書標 2004.6月号
今月の表紙 歳時記〈6月〉 著書を語る 特集80年代という時代 書標・書評
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特集 80年代という時代

 「今どきの若者は・・・」はいつの時代も耳にする言葉である。その若者もいつしか大人になり、また「今どきの若者は・・・」を繰り返すことになる。
 かつて「今どきの若者」が「新人類」と呼ばれた時代があった。1983年、マスコミによって作られ、広められた。 
最初にこの言葉をマーケティング雑誌『アクロス』で使った三浦展によれば、1960年代生まれが「新人類」だという(『大人になった新人類 三十代の自画像』河北新報社学芸部著・勁草書房・1995円)。現在30代後半、人生においても社会においても、脂がのって活躍している世代だ。彼らが思春期、青春期を過ごしたのが、1980年代である。 
 今回はその時代にスポットをあてて特集を組んでみた。

 『80’Sグッズ・マニュアル ゲーム、SF、コンピュータ。先端技術が我が家にやってきた。』(ネコ・パブリッシング・1300円)では、テレビゲーム、コンピュータ、ウォークマンなど80年代の懐かしいアイテムを並べながら、時代背景や消費文化を考察している。
 『80年代!』(前田タケシ著・宝島社・1575円)は、60年生まれのカメラマンがポップカルチャー全盛の80年代を回想し、象徴、モヒカン、パンク、ニューウェーブについて論評、自身の体験を踏まえながら、その時代の意味を解き明かした本だ。
 最前線のアーティスト・研究者に対し、どのように育ってきて、どのように仕事をしているかを聞き、20世紀日本の文化のルーツとこれからを探っているのが、『平らな時代 おたくな日本のスーパーフラット』(永江朗著・原書房・1995円)。この中で選ばれた表現分野の人たちもまた、「現在40歳を基準に前後5歳くらい」の新人類世代だ。
 

大人になった新人類
勁草書房・1995円

■思想編

 80年代はニューアカデミズムをはじめ、消費論や都市論、若者論などが流行した時代だった。
 83年に出版された『構造と力』(浅田彰著・勁草書房・2310円)は、難解と言われるフランス現代思想(ラカンやドゥルーズ=ガタリなど)を紹介した本だが、異例のベストセラーとなり、同年に出版された『チベットのモーツァルト』(中沢新一著・講談社学術文庫・1103円)とともに、いわゆる「ニューアカ」ブームを生み出したとされる。翌年に刊行された『逃走論』(浅田彰著・ちくま学芸文庫・693円)からは、「スキゾ」「パラノ」などの流行語が生まれた。
 80年代フェミニズムの旗手と言われた上野千鶴子がデビューしたのは、82年のことだった。『スカートの下の劇場』(河出書房新社・494円)はベストセラーになった。80年代日本の消費社会を分析した本に『〈私〉探しゲーム』(ちくま学芸文庫・1050円)がある。
 80年代に流行した「ポストモダン」とは何だったのか?興味のある読者の方は、『差異としての場所』(柄谷行人著・講談社学術文庫・1050円)や『郵便的不安たち#』(東浩紀著・朝日文庫・819円)などを一読されたい。
 80年代に入ると、マーケティングの分野を中心に消費論ブームが起きている。電通や博報堂などの広告代理店が提唱した80年代の新しい消費者像(「少衆論」や「分衆論」など)は大きな反響を呼び、消費社会をめぐる言説において『柔らかい個人主義の誕生』(山崎正和著・中公文庫・620円)といった大衆社会論が注目された。
 このブームに記号論、とりわけジャン・ボードリヤールの消費社会論が与えた影響は大きいと言われる。ボードリヤールは『消費社会の神話と構造』(今村仁司・塚原史訳・紀伊國屋書店・2039円)や『シミュラークルとシミュレーション』(竹原あき子訳・法政大学出版局・2625円)などの著作において消費社会の記号論的分析を行なったが、マーケティングのパラダイムを提出するものとして好都合に受容され、記号や差異を強調する「消費記号論」がマーケット戦略のうえで脚光を浴びることになった。 
 80年代は都市論が流行した時代でもあった。文学作品をテキストにして都市を読み解いた『都市空間のなかの文学』(前田愛著・ちくま学芸文庫・1680円)や、後の東京論ブームを生んだ『東京の空間人類学』(陣内秀信著・ちくま学芸文庫・945円)は、80年代書かれた都市論を代表する作品である。『江戸東京学事典』(小木新造ほか編・三省堂・5040円)では、あらゆる視点から江戸東京が解読された。 
 86年には「路上観察学会」が発足され、話題を呼んだ。『路上観察学入門』(赤瀬川原平、藤森照信、南伸坊編・ちくま文庫・819円)は、そのマニフェストの書である。『超芸術トマソン』(赤瀬川原平著・ちくま文庫・945円)や『建築探偵の冒険 東京篇』(藤森照信著・ちくま文庫・819円)では、それまでになかった視点から東京が描かれている。
 最近の本では、80年代的な広告都市を象徴する「渋谷」が90年代に移行するにつれて変容していく過程を分析した『広告都市・東京――その誕生と死』(北田暁大著・廣済堂出版・1470円)、かつての電気街からオタク街へと変貌しつつある「秋葉原」の現在の姿を描き出した『趣都の誕生 萌える都市アキハバラ』(森川嘉一郎著・幻冬舎・1575円)をお勧めしたい。
 新しく登場してきた「新人類」をめぐる若者論が隆盛したのも80年代だった。 
 『若者論を読む』(小谷敏編・世界思想社・1988円)では、70年代〜80年代にかけて提出された若者論を紹介、整理しながら、それらの言説が産出された時代背景やその意味を考察している。 
 「おたく」をめぐっては、今日まで様々な視点から多くの議論が積み重ねられてきている。80年代の終わりに書かれた『定本物語消費論』(大塚英志著・角川文庫・650円)をはじめとして、『コミュニケーション不全症候群』(中島梓著・ちくま文庫・672円)、『電子メディア論』(大澤真幸著・新曜社・3045円)、『オタク学入門』(岡田斗司夫著・新潮OH!文庫・750円)、『戦闘美少女の精神分析』(斎藤環著・太田出版・2100円)、『動物化するポストモダン』(東浩紀著・講談社現代新書・693円)など枚挙に暇がない。今年に入って、「1980年代論」という副題をもつ『「おたく」の精神史』(大塚英志著・講談社現代新書・998円)が出版された。
 

「おたく」の精神史
講談社現代新書・998円

■文学編

 80年代にベストセラーとなった文芸書には、『なんとなく、クリスタル』(田中康夫著・新潮文庫・460円)や『サラダ記念日』(俵万智著・河出文庫・462円)などがある。
 折しも世間はバブルの好景気に浮かれており、「新人類」「おたく」といった若者文化が生まれていた。この世代は、生まれた時からテレビがある一方で、昭和一桁生まれの親から戦前的な価値観を一部受け継いでいる最後の世代である。  
この「新人類」「おたく」世代に先駆けて、団塊世代の後に「しらけ」世代がある。この世代は「しらけ」という態度を通して、「柔らかい個人主義」を実践している。「新人類」「おたく」世代はそれをより徹底させたものである。
こういった世代の流れのせいか、80年代のベストセラーは泥臭さとは無縁のさらりとしたものが多い。
 80年代には、J文学、ニューウェーブ文学の旗手となった作家たちがデビューしている。
 村上春樹は79年に『風の歌を聴け』(講談社文庫・370円)で群像新人文学賞を受賞し、同年、初の単行本を上辞した。翌年に『1973年のピンボール』(講談社文庫・390円)を刊行。82年に『羊をめぐる冒険 上』(講談社文庫・各470円)で野間文藝新人賞を受賞し、85年には『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド 上』(新潮文庫・上巻620円・下巻580円)で谷崎潤一郎賞を受賞している。
 W村上として村上春樹と並び称される村上龍は、76年に『限りなく透明に近いブルー』(講談社文庫・370円)で群像新人文学賞を大学在学中に受賞。第75回芥川賞を最年少で受賞した。81年には『コインロッカー・ベイビーズ 上』(講談社文庫・各490円)で野間文藝新人賞を受賞している。
 『文学:ポスト・ムラカミの日本文学』(仲俣暁生著・朝日出版社・1260円)では、82年に『さようなら、ギャングたち』(講談社文芸文庫・1260円)を刊行した高橋源一郎と、先に述べたW村上が「言葉の更新」というキーワードで新しい文学を築いたと述べられている。
 他には、山田詠美が『ベッドタイムアイズ』(河出文庫・389円)で85年に文藝賞を受賞して、デビューした。87年には『ソウル・ミュージック・ラバーズ・オンリー』(幻冬舎文庫・480円)で直木賞を受賞している。83年には『優しいサヨクのための嬉遊曲』(新潮文庫・380円)で島田雅彦がデビューしている。
 87年には、吉本ばななが『キッチン』(角川文庫・420円)で海燕新人文学賞を受賞し、デビューした。デビュー後も順調にキャリアを重ね、『ムーンライト・シャドウ』(朝日出版社・1344円)で泉鏡花賞を受賞した。また、89年には『TUGUMI』(中公文庫・480円)で山本周五郎賞を受賞している。
 77年にデビューした橋本治は、87年に『桃尻語訳 枕草子 上』(河出文庫・上巻683円、中巻578円、下巻735円)を刊行し、古典をアヴァンギャルドな現代語に訳すという新しい姿勢で一世を風靡した。
 最近では、『負け犬の遠吠え』(講談社・1470円)がベストセラーになった酒井順子が『枕草子REMIX』(新潮社・1470円)で枕草子を現代の生活に即して訳すことに挑戦している。
 エンターテイメントでは、東野圭吾が85年に『放課後』(講談社文庫・600円)で江戸川乱歩賞を受賞して、デビューしている。
 80年代に現在の文学界を支える重要な作家たちがデビューし育っていった一方で、文学の一時代を担った大物作家たちが人生の幕を閉じ、キャリアに終止符を打った。
 81年、保田輿重郎が死去。83年には小林秀雄が死去した。同年には寺山修司も死去している。また、86年には『死の棘』(新潮文庫・740円)の島尾敏雄が死去。同年、円地文子も死去した。87年には澁澤龍彦、深沢七郎の2人も死去している。
 亡くなっていく作家もいるが、82年には、井伏鱒二、尾崎一雄、井上靖、安岡正太郎ら文学者287人が反核アピールを発表している。
 80年代は文学にとって、新しく出てきた作家と文学を作り上げてきた作家の両方の活動を見ながら、文学の流れの変わりを見つめられる幸福な時代であったようだ。


なんとなく、クリスタル
新潮文庫・460円

■社会(事件・事故)編

 ここからは80年代に起こった代表的な事件や事故を振り返りつつ、それ関する書籍を紹介しよう。 
 あの一億円拾得事件の起こった80年、新宿駅西口で起きたのが、バス放火事件である。停留所に停まっていたバスの中に火とガソリンが投げ入れられ、多くの死傷者を出した事件である。『生きてみたい、もう一度』(杉原美津子著・新風舎文庫・725円)は、この凶悪事件の被害者の一人である著者が、全身の80パーセントを焼かれ、2度も生死の境をさまよいながらも懸命に己の人生と立ち向かう姿を描いた感動作。85年には桃井かおり主演で映画化もされている。
 84年、日本中を震撼させたのが、グリコ・森永事件である。江崎グリコ社長誘拐に端を発し、次いで食料品メーカーであるグリコと森永他4社に対して相次いで脅迫が行われ、青酸カリ入りの菓子がばらまかれた事件である。自らを「かい人21面相」と名乗る犯人は未だ捕まらず、事件は2000年に全事件で時効を迎えることとなった。この事件に関しては、『グリコ・森永事件』(朝日新聞大阪社会部編・新風舎文庫・830円)、『闇に消えた怪人 グリコ・森永事件の真相』(一橋文哉著・新潮文庫・660円)、『グリコ・森永事件 最重要参考人M』(宮崎学、大谷明宏著・幻冬舎文庫・560円)などに詳しい。
 85年の重大ニュースと言えば、日航ジャンボ機の墜落だろう。羽田空港から大阪に向かって飛行していた日航ジャンボ機が群馬県・御巣鷹山の尾根に墜落。歌手の坂本九氏を含む乗客乗員520名が死亡するという大惨事となった。『日航ジャンボ機墜落』(朝日新聞社社会部編・朝日文庫・588円)には、マスコミの立場から事件をどのように捉え、報道したのか、その全記録が収められている。『葬り去られた真実 日航ジャンボ機墜落事故の疑惑』(宮本浩高著・青心社・1995円)は、この事故におけるマスコミの報道姿勢や日本の危機管理のあり方に警鐘を鳴らすドキュメント。『墜落の夏』(吉岡忍著・新潮文庫・540円)は、事故を取り巻く、たくさんの関係者―遺族、被害者、日航社員、警察―など、それぞれの視点から浮かび上がった事実を緻密に描いている。『墜落遺体』(飯塚訓著・講談社+α文庫・714円)は、この事故において検死を行った担当警察官の立場で書かれた本。そのため事故そのものについて知るに適した本ではないが、「遺体」から見えてくる事故の悲しみや不条理さが伝わってくる本である。同じ著者の続編、『墜落現場 遺された人たち 御巣鷹山、日航機123便の真実』(講談社・1575円)も併読されたい。
 また、85年には阪神タイガースが21年ぶりに日本シリーズを制し、関西は大トラ・フィーバー。その熱狂を小説という形で表したのが、『1985』(真田至著・太田出版・1575円)である。吉田義男元監督をして「読んでいて、ホンマに優勝するのかとハラハラする」と言わしめた、阪神的青春小説。あの感動をご存じの方は、胸が熱くなること必至である。
 87年、バグダッド発ソウル行の大韓航空機が爆破され、乗員乗客115人全員が死亡した。重要参考人として拘束された2人の男女は「蜂谷信一」「蜂谷真由美」という日本名を名乗り、一時、日本を騒然とさせた。その後、蜂谷真由美=金賢姫により事件の全貌が明らかにされた。『破壊工作』(野田峯雄著・宝島社文庫・680円)は、この偽装と謀略にあふれる事件を、緻密な取材力で描いたノンフィクションである。『北朝鮮女秘密工作員の告白 大韓航空機爆破事件の隠された真実』(趙甲済著・池田菊敏訳・徳間文庫・540円)は、朝鮮日報社の記者である著者が、この事件の実行犯である金賢姫に徹底した単独インタビューを行い、書き上げたドキュメント。その金賢姫が自らの半生を綴った『いま、女として 金賢姫全告白 上』(金賢姫著・文春文庫・各650円)は、ベストセラーとなった。
 消費税制度のスタートした80年代最後の年、89年には幼女を誘拐し殺すという、あの宮崎勤事件が起きた。『宮崎勤事件 塗り潰されたシナリオ』(一橋文哉著・新潮文庫・620円)は、捜査資料と精神鑑定書の再検討、関係者へのねばり強い取材によって裁判でも明らかにされていないこの事件の真実を浮かび上がらせた。『宮崎勤裁判 上』(佐木隆三著・朝日文庫・上巻609円、中巻840円、下巻882円)は、第1回公判からこの事件の裁判を傍聴している著者による事件と裁判の記録。この事件では犯行のあまりの異常さに、犯人・宮崎の精神状態を疑う声が挙がり、彼の精神鑑定に関する書籍も多く出版された。『夢のなか 連続幼女殺害事件被告の告白』(宮崎勤著・創出版・1575円)は、宮崎勤本人に文書によって行われたインタビューや被告からの手紙、評論家の解説などを収録。タイトルの「夢のなか」とは、宮崎が犯行を行ったときの気持ちとして語り波紋を呼んだ言葉である。 この年、昭和天皇が崩御し、時代は昭和から平成へと移り変わった。そして今や、時代は21世紀である。あの頃の「未来」に、僕らは立っているだろうか?


夢のなか
創出版・1575円

■政治・経済編



 時事と言うには古すぎるし、歴史と言うには新しすぎる。2004年現在から見た80年代は、そんな位置にある。
 しかし、この頃の政治・経済に関する出来事は、そのまま現在へ繋がっている。
 80年代の国際情勢を振り返ると、まずロシア・東欧における社会主義国家最後の10年間だったと言える。ベルリンの壁崩壊が89年、ソ連崩壊が91年。その瞬間を間近に控えながら、ソ連では「ペレストロイカ」と呼ばれる改革が行われていた。
 『上からの革命』(D・M・コッツ、F・ウィア著・新評論・4725円)は、そもそもソ連体制とは何か、という点から筆を起こし、その歴史を概観した上で、ゴルバチョフの主導によるペレストロイカとソ連体制の終焉について描いており、ソ連崩壊について知るための格好の書となっている。また、『クレムリンの5000日』(鈴木康雄訳・NTT出版・3675円)は、ソ連のペレストロイカ期からロシアの現在においてまで、常に外交の中枢にいたエヴゲニー・プリマコフの回想録。80年代のソ連が、いかに現在へと繋がっているのかを理解できる。
 ベルリンの壁崩壊は、冷戦の終結を象徴するものとして、その後に起こるソ連崩壊以上に世界に衝撃を与えた。
 当時のドイツを振り返る本として、まず、『ドイツ、統一された祖国』(宮川彰監訳・八朔社・2310円)がある。これは、ベルリンの壁崩壊後最初の東独首相に選ばれ、統一までの最後の社会主義政権を担ったハンス・モドロウによる当時の回想録である。東ドイツの改革の流れがよくわかる。より専門的な本としては『ドイツ統一過程の研究』(G‐J・グレースナー著・中村登志哉、中村ゆかり訳・青木書店・6300円)もある。
 現在も様々に問題を抱え、常に紛争の絶えない中東では、80年代にイラン・イラク戦争が起こった。『中東現代史』(藤村信著・岩波新書・819円)は、第2次大戦後から現在に至るまでの中東情勢を概観している。
 国内に目を向ければ、中曽根康弘が82年から87年にかけて首相を務めた。
 この間に発生したバブル経済は、現在に至るまで深刻な影響を残しているが、当時の国際情勢や政策を検証しながら、バブルについて概説しているのが、『日本のバブル』(衣川恵著・日本経済評論社・2625円)である。バブルに関連する出来事をコンパクトにまとめている。また『平成バブルの研究 上下』(村松岐夫、奥野正寛編・東洋経済新報社・各4410円)では、バブル経済について徹底的な分析を行っているが、上巻では特にバブル発生期に焦点をあてており、80年代を振り返るために必須の内容となっている。
 中曽根内閣が行った改革の一つに、電電公社、専売公社、そして国鉄の民営化がある。この間の事情については、『未完の「国鉄改革」』(葛西敬之著・東洋経済新報社・1680円)、『日本公企業史』(村上了太著、ミネルヴァ書房・3675円)などに詳しい。
 また、戦後の首相として初めて靖国神社を公式に参拝したのも中曽根首相であり、この問題も現在に至るまで繰り返し議論の対象となっている。これに関連する書籍としては、80年代当時にこの問題を取り上げた『靖国神社』(大江志乃夫著・岩波新書・735円)、近代において日本人にとって靖国神社とはどのようなものだったのかを検証した坪内祐三著『靖国』(新潮文庫・620円)がある。

■サブカルチャー編

 80年代を代表するゲームと言えば、MSXとファミリーコンピュータだ。
 MSXとは83年にアスキーとマイクロソフトによって提唱された八ビットパソコンの世界統一規格で、様々な会社からハードが発売されていた。ゲーム機としての一般への浸透度ではファミコンに負けてしまったが、専門誌も発行されていた。92年夏号を最後に発行が途絶えていたMSXの雑誌「Mマガ」が、公式エミュレータ「MSXPLAYer」付きで復活している。『MSXマガジン 永久保存版』(アスキー・2625円)と『MSXマガジン 永久保存版2』(アスキー・二九四〇円)で、名作ゲームも収録されている。これを手に入れればWindowsでも遊べるようになる。
 一方、83年に発売されたファミリーコンピュータについては、その名も『ファミリーコンピュータ』(太田出版・2625円)という本が出ている。全ソフトの写真や堀井雄二らクリエイターのインタビューも多く収録されている。東京都写真美術館で開催された特別展「レベルX」と連動しているので、資料としてもしっかりしている。
 ゲーム業界全体については、『ゲーム大国ニッポン神々の興亡』(滝田誠一郎著・青春出版社・1575円)に詳しい。任天堂やスクウェアなどの裏側が覗けて興味深い。
 現在の日本でのヒップホップカルチャー隆盛は、原因を80年代に遡ることができる。『Jラップ以前 ヒップホップ・カルチャーはこうして生まれた』(後藤明夫著・エフエム東京・1575円)は、80年代に日本でラップを見よう見まねではじめた人々のインタビュー集。現在も活躍中の人々だが、彼らの試行錯誤が今に繋がったのかもしれない。
 80年にデビューし、ノイズ・ミュージックを知らしめたのが、アインシュテュルツェンデ・ノイバウテンだ。『日蝕狩り』(武村知子著・青土社・5040円)は、リーダーのブリクサ・バーゲルトをめぐる書。その音楽をそのまま表しているかのような不思議な本だ。
 『リンダリンダラバーソール』(大槻ケンヂ著・メディアファクトリー・1260円)は、90年代初頭のバンドブームの頃を描いた作品だが、ミュージシャンである大槻ケンヂの自伝的小説なので、80年代のこともちょくちょく出てくる。80年代がどんなふうだったのか、1人の人間を通して雰囲気が味わえる。
 80年の大晦日にフジテレビでYMOの武道館ライブが放送された。テクノポップはそれほど注目されていた。YMOのマネをしてみんながテクノカットにした。『テクノポップ』(シンコーミュージック・1890円)では、各国のテクノポップと呼ばれるアルバムを紹介している。コラムやインタビューもいくつか挟みこまれていて、単なるディスクガイド以上のものになっている。
 YMOともコラボレートしていたのは、雑誌「ビックリハウス」。ビックリハウス生誕30周年を記念して出されたのが『ビックリハウス131号』(パルコ・840円)で、「ビックリハウス事典」も付いているので、当時を知らない人にもどのようなものだか窺える作りになっている。今ある雑誌のルーツがここにあったのか!と発見することが多い。 
 また、YMOの一員である細野晴臣は「スネークマンショー」のアルバムをプロデュースしている。MANZAIブームのさなか、オチの無い「スネークマンショー」は一世を風靡した。それについては、『これ、なんですか?スネークマンショー』(桑原茂一2監修・新潮社・1365円)に詳しい。
 MANZAIブームを牽引したのが、やすし・きよしだ。『天才伝説 横山やすし』(小林信彦著・文春文庫・500円)では、不祥事が絶えず自滅してしまう、やすしの人生を愛情もって描いている。
 80年代には「ガンダム」や「ナウシカ」など今でも多大な影響力をもつ長編アニメーションが多く生まれた。昨年には「風の谷のナウシカ」のDVDが発売された。劇場版を漫画化した『機動戦士ガンダム THE ORIGIN』(安彦良和著・角川書店・588〜609円)は6巻まで刊行中だ。
 漫画『東京ガールズブラボー 上』(岡崎京子著・宝島社・各945円)や『東京トンガリキッズ』(中森明夫著・角川文庫・580円)には、80年代の東京の風俗が描かれている。もちろんこの本の内容が80年代のすべてではないだろうが、懐かしかったり今見ると恥ずかしく思ったりする人も多いのではないだろうか。
 『20世紀アイドルスター大全集Part3 1980〜1989』(近代映画社・1575円)では、80年代アイドルが勢ぞろい。表紙のレイアウトも80年代を思い起こさせる。


東京トンガリキッズ
角川文庫・580円