書標 2004.1月号
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今月の表紙  その188 伊丹三樹彦



 アボリジニの垂乳根子らに翼与え

 この秋のメルボルン行では、三女の夫である李斉文(リー・チェイブン)の車で毎日のように走った。彼はシンガポール生れで華僑の息子だ。僕の三女の凪子とはパースの西オーストラリア大学で知り合った。学窓結婚というべきか。英語と中国語は得意だが、日本語は苦手だ。だから日本には住みたがらない。凪子の方が日本の大学へ單身赴任で来ても、留守宅を守り、長男の昭洋(チャオヤン)の教育に打ち込んでいる。自身はパソコンとスポーツとドライブが好きである。で、「お父さん、彫刻に興味あるか」と問われて、「うんうん」と答えたところ、このアボリジニを彫んだ像が、羊歯の茂る森の随所に立っている聖域(サンクチュアリ)と稱するアート・ゾーンを案内された。ウイリアム・リケッツというオーストラリア人が生涯を賭けての造像は、原住民讃歌の一大交響楽ともなっている。





(表紙題字 陳舜臣)