書標 2006.10月号
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祭 り


 日本は世界的にみても祭りの多い国だ。神社を中心とした祭りから、商店街による祭り、行政による町おこしの祭りまで数え切れないほどの祭りがある。一説によると、1年に開催される祭りの数は30万にものぼるという。今回は日本人にとって馴染み深い「祭り」を取り上げる。祭りとは何か、その歴史や起源について、そして全国各地の祭りについて、そして祭りの諸々の要素についての書籍を順に紹介していこう。

祭りとは

  『祀りを乞う神々』(田中宣一著・吉川弘文館・5,040円)に拠って民俗学的に「祭り」の定義をしておくと、祭りとは「超自然的な霊格、すなわち神の存在を信じる人々が、これらの霊格に対しさまざまなかたちで関わろうとする集団的行為である」という。八百万の神という言葉のとおり、日本人にとっての神は多い。家や地域の安寧なら祖先神、生業の発展なら農耕の神、漁業の神、商売繁盛の神、その他疫病を防ぐ神に祈願し、お供え物をする。これらの儀礼行為が集団的に行われる。それが祭りなのである。

 そして現在われわれが目にする祭りの多くは近世を通じて発展したものである。柳田國男が「日本の祭」(『柳田國男全集十三巻』(筑摩書房・7,875円)に収録)で述べているように、本来神に対する儀礼行為であった祭りが、都市の発生と発展の中で見物人が生まれ、祭りの主体が人々の耳目をひく華やかな行事へと変わっていった。こうした都市祭礼としての祭りの変遷について、三重の四日市を事例に論じているのが『都市祭礼の民俗学』(東條寛著・岩田書院・6,195円)である。都市祭礼の発展を通して神輿や山車がより華美になっていき、現在我々が目にする祭りのように賑やかな楽しい行事としての祭りになっていった。

  『神の国の祭り暦』(勝部正郊著・慶友社・3,990円)によれば、神に安寧や五穀豊饒を祈願するために神酒や神食を「たてまつる」ことが、祭りの語源だという説があるという。祭られる神は天照大神のように名のある神から、山、水、火の神のような自然神、祖先の霊などさまざまである。古代から日本では稲作を中心とした農耕が人々の生活の中心であり、季節の移り変わりそして農作業の節目に応じてさまざまな祭りが行われるようになった。『稲の祭と田の神さま』(酒井卯作著・戎光祥出版・2,310円)では、そうした稲作と豊作を祈願する儀礼行為としての祭りの関係性について、民俗学的調査に基づいて論じられている。

 稲作に必要なものは水、雨である。すなわち雨乞いの祭りは重要な行事であった。『祈雨祭』(任章赫著・岩田書院・2,940円)では、日本と韓国の農耕文化に深く根付く雨乞いの祭りが、民俗学的視点から比較されている。

 日韓の祭りの間に共通点がみられるように、祭りを東アジア的な広い視点から研究した書籍をここで挙げておこう。『日本の祭りと芸能』(諏訪春雄著・吉川弘文館・3,150円)は日本の祭りや芸能の源流を探る。東アジアの各地にその原型ともいえる民俗芸能が残っているというのが興味深い。『渡来の祭り渡来の芸能』(前田憲二著・岩波書店・2,940円)は、日中韓の祭りを記録し続けてきた映画監督である著者が、祭りから日本文化の源流に迫った1冊である。研究者とは異なった視点が新鮮である。

  『日本の祭り文化事典』(全日本郷土芸能協会編・東京書籍・26,250円)は、地域に根付く祭りや芸能を最新の調査に基づき集大成した1冊である。ユネスコ世界遺産がそうであるように、歴史的建造物などの有形文化財ばかりが注目されがちである。だが、日本では能、歌舞伎、祭りといった無形文化財も保護されている。本書はこうした精神的な文化遺産である無形文化財の重要性を訴えている。

  『祭りの事典』(佐藤和彦・保田博通編・東京堂出版・2,940円)は1年に日本各地で行われる祭りが、月別に紹介されている。祭りの運営団体の連絡先やウェブサイトなども掲載されているので、小さな祭りを調べる際に便利である。その上で雨乞い、天神信仰、御霊信仰、神輿などの祭の道具といった祭りの基盤ともいえる要素についても解説されている。それによると、神輿や山車は祭を華やかに彩る風流物である。神輿は神の乗り物であるとされ、その渡御によって人々は神の恩恵を感じることができる。山車は山、笠、鉾、人形などを飾った屋台であり、これもまた神の依代とされ、巡幸することで神の加護を地域にふりまくことができる。現在行われている祭りの多くが、この山車や神輿が主体となっている。よって次に、山車祭り、神輿祭り、そして踊り祭りと、祭りを種類別に紹介していこう。


山車祭りと神輿祭り

 山車祭りは曳山祭りとも呼ばれ、有名で華やかなものが多く人気がある。山車とは屋台に車輪がついたもので、人が引くことで動かすことができる。京都祇園祭の山鉾や岸和田だんじり祭のだんじりが山車である。『山・鉾・屋台の祭り』(植木行宣著・白水社・16,800円)は山車祭り研究の集大成ともいえる一冊で、都市祭礼としての祭りの実態に迫っている。飾りによって山車を分類している点も興味深い。

 三大曳山祭りの一つに挙げられるのが毎年7月に催される京都の祇園祭である。祇園祭は、正式には祇園御霊会と呼ばれ、その起源は平安時代に遡る。政争に敗れ死んだ貴族たちの御霊、すなわち怨霊を都から送り出すための祭りであった。神が乗る神輿が都を遊幸し、人々は各町から山鉾を出して歓迎する。14世紀から始まったこの山鉾巡行が祇園祭の最大の見所である。祇園祭の歴史や起源については『中世京都と祇園祭』(脇田晴子著・中公新書・819円)が詳しい。町人が主体となる祭りが何百年も続いたのは驚くべきことだ。『写真で見る祇園祭のすべて』(島田崇志著・光村推古書院・1,995円)は、山鉾がカラー写真で紹介されており、ガイドブックにもってこいの一冊。

 埼玉の秩父夜祭も三大曳山祭りの一つに数えられている。毎年12月に開催され、市内を練り歩く笠鉾や屋台、そして屋台で演じられる歌舞伎が特徴的である。『秩父夜祭』(さきたま出版会・1,260円)片手に夜祭り見物に行ってみて欲しい。川越祭の山車も豪華であり、江戸の祭りの様相を色濃く残しているのが特徴である。『川越祭』(川越祭を学ぶ会編・街と暮らし社・1,470円)は曳き出される山車を細かく紹介するとともに、川越祭の歴史、その見所が押さえられている。

 青森のねぶた(ねぷた)祭りは、人形で飾られた山車である「ねぶた」と勇壮な太鼓や笛が奏でる「ねぶたばやし」で名高い。ねぶた(ねぷた)祭りは特定の祭りを指すのではなく、青森県各地で夏に行われる祭りの総称である。その呼び方には諸説あるようで、青森では「ねぶた」、弘前では「ねぷた」と呼ばれるようである。『ねぷた』(松本明知著・津軽書房・1,680円)は、ねぷた祭りの呼称が、「ねぶた」ではなく「ねぷた」であるとし、ねぷた祭りの起源に迫った一冊である。『龍の伝言 ねぶた師列伝』(澤田繁親著・ノースプラットホーム(池袋本店のみ取り扱い)・2,000円)では、ねぶた師である著者のねぶたへの想いが熱く語られている。

 岸和田のだんじり祭は、だんじりの豪快なぶつかり合いで全国的に有名だ。『岸和田だんじり祭 だんじり若頭日記』(江弘毅著・晶文社・1,680円)は、だんじり祭を取り仕切る若頭である著者が内田樹のブログに2年にわたって綴った日常を、1冊の本にしたものである。本書を読むと、著者が本当に年がら年中だんじりのことを考えていることが伝わってくる。

 その他全国各地に山車祭りがあり、それに関わる本も多い。山形の『新庄山車まつり』(荒木直之著・東北出版企画・1,260円)や、石川の『加越能の曳山祭』(宇野通著・能登印刷出版部・2,625円)などがある。

 山車祭りでは、山車が中心になるため神輿が簡素になってしまうことが多いが、江戸天下祭では山車とともに豪華な神輿も見られる。『四〇〇年目の江戸祭禮(まつり)』(江都天下祭研究会神田倶楽部編・武蔵野書院・3,000円)は天下祭の写真集で、その魅力を余すことなく伝えてくれる。『江戸神輿(みこし)図鑑1』(木村喜久男編・アクロス・5,250円)、『江戸神輿(みこし)図鑑2』(鏑木啓麿編・アクロス・3,675円)は、それぞれ深川、鳥越の祭りの神輿を写真を交えて紹介している、祭り好きにはたまらない1冊。

 神輿のぶつかり合いの豪快さで名高いのが、姫路の灘けんか祭りである。『播磨の祭り』(北村泰生写真・藤木明子著・神戸新聞総合出版センター・1,995円)には、けんか祭りの他播磨の祭りが網羅されている。






踊り祭り
 
 哀切な胡弓の調べと幽玄な踊りで全国的に有名な八尾の「風の盆」を紹介しているのが『風の盆 おわら案内記』(成瀬昌示編・言叢社・2,100円)、『越中八尾おわら風の盆』(北日本新聞社・2,100円)である。豊作祈願、風災害の無事を願うことから「風の盆」と呼ばれている。この祭りにはどこか幻想的な雰囲気が漂っており、後ほど紹介するように多くの小説の舞台にもなっているのも頷ける。

 踊りの祭りで最近注目されているのが、毎年6月の札幌で行われるYOSAKOIソーラン祭りだ。この祭りは1人の学生のひらめきから15年前に始まったもので、高知のよさこい祭りの鳴子と北海道の漁師の歌であるソーラン節をミックスさせた祭りである。学生を中心とした一種のNPO(非営利組織)によって運営される若者主体の祭りである。『YOSAKOIソーラン祭り』(坪井善明他著・岩波アクティブ新書・798円)にはソーラン祭りが生まれ発展していく軌跡が描かれている。札幌での成功もあって全国各地でソーラン祭りが行われるようになり、学校教育の場でも、体力づくりや集団行動を通しての学級づくりにも活かされようとしている。『YOSAKOIソーランの教え方・指導者用テキスト』(YOSAKOIソーラン祭り組織委員会編著・明治図書出版・2,205円)や『“よさこいソーラン”新ドリル』(割石隆浩著・明治図書出版・1,680円)は教師用の実務書だが、一般にも汎用性がある。YOSAKOIソーランに挑戦してみたらどうだろうか。本家本元高知のよさこい祭りについて書かれているのが『これが高知のよさこいだ!』(岩井正浩著・岩田書院・1,890円)だ。よさこい祭りが戦後復興の中生まれ、今日にいたるまで発展していった姿が描かれている。


各地の祭り

 その他全国各地に数え切れないほどの祭りがある。祭りは地域の誇りであり、主にその地域の地方出版社から祭りの紹介本やガイドブックが出版されている。以下で簡単に紹介していこう。『祭りを旅する1関東・甲信越編2近畿・中国編3東海・北陸編4四国・九州・沖縄編5北海道・東北編』(日之出出版・各1,980円)は全国各地の祭りを網羅しているシリーズ。『四季を彩る関東お祭りガイド』(レブン著・メイツ出版・1,575円)、『日帰りで行く関東の祭り』(杉岡幸徳著・かんき出版・1,260円)は江戸3大祭りを始め関東の祭りを網羅しているガイドブックだ。関東一の祇園と呼ばれている熊谷のうちわ祭りを紹介しているのが『熊谷うちわ祭り』(新島章夫著・さきたま出版会・1,260円)である。

 岸和田のだんじりだけが大阪の祭りではない。日本3大祭りに数えられる天神祭も見逃せない。元禄文化の隆盛に伴い、都市祭礼としての天神祭は豪華絢爛になっていった。それらが描かれた屏風や掛軸が残っており、『天神祭−火と水の都市祭礼』(大阪天満宮文化研究所編・思文閣出版・2,730円)はそれらの絵画資料に基づいた研究書である。天神祭の往時を思わせる一冊だ。『なんででんねん天満はん 天神祭』(今江祥智/文・長新太/絵・童心社・1,575円)は天神祭をめぐるファンタジー絵本で、読むと心がなごむ。その他大阪の祭りを紹介しているのが『大阪の祭』(旅行ペンクラブ編・東方出版・1,575円)である。

 『京都の夏祭りと民俗信仰』(八木透編著・昭和堂・2,415円)には、京都には庶民による素朴な夏祭りもあることが強調されている。その中には愛宕山で行われる火伏せの祭りが代表的なものであり、山車や神輿が行き交う派手さはないが、庶民の素朴な信仰心をうかがい知ることができる。生粋の京都っ子である著者が、京都の祭りの魅力と民衆のエネルギーを知ってもらいたいという気持ちが伝わってくる1冊である。

 奥三河の山村に伝承されてきた花祭りを紹介しているのが『花祭論』(愛知大学綜合郷土研究所編・岩田書院・2,310円)である。この祭りは鬼が登場することで知られ、折口信夫も大きな関心をよせた。その他、『房総の祭りと芸能』(田村勇著・大河書房・5,880円)、『大和の祭り』(高田健一郎著・向陽書房・3,262円)、『丹波ののぼり祭り』(園田学園女子大学歴史民俗学会編・岩田書院・1,470円)、『岐阜県の祭り屋台』(水野耕嗣著・岐阜新聞社・6,800円)『一度は見ておきたい大分の祭り』(石松健男写真・おおいたインフォメーションハウス・1,200円)などは比較的手に入れやすい祭り本である。各地の祭りを見ていくと、祭りの歴史を知ることは、その地域の歴史や人々の暮らしを知ることと同じだとわかる。それだけ祭りという行事がその地域の人々の暮らしに密着したものだということだろう。


珍しい祭り

 諏訪大社の御柱祭は日本3大奇祭にも数えられる珍しい祭りで、諏訪大社で行われる祭礼のなかで最大のものであり、6年ごとに催される。御柱と呼ばれるモミの大木を山中から切り出し、社殿に神木として建てる祭りだ。『お諏訪さま』(鈴鹿千代乃他編・勉誠出版・1,260円)はこの御柱祭以外にも諏訪の歴史や信仰について述べられており、諏訪大社自身による監修の一冊である。『御柱祭 火と鉄と神と』(百瀬高子著・彩流社・1,680円)は御柱祭の起源が縄文時代にあると信じる著者による歴史読物である。縄文時代の信州は大いに繁栄した時期があった。縄文遺跡や独特の縄文土器にインスピレーションを受けたのだろう。

 茨城で行われる珍しい祭りに金砂大祭礼(大田楽)がある。この祭りはなんと72年に1回行われるという。東西2つの金砂神社がそれぞれ大行列を組み、日立市水木浜までの間を1週間かけて往復する磯出行列が行われる。この祭りについては『金砂大祭礼の民俗誌』(榎本實著・那珂書房・1,680円)が詳しい。ちなみに2003年に行われたため、次に金砂大祭礼が行われるのは2075年だ。

 『日本トンデモ祭』(杉岡幸徳著・美術出版社・1,575円)には、神奈川のかなまら祭りや愛知の田縣豊年祭といった男根まみれの祭りから、ひたすらに神輿を破壊し続ける能登のあばれ祭り、乞食を崇拝する岐阜のこじき祭りまで、変な祭りが集められている。みうらじゅんが日本全国のとんまな祭りを集めたのが『とんまつりJAPAN』(集英社文庫・580円)だ。また、日本各地の奇祭を集めた本が復刊された。『日本の奇祭』(合田一道著・青弓社・2,100円)である。奇祭といっても、実際に祭りが行われている地域の人々にとっては毎年当たり前のように行われている祭りであり、彼らの言い分では全く奇祭ではないという。





祭り小説

 ここで趣向を変えて、文学作品の中の祭りについてみていこう。祭りというハレの日の非日常性は、小説の場面としてよく利用されてきた。
 『祭りの場、ギヤマンビードロ』(林京子著・講談社文芸文庫・1,260円)収録の「祭りの場」は、長崎での被爆体験を抑制された文章で淡々と描く著者の代表作。祭りの喧騒の中に佇み、かの日を思い未来を思う。だがそれは悲観的な未来ではなく、祈りに満ち、後世に希望を与えるものである。戦争の生々しさを思い出しながらも、若者の囃子の響く祭りの場が、生きる力強さを伝えてくれる。

 『極楽、大祭、皇帝』(笙野頼子著・講談社文芸文庫・1,365円)収録の「大祭」は、押さえつけられた現実からの解放の象徴として祭りが描かれ、大祭さえ来れば自分は自由になると憧れ続ける小学生の話だ。支配者である両親から祭りの参加を禁止され、絶望した子はついに、親殺しの妄想に捕らえられる。それもある意味、解放なのかもしれない。だが、子が望んだのは、祭りでの昇華である。それ程に人を惹きつけてやまない祭りの、狂信的な部分がうまく描かれている。

 男女の恋の場としても祭りは重要である。『風の盆恋歌』(高橋治著・新潮文庫・460円)は、年に1度の越中おわら祭りに忍び逢う、1組の男女の物語だ。互いに思い合いながら、20年の月日を離れて過ごした2人は、不倫という形で本物の愛を知った。提灯に灯がともる風の盆の夜に、胡弓の音に乗せて恋歌が流れ出す。2人を見守る村の人々の、暖かい視線がなんだか懐かしい。舞や着物の祭りの描写が細かく、美しく幻想的な小説である。

 少年たちの友情を描いた『蛍川・泥の河』(宮本輝著・新潮文庫・380円)においても、祭りは重要な場面である。初めて自分でお金を使う子どもたちは、その小さな冒険を通して成長していく。これだけあれば焼きイカとおもちゃが買えるのに、などとあれこれと考え計算する中で、社会を学んでいくのだろう。祭りが終わって去っていく友達を追いかける主人公の必死さに、遠い昔を思い出す。

 『夏と花火と私の死体』(乙一著・集英社文庫・440円)は、死体からの視点で語られた珍しいミステリー。殺された少女をめぐり、奔走する兄妹の4日間を追う。大人たちの裏をかき死体を隠し通す2人に、はらはらさせられる。そして無事に迎えた祭りの日、死んだ少女は花火を見ながら何を思うのか。

 ミステリー界の大御所達を忘れてはならない。西村京太郎の膨大な数の著作の中には「祭りシリーズ」なるものがある。『青森ねぶた殺人事件』(文藝春秋・840円)、『祭ジャック・京都祇園祭』(文春文庫・540円)、『風の殺意・おわら風の盆』(文春文庫・540円)では、おなじみの十津川警部が活躍する。また山村美紗にも『京都葵祭殺人事件』(ワンツーマガジン社・860円)など、祭りを舞台にした著作がある。内田康夫の著作からは浅見光彦シリーズの『風の盆幻想』(幻冬舎・1,680円)を挙げておこう。





祭り諸々

 祭りをより楽しむために、『懐かしの縁日大図鑑』(ゴーシュ編・河出書房新社・1,575円)や『縁日お散歩図鑑』(オオカワヨウコ著・廣済堂出版・1,680円)などどうだろう。わた菓子やリンゴ飴、金魚すくいに射的などお馴染みの屋台のから、ひよこ売りやかた抜きなど、消えてしまった屋台まで幅広く紹介されている。また、縁日の歩き方や出かける前の準備、テキヤさんとの付き合い方など、縁日を楽しむための知識もいっぱいだ。カレンダーも付いているので、いろいろな縁日に出かけてみよう。

 行く祭りが決まったら、次は服装。やっぱりここは和装でいきたいが、慣れない着物はすこし心配、というあなたへ。『平成着物図鑑』(君野倫子著・河出書房新社・1,575円)は、現代風着物生活のススメである。思い切った組み合わせや、かわいい小物の紹介に、こんなに楽 しいなら着てみようかなという気になる。着付けは思ったより難しくないので、手軽に着物に親しんで欲しいと著者は述べている。

 『袢纏(はんてん)ものがたり』(優しい食卓・15,000円)は江戸のものを中心に全国の祭袢纏をカラーで紹介した一冊。江戸の粋を感じることができる。
 着物が無理でも、何か和風のものを身につけてみたい人へは、手ぬぐいがお勧め。『かまわぬの手ぬぐい使い方手帖』(河出書房新社・1,470円)は、代官山にある手ぬぐいの専門店「かまわぬ」の手ぬぐい活用法550。頭にかぶる、物を包むだけでなく、着物の半襟に、壁掛けに、とその多様な用途に驚く。ブックカバーに、なんて活用法もあった。

 いよいよ出かけた先では、お好み焼き、たこ焼き、焼きそばにいか焼きといった露店が並び、香ばしい匂いにつられてついつい手が出てしまう。『たこやきのナゾ』(熊谷真菜著・草土文化・998円)は、たこ焼きの種類や作り方、その美味しさの謎に迫る。たこ焼きにはラムネ!などのタコラム(たこに関するコラム?)も入り、大阪弁での解説イラストには笑ってしまう。これを読んで、露店の店主とたこ談義をしてみよう。

 お腹が膨れたら、挑戦したくなるのが金魚すくいなどのゲームだ。いくつになっても本気になってしまうのは、祭りの魔力だろうか。そんな熱狂の冷めた翌朝、意外と困るのが、すくってきた金魚のその後である。『さかなクンの金魚の飼い方入門』(さかなクン監修・あおば出版・800円)で、魚チャンピオンから正しい世話の仕方を教わろう。子どもにも読みやすいので、親子で一緒に楽しむことができる。

 元来、縁日とは神や仏と縁がある日のことで、観音や薬師、菩薩といった本尊と縁がある日、また高僧の命日などが、各寺社で縁日と定められている。縁日になると祭礼や法要が行われ、参拝に多くの人が訪れる。そのため、参拝客目当ての露店や市が立つようになり、にぎわいを見せるようになった。全国どこかで行われている縁日を渡り歩いて商売をする人々をテキヤと呼ぶ。芸大を中退し、見世物小屋、農業と遍歴し、テキヤとなった著者の半生を綴る『間道――見世物とテキヤの領域』(坂入尚文著・新宿書房・2,520円)は、底抜けの芸や見る人の胸ぐらを掴むような演出を見せては消えて行く彼らの、長い長い旅を伝える。

 祭りとはハレの舞台であり、参加する人々にとっては日々の生活から解放される一時でもある。老若男女が楽しむことのできる行事、それが祭りである。郷土の誇りである祭りには、その伝統を次代へ伝えようとする老荘の者たちの心意気が感じられる。
 もちろん今回紹介したのが祭り本の全てではない。全国的に流通していないために紹介できなかった本もある。地方出版社から出版され、その地方でしか売られていない祭り本がたくさん存在していることだろう。あるいは祭り大好き人間がその思いを形に自費出版した本も多い。そういった本を探しつつ祭りに参加し、祭りを堪能して欲しい。