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子どもに物を教えるのは学校の先生だけの仕事ではない。当然のことながら、家庭内教育も、子どもの成長のために極めて重要な要素である。子どもが成長と共に抱く疑問、社会に出て行く上での基礎知識などは、学校では教えてくれないことも多い。
しかし子どもに分かりやすく物事を解説するのはなかなか難しい。子どもから鋭い質問を受けて、たじたじとなってしまった経験をお持ちの方も多いのではないだろうか。 今回は、親子共に興味深く読め、そして学ぶことの出来る本を、5つのジャンルにわたってご紹介する。卒業・入学シーズンのこの季節に、人生を生きていく上での根幹をなす知識について、親子で共に学んでみてはいかがだろうか。
『 数の悪魔 算数・数学が楽しくなる12夜』(エンツェンスベルガー著・丘沢静也訳・晶文社・1,680円)ロバート少年の夢の中に数の悪魔と名乗る奇妙な老人があらわれて算数のレッスンを始める。数の悪魔が魔法のステッキを一振りすれば、嫌いなはずの数の法則が目からウロコが落ちるようにわかるのだ。子どももお父さんもおじいさんも数学の先生も、こんなに面白く数の不思議がわかるなんて、と大絶賛の一冊。カラフルなイラストと色鉛筆の計算式が絵本のような楽しさ。 『クローン羊の作り方』(ヘイゼル・リチャードスン著・千葉茂樹訳・晶文社・1,260円) クローンって最近よくきくけれど、いったい何? 遺伝子って? DNAって? 「ジュラシックパーク」ってほんとに可能なの? クローンはこわいという人もいるけど何がそんなに問題なの? 数々の疑問にやさしい例をあげながらイラストと文章で丁寧に解説する。 なぜ海の水はしょっぱいの? なぜ夕焼けは赤いの? 月や星は、どうして動くと一緒にくっついてくるの? 子どものころに感じた素朴な疑問。大人になってなんとなくわかったつもりになっているけれど、いざ自分の子どもに聞かれるとすらすら答えられない人も多いはず。 かの伊丹十三氏は自らの子育ての最中に同じ質問にでくわし、『問いつめられたパパとママの本』(新潮文庫・420円)を著すほどに研究したが、そんな文才も余裕もないよ、と言う方々には『親も子も「わかった!」パパが教える科学の授業』(もりした著・石森愛彦イラスト・宝島社・1,575円)、『世界一おもしろい「科学」の本』(小笠原政次著・三笠書房・560円)が強い味方。 『おもしろくても理科』(清水義範著・西原理恵子絵・講談社・490円) 「別に理科や科学の専門家でもない一小説家の」著者が「理科もなかなかおもしろいものですよ、ということを」伝えたくてエッセイ風にしたためたもの。しかも鬼才西原理恵子が理科音痴の素人代表としてマンガで鋭いつっこみをいれる。好評とみえてシリーズ化されており、『どうころんでも社会科』(講談社・560円)や『いやでも楽しめる算数』(講談社・540円)なども出ている。 それでもやっぱり科学や理科は生理的に苦手、という方には『おいしさを科学する』(伏木亨著・ちくまプリマー新書・756円)がおすすめ。身近な食にまつわる「科学」なら「科学」と思わずに読み進められるかも。味噌汁にダシを入れ忘れた経験はおありだろうか? 見た目はまったく同じ味噌汁なのにあれほど水臭くまずいしろものはないのである。この本ではダシとは何か、なんでダシがおいしいかを解き明かす。 身近な食ではなくて宇宙のことが知りたいのだ、という方には『カラー版宇宙に行くニャ!』(山田ふしぎ著・岩波ジュニア新書・1,029円)はいかが。なぜなにと質問するネコのタンメンと、物知りネコのビーフンがナビゲーターとなって案内する宇宙旅行。全ページカラーの漫画と写真解説で分かりやすい一冊となっている。
思春期に避けては通れない、身体の成長の問題。この章では、一人では対処できないが、周囲には聞きにくい疑問や問題に、答えてくれる本を集めてみた。巷にはセックスに関する情報が溢れ、間違った知識を持ったまま、とりかえしのつかない事態に陥るケースも少なくない。性教育を学校任せにせず、家庭でも親子で話し合う必要が出てきているのではないか。 まず子供が小さなうちから家に完備しておきたいのが、『ぼくどこからきたの?』(ピーター、メイル著・谷川俊太郎訳・河出書房新社・1,680円)だ。性について悪い印象を持って大人になる人は多い。セックスは悪いことではなく愛の象徴なのだと、ユーモアたっぷりに伝えるこの絵本で、始めの一歩を踏み出せるかどうかは、その後の人生に大いに関わってくると思う。 思春期の女の子向けにお勧めなのは、『これから女の子になるための女の子大事典』(ソニヤ・フェールチャック著・主婦の友社・1,365円)。フランスでベストセラーになった女の子バイブルの邦訳で、従来、知るにはまだ早すぎるテーマと避けられてきたことに、正面から応えていく。家族関係やライフスタイルに関しても書かれているのが特徴だ。どぎつい目次のわりに内容は堅実で、一貫してまわりと自分を思いやる姿勢を示しているので、安心できる。『ティーンズ・ボディーブック』(北村邦夫著・扶桑社・1,000円)は、「ジュニー」編集部が十代の女の子に贈る、身体とセックスがわかる本。わかりやすいイラストと解説で、入門書に丁度いい。 男の子向けにはやはり、発売当初から爆発的な人気となった『 正しい保健体育』(みうらじゅん著・理論社よりみちパン!セ・1,260円)がいいだろう。正しい知識というよりは、性に対する正しい姿勢、つまり堅苦しく考えなくても人それぞれなんだから、何が正しいなんてないよと語りかけるもの。想像力を持つこと、それが相手を大切にし、また自分が楽しむために必要だと教えてくれる。『学校で教えない性教育の本』(河野美香著・ちくまプリマー新書・714円)は、レディースクリニックを営んでいる著者が、Q&A方式で様々な若者の悩みに応えていく。性に関してあまり知識がない人向けであるが、学校では教えない気持ちについて丁寧に書かれている。 また、セックスに関わらず若いうちは気になる容姿の問題。『10代のフィジカルヘルスAおしゃれ&プチ整形』(岡村理栄子・金子由美子著・大月書店・1,890円)は、安価な化粧品が原因のアレルギー皮膚炎や、ピアスが化膿してケロイドになってしまうことなど、危険な点を指摘する。おしゃれは悪いことではないけれど、知識のないままでやってはいけない。同シリーズには『ダイエット』(石垣ちぐさ・本間江理子著・大月書店・1,890円)もあり、身体ができる前のダイエットの危険を説く。親や教師が禁止するのには訳があることを、きちんと知ってほしい。
ここでは、中学生から高校生を読者と想定して、歴史認識を養い、それと同時に、ニュースを見る力を養うための読み物をいくつか紹介していきたい。
まずは、『 14歳からの哲学』(池田晶子著・トランスビュー・1,260円)。子供向けの哲学書と言えば、真っ先に挙げられるのはこの本だろう。いわゆる古典哲学を解説するスタイルの哲学入門書ではなく、「『考える』とはどのようなことか」「『自分』とは誰か」といった問いが、読者に語りかけるように、平易な言葉で展開されていく。中高生向けに書かれたものではあるが、幅広い読者層を得て、2003年の人文書のベストセラーとなった。この本の続編にあたる、『14歳の君へ』(毎日新聞社・1,200円)も昨年末に出版されている。少し変わった哲学の入門書としては、『ギリシア・ローマの奇人たち』(ロジェ=ポル・ドロワ、ジャン=フィリップ・ド・トナック著・紀伊國屋書店・1,890円)もお勧め。奇人と呼ばれた古代の哲学者たちの、滑稽とも思えるエピソードの数々が紹介され、短編小説集のような感覚で読み進めるうちに、読者はいつの間にか哲学の世界の入り口に立たされている。執筆者の一人であるロジェ=ポル・ドロワには『暮らしの哲学』(ソニー・マガジンズ・725円)という著作もあり、こちらも面白い。普段はまったく意識することのない、ありふれた状況や日常的な動作を、ちょっとだけずらしてみたり、視点を変えて見たりすることで、世界が違ったものに感じられる――。それが哲学の基本である、というのが著者の主張。そのきっかけをつくるために、「ていねいに字を書く→(我を忘れる)」「延々と階段を降りる→(内省的になる)」「頭の中でリンゴの皮をむく→(集中力が高まる)」などの例題が101題用意されており、思わず実践したくなる。ちなみに「書店をぶらつく」なんていう例題もあるので、どんな効果があるのか是非お試しあれ。 次に紹介したいのは、『君たちはどう生きるか』(吉野源三郎著・岩波文庫・735円)。コペル君という中学二年生の男の子が、周囲の人々との交流を通して、精神的成長を遂げる様子を描いた物語である。タイトル通り、「人生どう生くべきか」を説く人生指南書といった趣だ。1937年に新潮社から初版が出て以来、途中版元を変えながら、長く読み継がれてきた。対象読者層はコペル君と同じぐらいの世代だろうと思われるが、丸山眞男は、この本を大学の助手時代に読んで、「震撼される思いをした」(巻末の解説より)そうである。身の周りで起きた些細な物事について思いを巡らせるうちに、普遍的な哲学の問題へとたどり着くコペル君を見ていると、くすぶっていた感受性が息を吹き返すような気がしてくる。大人にこそ読んでもらいたい一冊だ。 『オヤジ国憲法でいこう!』(しりあがり寿・祖父江慎著・理論社よりみちパン!セ・1,260円)も、子供向け人生指南書と言っていいかもしれない。まず、帯に大きく書いてある「若いって、ダメじゃん。」の一言が目を引く。オヤジ曰く、ヤングはちょっとしたことで悩んだり、混乱したりする「不自由な生き物」なのだそうだ。そんな悩めるヤングたちに、「なんでもあり」で「自由」な存在であるオヤジから、説教ともアドバイスともとれる、一風変わったメッセージが贈られる。「個性ハ必要ナシ」「友達ハ大切ナモノニアラズ」という条文には、一瞬面食らうかもしれないが、よく読むと説得力があり、「さすがオヤジ」と膝を打つこと請け合いである。 もちろん、若者にメッセージを贈ってくれるのはそんなオヤジばかりではない。『学生諸君!』(光文社・1,680円)は、夏目漱石や宮沢賢治、井上陽水など、古今の作家やアーティスト総勢32人が、若者向けに語った言葉の数々を紹介する。今までありそうでなかったような本だ。「諸君はこの颯爽たる/諸君の未来圏から吹いて来る/透明な清潔な風を感じないのか」と始まる宮沢賢治の詩に、背筋が伸びるような心持にさせられ、「いまは世間の人の真似をするな。美しいものの存在を信じ、それを見つめて街を歩け。(中略)学生の期間にだけ、それは在るのだ」という太宰治の言葉には、背中をどんと押されたような気持ちになる。誰の言葉がもっとも心に響くだろうか。
村上龍の『13歳のハローワーク』(幻冬舎・2,730円)がベストセラーになったのはもう二年近く前だろうか。近頃は3年で会社を辞める若者が話題になる一方で、フリーターやニートと呼ばれる定職につかない(または、就職難等でつけなかった)人も増えている。我々の親世代が築き上げた「会社勤めの父、専業主婦の母」という図式は明らかに破綻しつつあるのだ。そんななかで子どもに「働くこと、お金を稼ぐこと、仕事を通じて社会に貢献すること」をどう教えていけば良いのだろう。 まず根本的な問いとして、人にとって「働く」とは何を意味するのか。いきなり実践論になってしまうが『働くって何だ――30のアドバイス』(森清著・岩波ジュニア新書・819円)では「働くことは朝に起きること」だという。発売されてすぐ日経新聞で「就職活動中の大学生にこそ読んで欲しい」と絶賛され、本来は中学生くらいの子を対象にした本であるのに大人達がこぞって読んだという一冊だ。この本ではインターンシップを受ける際の心構えやコツが詳しいので、学校でボランティア実習や職業体験をする際にはきっと役に立つだろう。自分の働く姿をイメージすることは、未来の設計図を描くことだ。自分はどんな仕事をして、どんな大人になりたいのか。一昔前の女の子なら「大きくなったらお嫁さんになるの」とでも答えたのだろうが、最近はそうも行くまい……と子供向けに書かれた結婚についての本を探したのだが意外とない。出産の本はたくさんあるのだが、どれもいきなりお父さんとお母さんがいるのだ。知りたいのはその前段階では? そんな中、女の子に特化した読み物は『コドモであり続けるためのスキル』(貴戸理恵著・理論社よりみちパン!セ・1,260円)『10代のうちに考えておくこと』(香山リカ著・岩波ジュニア新書・777円)くらいだろうか。出席番号も男女混合で育った今の若者は、社会の洗礼を受けて、初めて性差による違いを意識するらしい。けれど、性別はどうあれ一人前の大人としては食い扶持くらいは稼いでおきたいもの。「齋藤孝のガツンと一発シリーズ」からは『ちょっとお金持ちになってみたい人、全員集合!』(PHP研究所・1,000円)を紹介する。そもそも「お金」とは何なのだろう。それを著者は「信用をカタチに変えたもの」と説明する。つまりお金をたくさん持っている人は、たくさん信用されている人のこと。じゃあ、信用されるにはどうしたらいい? と次はおこづかいの使い方を伝授する。どうして衝動買いしたくなるのか、またお金の“使いどころ”についての話は欲しいモノが溢れている現代の子ども達には必要な教えだ。お金の教育のための本には他にも『お金とじょうずにつきあう本』(L.ジャフェ・L.サン=マルク著・永田千奈訳・晶文社・1,260円)がある。 さて、働いてお金を稼ぐにはどうすればいいのだろう? 子どもから見ると会社で働いていても、どこからお金が発生するのか、今一ピンと来ないものだ。ビジネスとは何か、会社経営とは何かを簡単かつ詳しく説明してくれるのが『ジョニー君のレモネード屋台 13歳から学ぶビジネスの仕組み』(ジェフ・M・ブラウン著・草鹿佐恵子訳・バジリコ・1,575円)だ。日本ではあまり馴染みがないが、アメリカではレモネードを売るのは子どもがお小遣いを稼ぐ定番の方法なのである。レモネードを売りながら、値段の決め方・コマーシャルの方法など、本格的なビジネスの手法を学ぼう。ビジネスは大人だけのものではないのだ。 会社で働く人はみんな正社員だった時代とは違い、いまはフリーターやパートなど様々な働き方をする人がいる。ここ最近の仕事論にはフリーターについての記述は欠かせない。子ども達の将来の判断材料となるように、それぞれの長所短所について教えたいが、大人の我々でさえちゃんと理解しているとは言いがたい。そんな時こそ親子で同じ本を読んでみてはいかがだろうか。『14歳からの仕事道』(玄田有史著・理論社よりみちパン!セ・1,260円)では「フリーターではダメなのか」とテーマをあげつつも、結局は20代で何をしたかかが重要だと言う。フリーターとは何なのかを知っている子どもにはこちらを読んでもらいたい。 フリーターという言葉は知っていても、まだ良く知らないの、という場合は前述の『ちょっとお金持ちになりたい人、全員集合!』がおすすめだ。フリーターと正社員の違いについて、給料や待遇だけでなく、その理由まで説明してくれる。単に正社員になれなかったのではなく、自分のやりたいことが会社勤めではなかった、という場合もあるのだ。 考えてみたら、小さい頃から会社員を目指す子どもも少ないのではないだろうか。憧れの職業はお花屋さん・ケーキ屋さんのように身近な物だったり、本で読んだ宇宙飛行士ではなかったか。本で読むと、その職業が立体的にイメージできる。伝記でもいいし、マンガでだって仕事の楽しさや大変さがわかる。 最後に、働くというとつい会社員を想像しがちだが、職人や芸術家のように、技能を身につけて働くこともできる。『 町工場・スーパーなものづくり』(小関智弘著・ちくまプリマーブックス・1,260円)では、職人の姿がとても魅力的に書かれている。下町の小さな町工場から、NASAのロケットの部品や新幹線など最先端の世界的技術が生まれているのだ。しかも、それを実現させたのは誰かが思いついたほんの少しの工夫。自分のアイディアが形になり世界中で使われるなんて、働いていてこんなにやりがいのあることはないだろう。職人とは、工夫し続ける人のことだ。職人の数が減少しているというが、仕事の一つとして多くの人に志して欲しいものだ。生き生きと働く人の話は、読み物としても面白いものだ。どうしてこの人は働き続けるのだろう? 楽しいから? お金が稼げるから? そう思ったら今度は、自分は何のために働くのか・そして何をして働くかを考える番だろう。
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