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「夢見る紙コップ少女」 『LOCOMOTION』LOCO著・青心社・1575円
南 敬二(西宮市・38歳・自由業)
誰でも子どものころに紙コップで電話ごっこをしたことがあるだろう。でもそれは遠い思い出のひとコマのはず。ところがその紙コップで国際的なアーティストになってしまったのがこの本の著者、LOCOさんだ。美大受験に落ちて進路に悩んでいた彼女は一冊の本に出会う。それが師匠・嶋本昭三氏の『芸術とは、人を驚かせることである』(毎日新聞社・1733円)というエッセイ集。この本に衝撃を受けたLOCOさんは家出同然で師匠の元に押しかけて弟子入り志願。しかも「ボクの弟子になって下さい」と嶋本氏のほうが土下座したというからビックリだ。
師匠の教えは「世界であなたにしかできないことをしなさい」。この一言で彼女は紙コップを素材に選んだ。世界でたった一人の紙コップアーティストの誕生だ。あとはもうまさしくシンデレラストーリーさながらのトントン拍子。千人での糸電話パフォーマンスを成功させたら、今度は海外のアートフェスティバルから招聘が舞い込む。アトリエに糸電話で注文する喫茶店を開店させたかと思えば、コップ人間になって結婚式まで挙げてしまう。
LOCOさんの周りには紙コップの糸に引き寄せられるようにたくさんの人が集まってくる。だから彼女が生みだすアートはとてもにぎやかで楽しい。この本を読むと、もしかしたら誰でも世界で自分にしかできないことが見つけられるかもしれないという気持ちにさせてくれる。そしてアートの魅力が、じつは人柄だということにも気づかせてくれるはずだ。
「バルバラ異界」 『バルバラ異界』 二巻まで刊行・以下続刊 萩尾望都著・小学館・各530円
篠原 純(所沢市・30歳・会社員)
高校生の頃友だちに『トーマの心臓』(小学館文庫)をすすめられて以来の萩尾望都ファンのわたしだが、実はSF寄りの萩尾望都のほうが好みなのだ。『A‐A'』(小学館文庫)や『銀の三角』(早川書房)など何度も読み返したのだが、『バルバラ異界』にはもっと惹きこまれている。この漫画は雑誌「フラワーズ」(小学館)に隔月連載されている。今まで好きになった作品はすべて完結していたので、続きが待ち遠しい思いをするのは初めてで、楽しみでもあり苦しくもあるところだ。
この物語世界の全体像はまだはっきりしていない。読んでいくうちに物語の舞台が近未来なのだとわかる。そして、ある事件をきっかけに眠りこんでいる、重要な登場人物の少女が夢見ている世界「バルバラ」は、物語世界のちょうど百年後の世界だ。入れ子のような設定になっている。また、「バルバラ」というキーワードがそこここに出てきて謎解きの要素もあり、注目せずにはいられない。
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