書標 2004.5月号
今月の表紙 歳時記〈5月〉 著書を語る 特集「モノ」の誕生 書標・書評
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特集 「モノ」の誕生

 NHKのドキュメンタリー番組「プロジェクトX」が人気を博している。戦後日本において実際にあった、様々な出来事の舞台裏で、困難に遭遇しながらも、それに立ち向かい、プロジェクトを成功させた無名の日本人たちの活躍を描いたこの作品は、見る人に多くの共感と感動を呼んでいる。読者の中にはご覧になっている方もいらっしゃるだろう。
 番組に多く登場するのが、日々、モノづくりの現場に身を置き、新しい技術開発に取り組む、無名の技術者たちの姿である。私たちの身近にある多くのモノは、試行錯誤を繰り返し、幾つもの壁を乗り越えて製品化に成功させた、彼らの努力の結晶でもあるのだ。
 今回は、技術開発やモノづくりの現場に焦点を当て、様々なモノの誕生にまつわる開発秘話や知られざるエピソードを綴った本を中心に紹介します。


 冒頭で紹介した「プロジェクトX」は、シリーズとして書籍化され、これまでの番組内容が収録されている。『プロジェクトX 挑戦者たち(1〜21、刊行中)』(NHKプロジェクトX制作班編・NHK出版・各1785円)。また、『プロジェクトX リーダーたちの言葉』(今井彰著・文春文庫・540円)は、番組プロデューサーである著者が、番組に登場したプロジェクト・リーダーたちが語った言葉を厳選して収録したもの。さらに、出演者との対談集、『プロジェクトX ザ・マン すべては感動からはじまる』(須磨久善、高野甲子雄、山口良治著・今井彰聞き手・NHK出版・1050円)といった本も出版されている。
 さて、「元祖プロジェクトX」とも言える本が、『新版 匠の時代(第1巻〜第6巻)』(内橋克人著・講談社文庫・各540円〜680円)だ。今から25年前に書かれたこの作品は、長らく品切れとなっていたが、最近、文庫化されるにあたり、自選集として復刊された。「技術立国」日本を支える技術者たちの群像を鮮やかに描いた、著者の代表的な作品の一つとなっている。また、試行錯誤の末、カシオの電卓を生み、日本の半導体産業を世界的地位に押し上げたと言われる、樫尾4兄弟の軌跡を克明にたどった『考える一族 カシオ四兄弟・先端技術の航跡』(岩波現代文庫・945円)も併せて読んでおきたい1冊だ。
 

匠たちの挑戦
オーム社・2940円

 『匠たちの挑戦 日本発、技術開発物語(1〜3)』(研究産業協会監修・オーム社編・オーム社・各2940円)は、日本の基盤技術を確立した先達の足跡をたどり、その息吹やエピソード、開発上の苦労点、ブレイクスルーの瞬間などを臨場感ある記述でまとめた、ずっしりとした読み応えのある本だ。『メタルカラーの時代(1〜6、刊行中)』(山根一眞著・小学館文庫・各620円〜650円)は、技術開発に情熱を注ぐ技術者を「メタルカラー」と呼ぶ著者が、技術者たちによる証言をもとに、モノづくりの迫真に迫ったノンフィクションだ。本書は、著者のライフワークとなっており、1000人の「メタルカラー」による証言を収録することを目指して、現在も精力的にインタビューが続けられている。
 『メルセデス・ベンツに乗るということ』(日経ビジネス人文庫・900円)が話題を呼んだ著者の赤池学も技術開発の現場を中心に活発な取材活動を行うことで知られる1人だ。著書は多数あるが、ここでは、「世界も一目置く」日本の技術について50を越える実例を紹介した、『ものづくりの方舟』(講談社・1890円)、ジェット機やロケット、核融合炉、マイクロマシンなどの機器開発を「経験と勘」という、アナログな技術で支えている企業とそこで活躍する熟練工たちを取材した『ローテクの最先端は実はハイテクよりずっとスゴイんです。』(ウェッジ・1890円)の2冊を挙げておこう。
 

ローテクの最先端は実はハイテクよりずっとスゴイんです。
ウェッジ・1890円

 『日本発!世界技術 この会社が経済再生の原動力になる』(溝口敦著・小学館・1575円)は、暴力団などの組織犯罪の取材レポートで知られる著者が、世界最先端を誇る技術や次世代技術の研究開発に取り組む日本企業を紹介するという異色の本。また、『増補版 日本の技術(ワザ)は世界一 先端企業100社』(毎日新聞経済部著・新潮文庫・460円)や『世界を制した中小企業』(黒崎誠著・講談社現代新書・735円)など、高度な科学技術の分野において「世界一」のシェアを持つ日本の企業やその先端技術を紹介した本も多い。


百万分の一の歯車!
中経出版・1470円

 樹研工業が開発に成功した100万分の一グラムの歯車。「パウダーパーツ」と呼ばれる、肉眼ではただのチリにしか見えない超極小歯車には5枚の歯がついており、きちんと回転するように設計されている。だだし、小さすぎて使い途はまだないという。なぜ莫大な開発費を投入してまで、わざわざ用途のないモノをつくるのか?『百万分の一の歯車! 世界一の超極小部品をつくる樹研工業の技と哲学』(松浦元男著・中経出版・1470円)には、特化した技術で大企業をしのぐ一中小企業の戦略が詳しく紹介されている。
 8000社もの中小企業が集まる東大阪市はまさに町工場の町。『東大阪元気工場』(品川隆幸著・小学館文庫・500円)は、その中の約百社で構成される異業種集団「ロダン21」を取材したルポタージュだ。モノづくりに懸ける大阪の職人パワーの熱い息吹が伝わってくる。一方、『東京元気工場』(竹内宏編著・小学館文庫・500円)は、経験と知恵を駆使しながら、自ら発信して新しいマーケットを生み出そうとする東京にある町工場の事業主たちがモノづくりの技と哲学を熱く語った本。タイトルを読んだだけでも、元気が出てきそうな本である。
 戦後の高度経済成長を陰で支えてきた日本の町工場を象徴する、東京都大田区。
町工場職人群像 松本俊次写真集』(松本俊次著・大月書店・2415円)は、大田区にある町工場で働く人々の姿を九年の歳月をかけて撮影した写真集だ。


俺が、つくる!
中経出版・1470円

 『俺が、つくる!』(中経出版・1470円)、『あしたの発想学 いかにして痛くない注射針はできたのか!?』(リヨン社発行・二見書房発売・1470円)は、「金型の魔術師」などと称される、金型プレス職人・岡野雅行みずからがその職人魂を語った本である。墨田区の小さな町工場から作り出される製品は、『TIME』誌が賞賛するなど、世界中から注目を浴びている。『不可能を可能にした男 技術力で世界に挑む職人 岡野雅行』(篁笙子著・メトロポリタン出版発行・星雲社発売・1575円)も併読されることをお勧めしたい。
 『職人技を見て歩く 人工心臓、トイレ、万年筆、五重塔・・・』(林光著・光文社新書・735円)は、様々な日本の職人芸を見学するという内容の本。人工心臓やインクジェットプリンターのインク、果ては送電鉄塔など、様々な産業の中にある職人の技を掘り起こしている。


親から子に伝える「モノづくり」誕生物語1
日刊工業新聞社・1380円

 ところで、毎日使っている日用品や家電製品などの生活必需品は、誰が考えついて生み出したのだろうか?『親から子に伝える「モノづくり」誕生物語 身近なモノの履歴書(その1〜その5)』(日刊工業新聞社MOOK編集部編・日刊工業新聞社・各1380円)では、身の回りにあるモノを「家電製品」「日用品」「文具・事務用品」「食品/医療・医薬品」「産業・工業機器」の5つに分類し、それらがどのような紆余曲折を経て登場したのか、当時と現在の製品の写真を掲載しながら、分かりやすく紹介している。「氏名=炊飯器、市民権獲得=1950年、本籍(生誕地)=川崎市、生みの親=東芝」など、それぞれの商品に簡単な履歴書が付けられていて、面白い構成になっている。同じ著者による『身近なモノの履歴書を知る事典 アイスクリームからワンマンバスまで』(日刊工業新聞社・7875円)は、調べるのに便利な事典。他にも、国産第1号モノや世界初モノの日本製品を紹介した、『国産はじめて物語 世界に挑戦した日本製品の誕生秘話』(レトロ商品研究所編・ナナ・コーポレート・コミュニケーション・1680円)、高度成長時代に発売された逸品や珍品を開発秘話を交えながら、当時の新聞広告とともに紹介した、『ぼくらのメイドインジャパン 昭和30年〜昭和40年代』(藤沢太郎著・小学館・1680円)など、どれも見ていて楽しい1冊だ。


国産はじめて物語
ナナ・コーポレート・コミュニケーション・1680円

 誰もが知っているロングセラー商品やCMをにぎわすヒット商品の数々・・・。それらはどのようにして誕生したのか?意外と知られていないことが多い。『ヒット商品の舞台裏』(福冨忠和著・アスキー・1890円)や『開発者列伝 あのヒット商品はこうして生まれた』(日経エレトロニクス編・日経BP社・1470円)、『こんな時代でも売れたんです。商品開発物語60話』(エコノミスト編集部編・日本経済評論社・1575円)では、様々なヒット商品の開発秘話を紹介し、その誕生の舞台裏を解き明かしている。


開発者列伝
日経BP社・1470円

 たまには、マンガで読んでみるのもいいかも知れない。『まんが・ヒット商品誕生物語』(大須賀友一著・宝島社文庫・560円)、『マンガで読む「ロングセラー商品」誕生物語 誰が考えたのか、どうやって作ったのか』(藤井龍二著・PHP文庫・560円)などが出版されている。
 世の中には、一体誰が使うのか?と思ってしまうような商品やかゆいところに手が届いたアイデア商品などもたくさん発売されている。『トレたま おもしろモノ大集合』(テレビ東京「ワールドビジネスサテライト」編・日経ビジネス人文庫・580円)では、絶対に二度寝させない目覚し時計、家賃催促マシーン、食べられる写真など、面白くて便利だが、ちょっと「ヘン」と思わせる商品が、どうやって生まれたのかを紹介している。
 「無洗剤」というコンセプトが、私たち消費者に新鮮なインパクトを与えたことは記憶に新しい。『洗剤ゼロへの挑戦 「洗剤ゼロ・コース」洗濯機のインパクト』(高杉晋吾著・ダイヤモンド社・1680円)は、三洋電機の「無洗剤コースつき洗濯機」をあらゆる角度から眺め回し、誕生までのドラマを描いたもの。『足元の革命』(前田和男著・新潮新書・714円)では、歩行の意味を根本的に問い直し、日本初の本格的ウォーキング・シューズを誕生させた、アシックスの開発チームの挑戦が描かれている。日本人の足元の革命には、今もさらなる進化が続いている。
 子どもの頃、「プラモづくり」に夢中になった経験をお持ちの読者の方もいらっしゃるだろう。今や世界一の模型メーカーに成長した、『田宮模型の仕事 増補版』(田宮俊作著・文春文庫・550円)は、社長である著者が綴った涙あり、笑いありの奮戦記だ。
 お菓子のおまけフィギュア=「食玩」。その概念と市場を大きく変えたと言われる、海洋堂フィギュア。『創るモノは夜空にきらめく星の数ほど無限にある 海洋堂物語』(宮脇修著・講談社・1890円)は、一坪半の模型店から始まった海洋堂の歴史とモノづくりの精神を創業者みずからが書いた本だ。


創るモノは夜空にきらめく星の数ほど無限にある
講談社・1890円

 『めざすはライカ! ある技術者がたどる日本カメラの軌跡』(神尾健三著・草思社・1890円)では、戦後のミノルタで技術者として働いた著者が、敗戦時からドイツカメラを追い抜き、世界一のカメラ大国になる様を回想しつつ、様々な技術者たちの苦闘のドラマが描き出されている。
 日本が世界に誇るモノづくりといえば、「乗りもの」がまず思い浮かぶ。
乗りものの中でも、特に身近なのは車だろう。テレビをつければ、必ず車のコマーシャルが番組のあいまに流れる。外国の映画においても、しばしば日本製の車が登場する。
 今や日本で最大手となったメーカーも最初は世界に追いつくことを目標としてモノづくりを行っていた。
 『定本 本田宗一郎伝 あくなき挑戦大いなる勇気』(中部博著・三樹書房・2520円)は、自動車産業大手メーカー、ホンダの創業者・本田宗一郎の軌跡を忠実にまとめたもの。また、創業から現在までの本田技研の発展の記録も掲載されている。『ディーゼルエンジンの挑戦 世界を凌駕した日本の技術者達の軌跡』(鈴木孝著・三樹書房・2100円)は、世界のトラックメーカーを目標として独自の技術を開発し、特に優れたエンジンで成長した日野自動車のドキュメントである。『ドイツの名車BMWに挑んだNGKプラグの技術者たち』(西尾兼光著・理工評論出版・2100円)は、2年にわたって繰り広げられた自動車部品の開発と自社の製品を世界一にしたいという夢に挑んだ2人の日本人技術者の挑戦が書かれている。


スバル360を創った男
郁朋社・1260円

 『スバル360を創った男 飛行機屋百瀬晋六の自動車開発物語』(百瀬晋六刊行会編・郁朋社・1260円)では、日本初の大衆車、「てんとう虫」製作に取り組んだエンジニア、百瀬晋六とスタッフたちの挑戦が描かれている。他に、『キャンピングカーをつくる30人の男たち こだわりをカタチにした男達の記録』(町田厚成著・自動車週報社・1680円)では、十年で独自の発展を遂げた、日本のキャンピングカーの開発者30人を取り上げられている。『名車を生む力 時代をつくった三人のエンジニア』(いのうえこーいち著・二玄社・1575円)は、トヨタ2000GT(野崎喩)、ユーノス・ロードスター(立花啓毅)など、「時代をつくったクルマ」の発案者、創造主それぞれに話を聞いている。



20世紀のエンジン史
三樹書房・2520円

 優れた部品の開発は、モノづくりに大いに貢献している。『20世紀のエンジン史 スリーブバルブと航空ディーゼルの興亡』(鈴木孝著・三樹書房・2520円)は、乗りものには欠かせないエンジンの物語である。この100年のうちに進歩を遂げたエンジンについて、その裏にある技術者たちの戦いを掘り起こしている。特に、スリーブバルブエンジと航空ディーゼルエンジンの魅力に取り憑かれたエンジニアたちに焦点を当て執筆されている。『モノづくりを究めた男たち』(広田民郎著・グランプリ出版・1680円)では、フェラーリの塗装と板金のプロフェッショナルなど、自動車業界の舞台裏で腕と技術に誇りと持って、モノづくりに打ち込む職人たちの姿が描かれている。


未来カー・新型プリウス
日経BP社・1890円

 現在も自動車分野では、モノづくりにおいて、新しい挑戦が続けられている。例えば、『未来カー・新型プリウス エンジニアたちの挑戦』(御堀直嗣著・日経BP社・1890円)は、地球環境に考慮したエコカーの開発についての本である。環境に関心のあるユーザーばかりではなく、普通の消費者にも受け入れられるよう「燃費」だけでなく、「速さ」にもこだわった新しい挑戦について書かれている。
 自動車の他に乗りものでは、今日の電車王国を築いた、「こだま形」電車の開発に携わった技術者たちに焦点を当てた、『ビジネス特急「こだま」を走らせた男たち』(福原俊一著・JTB出版事業局・1890円)がある。また他に鉄道では、新幹線の開発者である島秀雄の伝記、『新幹線をつくった男 島秀雄物語』(高橋団吉著・小学館・1890円)がある。新幹線車両の技術者の著作では、『「ものづくり」の危機に立ち向かう 新幹線「のぞみ」生産現場の技術者の挑戦』(石丸靖男著・文芸社・1050円)の中で、アルミ合金製新幹線車両の生産システムの開発に成功した技術者が、「モノづくり」のあり方を問いかけている。


ビジネス特急「こだま」を走らせた男たち
三樹書房・2520円

 飛行機は、『ライト兄弟 大空への夢を実現した兄弟の物語』(富塚清著・山崎明夫編・三樹書房・1890円)でも紹介されているように、ライト兄弟によって1903年に発明された。そして、今日、私たちが旅行などの交通手段として活用している旅客機の開発は、『ボーイング747を創った男たち ワイドボディの奇跡』(クライヴ・アーヴィング著・手島尚訳・講談社・2310円)に始まる。椅子に座った状態で飛ぶことができる飛行機をつくる、この劇的な発想の転換で今までに存在しなかった名機を生み出した。世界を縮めた後退翼の名機の発想の始まりは、ナプキンへの落書きから始まった。本書ではそのいきさつが書かれている。


国産旅客機が世界の空を飛ぶ日
 講談社・1890円
 
 一方、日本では、民間ビジネスのリスクのために、民間旅客機の開発にしり込みしていた。『国産旅客機が世界の空を飛ぶ日』(前間孝則著・講談社・1890円)では、三菱重工の国産ジェット旅客機開発への挑戦が書かれている。他にも、『YS―11 国産旅客機を創った男たち(上)』(前間孝則著・講談社+α文庫・各819円)では、昭和30年代末の後進工業国日本において、ほとんど不可能とされていた国産旅客機の開発の様子が描かれている。官民を挙げての一台プロジェクトとなり、数々の困難を克服して、初飛行に成功したが、国際民間機ビジネス商戦により、厳しい運命にさらされることになった。
 日本の飛行機開発は軍事用として発達したものが多い。『ジェットエンジンに取り憑かれた男 (上)国産ジェット機「橘花」(下)世界水準V2500』(前間孝則著・講談社+α文庫・各777円)では、第一次世界大戦中の海軍航空技術廠発動部内において、当時日本には言葉も形もなかったジェットエンジン開発への挑戦が書かれている。
種子島時休、永野治らを中心としてほんの数人で開発された日本初のジェット機「橘花」は終戦直前に完成した。
 『零戦の誕生』(森史朗著・光人社・2100円)では、零戦の開発、実験研究、テスト飛行などの様子が描かれている。『日本初のロケット戦闘機「秋水」液体ロケットエンジン機の誕生』(松岡久光著・三樹書房・1995円)では、太平洋戦争末期にB29迎撃機として開発された、日本発の液体ロケット戦闘機「秋水」について、開発者の証言と豊富な資料を元に書かれている。
 
 
 『日本初のロケット戦闘機「秋水」液体ロケットエンジン機の誕生
 三樹書房・1995円
 
 
 軍事用に発達してきた技術は戦後、どのようにモノづくりに生かされたのか?『帰ってきた二式大艇 海上自衛隊飛行艇開発物語』(碇義朗著・光人社・2100円)は、かつて97式大艇、2式大艇、戦闘機紫電改を生みだした航空技術陣が戦後、「戦闘機から人命救助へ」と新しい挑戦と技術開発に向かっていく過程が描かれている。
 飛行機は現在も、未来に向けて試行錯誤が繰り返されている。『NASA航空機の驚異 こんな飛行機見たことない』(中冨信夫著・講談社+α文庫・1260円)は、超音速で飛ぶ、尾翼のない飛行機をつくる、など夢の飛行機をつくるためのNASA航空機開発の独自なアイディアを写真つきで紹介している。
 これからどんどん進歩していくであろうモノづくりに、ロボット開発がある。
 『人生の教科書 「ロボットと生きる」』(藤原和博・東嶋和子・門田和雄著・筑摩書房・1575円)は、ASIMOや寿司を握るロボットなど、現在、実際に実用化されているものから、鉄腕アトムなど未来に向けて実用化の予想など、ロボットづくりの現場、アイディアなどロボットに関する様々な側面を切り取って、一冊の書籍にまとめている。『鉄腕アトムは実現できるか? ロボカップが切り拓く未来』(松原仁著・河出書房新社・1575円)では、ロボットと呼べる存在がなかった鉄腕アトムが書かれた時代に比べ、研究が進んだ現在においては、どれくらい人工的に人間を作れるようになったのか、チェスの世界チャンピョンに勝った人工知能を例に詳しく説明されている。また、本書で述べられているロボカップは、ロボット工学と人工知能の融合・発展のために自律移動ロボットによるサッカーを題材として日本の研究者らによって提唱された。現在では、サッカーだけでなく、大規模災害へのロボットの応用としてレスキュー、次世代の技術のジュニアなどが組織されている。
 ロボットの分野のモノづくりには子どもたちも多く参加している。先のロボカップ関連では、『ロボカップジュニアガイドブック ロボットの歴史から製作のヒントまで』(子供の科学編集部編・誠文堂新光社・1260円)の中で、小学生から参加できるロボカップジュニアへの参加方法などが紹介されている。『ロボコンスーパー中学校 八戸三中の熱闘』(村松寿満美子他編・普後均撮影・INAX出版・1575円)は、アイディアで対決するロボットコンテストを技術授業の実践に取り入れている、青森の公立中学のドキュメントである。日本のモノづくりの芽が着々と育っている様子がわかる。
 
 最後に。旋盤工作家、小関智弘の一連の仕事を私たちは忘れてはならないだろう。18歳から中小の町工場が密集する大田区で旋盤工として働いてきた経験をもとに、町工場に生きる誇り高い職人の姿を描き、働くことの意味を問い続けている作家だ。代表作に、『粋な旋盤工』(岩波現代文庫・945円)、『大森界隈職人往来』(岩波現代文庫・1050円)、『鉄を削る 町工場の技術』(ちくま文庫・567円)、『仕事が人をつくる』(岩波新書・714円)、『働くことは生きること』(講談社現代新書・735円)などがある。彼の作品を読むと、「仕事をする」とはどういうことか、改めて深く考えさせられる。



 『粋な旋盤工
岩波現代文庫・945円