書標 2004.3月号
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今月の表紙  その190 伊丹三樹彦



 四万十の笹枯れ 水減り 沈下橋

 清流でとみに有名な四万十川に縁があって、昨年は下流を、今年は上流を探ねることが出来た。窪川町で写俳の友の岩崎勇が、「イタリア夢回廊」なる個展を開いたからである。
 近くには、たむらちせいを始め、青玄の句友も多いので、中土佐の田舎町とはいえ、風雅の士が俄かに集まった。
 ギャラリイの合間を縫うて、勇は四万十川の沈下橋の二、三を案内してくれた。出水のときは、文字通り沈下することで、逆に流失を免れるという構造だ。従ってコンクリートの橋上には何もない。殺風景極まるが、珍しさもあって、取材の対象になっている。
 幸い好天気のため、橋脚には橋床の濃い影が連なっているのがフォトジェニックな効果を見せた。頬被りをした老女が対岸の村から一人だけ橋を渡ってきた。「ゲートボールの日じゃけ」と仰言った。





(表紙題字 陳舜臣)