窃盗未遂で捕まるまで、野山で食料を得るというサバイバル生活をしてきたという驚くべき経歴の持ち主なのである。本の前半は氏のそういった生活ぶりを、後半には氏の社会復帰について語られている。ともかく滅多に聞く事の出来ない話の連続で、そのリアリティーに圧倒される事は間違いないだろう。
最後に、日常的にサバイバルを実践している人々――いや、生活そのものがサバイバルである、ホームレスの生活がうかがえる本を何点か。まずは『ホームレス作家』(松居計著・幻冬舎アウトロー文庫・630円)。実際に半年の間路上生活を余儀なくされた著者の、再生を誓う決死のノンフィクション。作家であるというプライドだけを頼りに苦境を乗り越える著者の姿が印象的だ。
『不況!東京路上サバイバル』(増田明利著・恒友出版・1365円)は、不況の嵐の中路上生活者に身を落とした28人の転落のストーリー。もはやひとごとではないリアルさの伝わる一冊だ。

『この方法で生きのびろ!』
草思社・1260円
また、ちょっと笑えるサバイバル本、というジャンルが確立しつつある。このブームの先駆け的な本が『この方法で生きのびろ!』(ジョシュア・ペイビン、デビッド・ボーゲニクト著・草思社・1260円)である。「車ごと海の中に飛び込んでしまったら」有り得る。「橋の上から川に突き落とされてしまったら」有り得ない事はない。「クーガーに襲われてしまった時」なんでやねん!と言ってはいけない。「銃撃戦に巻き込まれた時」も「建物からゴミ収納庫に飛び降りる時」もいまや絶対に無いとは言えない世の中になってしまったのだ。しかし、このシリーズは実用書としてよりもストレス解消にプッと噴出す軽い読み物としてシリーズ化されている。
これらがきっかけとなって『この方法で切り抜けろ!アクションヒーローの華麗なテクニック』(デビッド・ボーゲニクト、ジョー・ボーゲニクト著・イースト・プレス・1365円)や『試すな危険!冒険野郎ハンドブック』(ハンター・S・フルガム著・早川書房・1260円)なども出ている。これらは切り口は奇抜だが、危機回避の情報提供や指導はその道の専門家が真面目に行っている。
サバイバルをテーマにした小説を紹介するにあたり、ここでは大きく2つの分類をしてみる。海洋や山岳地帯を舞台にした冒険小説系と、荒廃した未来を舞台にしたSF系とである。
まずは冒険小説から。サバイバルといえば、「無人島」を思い浮かべる方も多いだろう。そんなイメージを決定づけている古典がデフォーの『ロビンソン漂流記』(吉田健一訳・新潮文庫・540円)とヴェルヌ『十五少年漂流記(二年間の休暇)』(荒川浩充訳・創元SF文庫・840円)の2冊。いずれも少年向けを含めて、現在でもあちこちの出版社から翻訳が刊行されている。文明から切り離された孤島での生活は、時代が移っても変わることなく読者を魅了する。

『ロビンソン漂流記』
新潮文庫・540円
日本の作品では、吉村昭の『漂流』(新潮文庫・620円)が無人島でのサバイバルを描いている。主人公は江戸・天明年間に嵐に遭い、八丈島の南に浮かぶ鳥島へ漂着する。火も水もない状況で同行した仲間は次々と死んでゆき、たった一人で残されるが、やがて別の難破船も漂着し、12年間の歳月を経て生還する。史実に基づいた壮絶な物語である。
『漂流』と同じく史実に基づいた遭難小説としては、新田次郎『八甲田山死の彷徨』(新潮文庫・540円)がある。日露戦争前夜、雪中行軍の訓練のため、八甲田山へ入った青森5聯隊は、猛吹雪に進路を阻まれ遭難。結果として199名の死者を出す。同じ時期に、弘前31聯隊も八甲田山を行軍していたが、こちらは全員が生還した。この2つの部隊を比較しながら、生死を分けた条件を検証する。
自然を舞台にした冒険小説は、少なからずサバイバルの要素を持つようになる。代表的なものとして志水辰夫の『飢えて狼』(新潮文庫・620円)を紹介したい。ロッククライマーを主人公に据え、冷戦下の時代を背景に国家的陰謀を描いたスパイ小説だが、択捉・国後を舞台に、山から湿原、そして海へと漕ぎ出る逃避行が物語のメインとなっている。
また、谷甲州『遥かなり神々の座』(ハヤカワ文庫・714円)は、ヒマラヤの山岳地帯で、ゲリラとの戦闘を描いた小説。厳しい冬山の描写が見所。
映画にもなった真保裕一『ホワイトアウト』(新潮文庫・820円)も、山岳冒険小説の代表的な作品。一介の電力会社職員が、豪雪で閉ざされたダムを舞台にゲリラと戦う物語。一見荒唐無稽な設定だが、緻密な描写がリアリティを生み「和製ダイ・ハード」と評価されている。
サバイバルは自然の中だけではない。街を舞台にした冒険もある。北方謙三『逃がれの街』(集英社文庫・680円)は、そんな一冊。誤ってやくざを殺してしまった主人公は、やくざと警察の両方から追われ、たまたま出会った少年と共に逃避行に出る。
さて、冒険小説とは違い、SFの世界でサバイバルといえば、荒れ果てた未来で人類の存亡を描いた作品が多い。
まず思い浮かぶのは小松左京の『復活の日』(ハルキ文庫・861円)。新型ウイルスによって人類は絶滅に瀕し、生き残った人々は世界各地から南極へ集結する(ウイルスが寒さに弱かったため)。そこでの人類の復活を賭けた戦いが描かれる。
このテーマは映画やコミックなどでも繰り返し取り上げられている。
楳図かずお『漂流教室』(小学館文庫・全6冊・各610円)はこの分野の古典的名作。ある小学校が時空の歪みによって、荒廃した見知らぬ場所へ飛ばされてしまう。襲来するモンスターや、生き延びるための人間同士の争い、次々と解明されてゆく謎などが描かれ、強烈な力で物語に引き込まれる。
最近の作品では望月峯太郎『ドラゴンヘッド』(講談社・全10冊・各540〜541円)がある。主人公は修学旅行からの帰途、新幹線の大事故に巻き込まれる。なんとか脱出すると、そこでは既に世界が滅亡していた。何がどうなっているのか、さっぱりわからない状況の中で、スケール大きなサバイバルが展開されていく。
最後に、異色のサバイバル小説をいくつか紹介しよう。
スティーヴン・キング『トム・ゴードンに恋した少女』(新潮社・1680円)は、ハイキングコースからはぐれてしまった少女が、9日間に渡って原野をさまよう話。「少女が森でサバイバルをする」ということだけをテーマに書かれた小説だが、食糧不足・虫・下痢など、様々な災難が少女を襲う。
高見広春『バトル・ロワイアル』(太田出版・1554円)と貴志祐介『クリムゾンの迷宮』(角川ホラー文庫・672円)は、いずれも「自分以外の全員を倒す」ことを目標にしたゲーム感覚のサバイバルをテーマにしており、生死を賭けた物語が繰り広げられる。
林譲治『帝国海軍ガルダ島狩竜隊』(学研ウルフノベルス・840円)は、太平洋戦争中、南海に浮かぶ「ガルダ島」に立てこもった部隊が、太古の世界へと通じる穴を発見し、恐竜狩りをして生き延びるという、SF的な設定を取り入れた話。恐竜の捕まえ方、調理法、そしてその味などがリアルに描かれ、極め付きの異色サバイバル小説となっている。
サバイバル小説ばりの世界にはなってほしくないものだが、現在『SAS都市型サバイバル』(ジョン・ワイズマン著・並木書房・1890円)を始めとしてSAS=英国特殊部隊のサバイバル術を紹介した本なども多く出ているのである。日本でもテロが起こる可能性が依然として高いせいだろう。
『マンハッタン、9月11日――生還者たちの証言』(ディーン・E・マーフィー著・村上由見子訳・中央公論新社・2730円)は、同時多発テロに実際に遭遇した41人の証言をまとめた「オーラルヒストリー」。生々しい証言の数々から、あなたは何を感じるだろうか。
もうひとつ驚きの一冊を紹介する。スイス政府が全国の各家庭に一冊ずつ配ったという『民間防衛』(スイス政府編・原書房・1575円)。戦争、災害、核兵器、生物兵器、放射能、などの想定されるすべての危機的状況に対応できるよう行動と心理面から事細かに述べられた生き残るための完全マニュアル。第三次大戦が起きたら生き残るのはスイスだけ、といわれる所以がここにある。
テロや戦争などは起こしたくないし、遭難したくもなければ天災にもあいたくないが、現実になってしまうことはある。いざというときに冷静に行動できるように、また予防策を講じるためにも、それらの前例に詳しくなっておくのは有効な手段だろう。