書標 2007.4月号
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『土曜の午後』  藤井 英子
 
 昔、映画で見たニューヨークの本屋さんでは、子供たちの本のコーナーにふかふかの絨毯がひかれ、子供たちは寝転がって本を読んでいました。大人たちは、コーヒーを飲んだり、マフィンを食べたりしながら暖かいインテリアの中で本に熱中しています。
 「なんか、幸せそうだな〜」と思ったのを覚えています。その頃は日本に、ゆっくり座って本を選ぶという本屋さんはなかったから。でもそれにちょっと近い本屋が近所にできました。池袋のジュンク堂です。夫と私、10歳の娘は、土曜の午後をよくここで過ごします。
 娘は、トマトやきゅうりを買う主婦のように慣れた手つきでカゴにぽんぽんと本を入れていきます。一見すると、いいかげんなようですが、手には新聞や雑誌に出ている子供向けの本を紹介した切り抜き記事を握り締めています。赤丸をつけた本を画面検索で探すのもお手のもの。あっという間に、お目当ての本をカゴに入れると、今度は書棚をじっくり見ながら興味をひかれた本を手にとり、座り込んで読んでいます。絵本や短い伝記漫画などは読破して、棚にもどすことも。本屋さん、ごめんなさい。
 それから家族で、他の階も探検しお宝を探します。動物の写真集コーナーやおもしろ地図帳のコーナーはお宝の山でした。階下までおりきって、全員の本の会計をし、お茶券は出た日は喫茶室へ。娘はジュースを、私たちはコーヒーをいただきながら、今日収穫した本について話が弾みます。ニューヨーク、とまではいきませんが、ちょっぴり幸せな午後です。
 それにしても、夫と娘は本代にイトメをつけないタイプ。私は、といえば、「文庫になるまで、待とうかな〜。」と思ってしまうたちなので、なんだか損をしているような気もしますが、迷い倒して大事に一冊づつ選んで買う私のスタイルだって、大型書店は楽しいのです。願わくば、もうちょっとニューヨークに近づいた暖かいインテリア空間になって欲しいなあ。 
(東京都・主婦・46歳)


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