書標 2006.7月号
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トイレあれこれ



 トイレは普段何気なく使い、あるのが当たり前となっているため、この我々の生活を支える大切な存在について、深く考える機会はあまりないかもしれない。『トイレのなぞ48』(日本トイレ協会編・草土文化・1365円)は、子どものために書かれたトイレの本であるが、大人でも十分に楽しめる内容だ。以下でご紹介する様々な、そして非常に興味深いトイレの本の導入部分を総括したトイレ学の概説書ともいえる。今回の特集では、我々人類とともに歩んできたトイレのあれこれをご紹介いたします。

古今東西トイレ

 トイレというと、薄暗くてなんだかこわいところというイメージが強いが、世界のトイレグラフティ』(オーム社・2940円)を眺めていると全く違ったトイレ像が浮かび上がってくる。西洋のトイレ・尿瓶の美しい形や、細部にまでこだわって描かれた綺麗な模様は、優雅な食卓を飾る食器にも引けをとらない。『ヨーロッパ・トイレ博物誌 新装版第2版』(INAX・5040円)は、1988年に開催された「ヨーロッパの古典トイレ展」のカタログを兼ねて出版されたものである。前半はヨーロッパのトイレの歴史などの詳細な解説、後半はカラー写真によるトイレの紹介となっている。大判なので、それぞれのきらびやかなトイレ写真が異常なまでの存在感を発揮している。同じシリーズの『日本トイレ博物誌』(INAX・5040円)は、日本各地の城や邸宅に備え付けられているトイレの写真を解説とともに紹介している。西洋のゴテゴテと飾り付けられたトイレをきらびやかと表現するならば、日本の場合は殺風景ではあるがこざっぱりとした清潔感を感じる。

 『世界のトイレ快道を行く』(坂本菜子著・TOTO出版・1529円)は著者が撮った写真とともに、自身の見て回った1200ヶ所以上にものぼるトイレの見聞録となっている。

 トイレにまつわるエピソードは秘め事ながら誰もが興味を禁じえないものである。古代ヨーロッパではトイレに入るのに税金がかかった、豪奢なヴェルサイユ宮殿は糞尿のにおいがプンプンしていたなど高貴な方々の信じられないトイレ模様を暴露しているのがやんごとなき姫君たちのトイレ』(桐生操著・TOTO出版・1020円)である。

 『トイレの歩き方 びっくり世界紀行』(青春文庫・540円)はトイレを知ることはその国を正確に知る手っ取り早い方法だという主張のもと、エジプトの有料でトイレを片付けてくれるペットボトルおじさんや、洗面所をトイレ代わりに使うフランス人の話を紹介する。この類の本はいくつもあるが、そのネタの量で前出の二作にも勝っているのは『トイレは笑う 歴史の裏側・古今東西』(プランニングOM著・TOTO出版・1020円)だろう。その内容はヒトから動物まで洋の東西を問わず百話! トイレ雑学の決定版である。




トイレにとっての金魚のフン

 トイレといっても便器そのものを語るだけではその実体は浮かび上がってこない。トイレに必要不可欠なもの、トイレットペーパー。トイレットペーパーが生まれたのは実はほんの150年ほど前のことのようだ。それ以前、我々人類が使っていたものというのは一体何なのだろうか。『図説排泄全書』(原書房・3360円)によると古代ギリシャ人の場合は、なんと拭いていなかったそうだ。また本書は、スイスで開発中のエコトイレ「レーザー便器」についてなど古代から現代にわたる排泄にまつわる一切が書かれた充実の1冊である。

 『落し紙以前』(論創社・1890円)を書いた斉藤たま氏は自身の幼いころ、母がふきの葉っぱでお尻を拭いていたという記憶をきっかけに落し紙(トイレットペーパー)の研究を始める。日本各地を旅し、人々が何でお尻を拭いてきたかを明らかにしている。

 トイレへと排出されるうんちたちについての本は厖大にある。うんちがなぜ大切なのかといえば、健康のバロメータともなるからだ。『ウサ子の祝便ノート』(石倉ヒロユキ著・地球丸・1400円)は女性の敵、便秘とうんちによる健康管理などが書かれている。また『ウンココロ』(実業之日本社・1365円)では、回虫博士の藤田紘一郎氏とイラストレータ寄藤文平氏の強力タッグによってしあわせウンコ生活を指南してくれる。何故本屋に行くとトイレに行きたくなるのか、などのミニ知識まで網羅した、ウンコの専門書である。

 放出された排泄物の行方は下水道だ。下水という言葉の起源が17世紀の江戸にあることが明らかにされている『江戸の下水道』(栗田彰著・青蛙房・2520円)によると、下水といえばトイレの中身が流れるところというのは現在の感覚であり、流されたのは生活排水で糞尿は貴重な肥料とされていたことが紹介されている。下水に排泄物を流すようになったことは我々の生活を簡便にしたが、『トイレ考・屎尿考』(日本下水文化研究会屎尿研究分科会編・技報堂出版・2310円)を読むと下水処理がはらむ問題についてがわかる。書き残されてくることが少なかった下水文化を、文学・芸能・歴史資料などを用いて解説し、最新技術や危機に直面している水資源の問題にも言及している。

 日本のトイレと言えば、腰掛タイプの洋式としゃがみこみスタイルの和式の二つに分類ができる。そのいわゆる和式の座り方をアジア特有として一冊の本としてまとめたのがアジアに見るあの坐り方と低い腰掛』(丸善ブックス・2415円)である。現在もインド人・中国人・韓国人…アジアのいたるところでその姿勢は見かけられるが、椅子やベッドが深く生活に根付いている現在の欧米人にはない文化だという。

 トイレは、男性用と女性用が分けられているのが一般的である。その際の目印となるのがトイレマークである。『トイレマーク見てある記』(大熊昭三著・文芸社・1260円)ではありふれていると思いがちだが、その土地土地によって違うトイレマークを気ままな一人旅で見て回った紀行文である。





トイレの学問

 日本では「妊婦がトイレの掃除を良くすると良い子が生まれる」などの古い言い伝えが存在する。『怪異の民俗学8 境界』(柳田国男ほか著・河出書房新社・4200円)の中では飯島吉晴氏が民俗学における厠研究をしている。不浄、汚穢といったイメージとともに、トイレが創出の場であり、トイレが厠神の宿る、神聖な異界と交わる地点とされたことなどがわかる。

 『糞尿の民俗学』(礫川全次著・批評社・5250円)では、日本とインドに共通する糞尿の呪力という俗信や、厠神とは何か、ということなど、糞尿の研究をするにあたって必要となる基礎的な資料がまとめてある。前著の姉妹編である『厠と排泄の民俗学』(礫川全次著・批評社・3990円)は近代日本における糞尿利用とそれにともなう近代日本人の糞尿観の変遷に焦点を当てている。またこの二つの資料叢書の解説だけをそれぞれ抜粋した『土俗とイデオロギー』(批評社・1890円)、『民俗とナショナリティ』(批評社・1785円)は価格的に安いので気軽に読める。

 江戸時代の女性の排泄事情を中心に書かれた『江戸のおトイレ』(渡辺信一郎著・新潮選書・1155円)では「屁が出そう小便おしみおしみたれ」などの古川柳が珍しい絵図とともに紹介される。ヨーロッパで糞尿が窓から捨てられていた頃、江戸では上手に肥料として再利用していたことも明らかになっている。
 屎尿のリサイクルはかつて、当たり前の考え方であった。リサイクル法として良く知られているのが、豚に処理させるやり方である。これはアジアでよく見られる手法だが、『沖縄トイレ世替わり』(平川宗隆著・ボーダーインク・1680円)からはこの豚小屋とトイレが併設されたフールという糞尿処理施設について知ることができる。本書ではまた、沖縄の水洗トイレと米軍の関係など、沖縄のトイレ事情を余すことなく紹介している。

 アジアのトイレの現状を調査する『アジア厠考』(勁草書房・2940円)では、いわゆる文化人類学の領域となるが、これを出もの経済学「厠学」と呼ぶ。洋式トイレへと移行していくアジアのトイレと、その中でも未だ残り続けるインドのバンギー(カースト制における、屎尿処理をする職業集団)などを記録している。
 『スリランカ古代装飾トイレの謎 仏教と遺跡めぐり』(蝶谷正明著・TOTO出版・1020円)は、スリランカの古代遺跡発掘調査に携わった著者によって書かれたものである。そこで巡りあった豪華なトイレ遺跡に深い感銘を受け、研究に邁進した四年半が綴られている。土の中から掘り起こされた一片の遺物をもとに、そのものの起源を推理する環境考古学者の書いた本『環境考古学への招待 発掘からわかる食・トイレ・戦争』(松井章著・岩波新書・777円)では、遺跡の土の分析により古代トイレを突き止めた話が取り上げられている。

 道具学という立場から、トイレを考察したのが『おまるから始まる道具学』(村瀬春樹著・平凡社新書・882円)である。日本の男性トイレの前にはめ込まれた厠ぞうりや、西洋ではトイレがなかったので尿瓶が使われていた、など和洋問わずトイレの秘密にせまる。

トイレと旅

 海外を旅して苦労をすることといえば言葉の問題もあるが、習慣の違いで戸惑うことも多い。そんなカルチャーショックのひとつとしてよく言われるのがトイレの問題だ。旅人はトイレの武勇伝で評価できるとも言える。

 東方見便録』(斉藤政喜・内澤旬子著・文春文庫・630円)は、アジアの旅におけるガイドブックには出ていない、あらゆる排泄に関する情報をまとめた画期的な純・トイレ探訪記である。書き手の実体験と細かなイラストが魅惑のトイレ世界へ読者を誘う。

 西洋のトイレは基本的にいわゆる洋式トイレが一般的だが、アジアのトイレはそれぞれの国が独特の形式をもっている。中でも我々日本人が多く驚かされているのが、中国のトイレのようだ。『とり急ぎ上海から「新・新中国」の混沌』(趙夢雲著・田畑書店・1890円)は、汚いと内外の観光者から評される上海のトイレ事情をレポートしている。景観を損なうという理由で大幅に数が減らされた公衆トイレやイメージアップのために作られた高級有料トイレ、用を足し手を洗っていると背後から現れ、肩を揉んだりおしぼりを出すホテルのトイレにおける過剰サービスなど、上海のトイレが時々刻々と変化していることがわかる。またうんちネタにも定評がある椎名誠氏も『砂の海 楼蘭・タクラマカン砂漠探検記』(新潮文庫・460円)で中国の壮絶なトイレ体験を語っている。日本人だけではない。中国に憧れて北京に留学した、スウェーデン人の著者が書いた『カタリーナ、中国人社会にふみこむ 外国人が知っておきたい中国人と付き合うコツ』(カタリーナ・リリーフック著・はまの出版・1680円)では、トイレ作法をはじめ、中国のあらゆる文化にカルチャーショックを受けつつも逞しく中国人社会に溶け込もうとした様子が愉快に語られている。「漫画も描ける謎の旅人」小田空氏は『中国、なんですかそれは?』(旅行人・1470円)で2002年に「世界トイレ機構(W.T.O.)」に加盟し、水洗のドア付き文明トイレの道というトイレ革命の道を歩んで行く中国のトイレ文化を憂える。

 ところかわって、パリの有料トイレで冷や汗をかいた話を披露しているのが中村うさぎ氏の『パリのトイレでシルブプレ〜!』(角川文庫・420円)である。

トイレと子ども

 現代を生きる我々はマナーとして、ところ構わず排泄行為をしていいわけではない。子供たちにも適切な、用を足す場所を教えなくてはならない。
 みんなうんち』(福音館書店・880円)は、五味太郎氏の力強いタッチの絵でヒトを含め色々な生き物がどんなうんちをするのかを教えてくれる。
 また日本トイレ協会主催の「学校トイレ出前講座」の講師を務める村上八千世氏が書いた『うんぴ・うんにょ・うんち・うんご』(ほるぷ社・1260円)は子どもたちが気持ちよくうんちをするための、うんちを楽しむ本である。4種類のうんちの特大ポスター付きなのも魅力のひとつ。ウンチやトイレを知るのに、この2冊以上にすてきな絵本はないだろう。

 おしっこはトイレでしなくてはならないということを覚えた子どもは、しばしばそれを強迫観念として感じ夢にまで見る。『もっちゃうもっちゃうもうもっちゃう』(土屋富士夫作絵・徳間書店・1470円)はそんな誰にでも記憶のあるエピソードを絵本にした話である。『オシリカミカミをさがせ!』(リンデルト・クロムハウト文・朔北社・1260円)はトイレの排水溝からきてオシリにカミつく怖いやつの正体を少年ユスが暴くという絵本である。トイレに流してよいものについての倫理観を養ってくれる。『ちょっとだけパンツをはいてとなりのトイレに行きました』(小椋貴子先生と子どもたち著・フロネーシス桜蔭社・1000円)は、日々の出来事が純粋な子どもの視点で書かれた詩集。子どもはトイレネタをあっけらかんと話してくれる貴重な存在だ。

 絵本を読むことなどで自然と身についてくるのがトイレや排泄の知識だと思っていたら大間違いだ。『からだから出る「きたないもの」研究』(ぱすてる書房・2100円)が出版されたことは、教育者の立場からこれらについて公に教えることが可能であると物語っている。

 子どもにとってトイレは一人ぼっちになる怖い場所である。そんなわけで『怖くてトイレに行けない話』(二見WAiWAi文庫・550円)などの怪談集を読んではおびえる。またトイレの怪談もたくさん存在する。中でもトイレの花子さんは怪談界のアイドルだ。花子さんの話が載っているのは『放課後のトイレはおばけがいっぱい』(ポプラ社文庫・630円)である。このようにして子どもはトイレに対して畏怖の念を持ち、やがてはトイレとよき付き合いをする大人へと成長していくのだろう。






トイレの匠

 職人というのはその仕事にこだわりをもつもの。トイレの世界にも、熱き思いを胸に様々なトイレプロジェクトを敢行する人々がいた!

 JR御茶ノ水駅のトイレ壁画を書いて脚光を浴びた松永はつ子氏の『トイレのお仕事 ニューヨーク・トイレ再生物語』(集英社新書・714円)では、ときに悩み、ときにはトイレで食事をし、前歯を折るアクシデントなどに直面しながらも、トイレを快適空間にしていくトイレ壁画デザイナーの日々がいきいきと綴られている。同じくトイレに情熱を傾ける女性の話が『私の人生は「トイレ」から始まった!』(ポプラ社・1365円)である。こちらはトイレプランナー、「トイレの何でも屋さん」となった白倉正子氏が自身のこれまでと、トイレ大学を設立し、トイレにまつわる分野を学問化したいという野心あふれる将来の夢を語る。
 『トイレになった男 衛生技師トーマス・クラッパー物語』(ウォレス・レイバーン著・論創社・1575円)は近代において初めて水洗トイレを発明した男の汗と涙の奮闘記。

 トイレの汚い・臭い・暗い・怖い、これを総じて4Kと呼ぶそうだが、こういったトイレの主たるイメージを想起させるのは公衆トイレかもしれない。『公共トイレ管理者白書 もう公衆便所なんて呼ばせない』(オーム社・1890円)は「公共トイレ」という新しい概念のもと、清潔で使いやすいトイレの設計・管理が行われていることを写真やデータなどで分かりやすく紹介している。いかに管理者たちが苦労しているかが良く分かり、使用者側の意識改善にも一役買うだろうという1冊である。

 トイレの改修によって荒れた学校を正常化した伝説的実話をまとめたのが『トイレをきれいにすると、学校が変わる』(里内勝著・学事出版・1890円)である。積極的に子どもたちをトイレ掃除に参加させたことは、いじめや非行の温床であるトイレをクリーンなイメージへ転換し、生徒の積極性をも引き出すことに成功した。トイレの性質をよく理解しうまく利用したこの校長先生はすごい!

 災害時のトイレの問題はきわめて重要なことだという。『トイレが大変! 阪神・淡路大震災と新潟県中越大震災の教訓』(山下亨著・近代消防社・1680円)によると近年日本で起きた大震災では、断水や停電で水洗トイレが使えずに食事やトイレを我慢した人々が、心筋梗塞や脳梗塞を起こす2次災害を招いたという。災害時のトイレ権をどう保障するかは、政府による対策も大事だが、各人の十分な認識も大切なようである。

 トイレの衛生管理のひとつ、寄生虫の駆除もトイレのイメージアップのひとつとなるだろう。『寄生虫博士の中国トイレ旅行記』(集英社文庫・520円)は、驚きのトイレ文化をもつ中国のトイレを改善すべく、中国へ行った寄生虫博士、別名トイレット博士鈴木了司先生がどっぷりと中国のトイレにはまり、馬桶やお尻丸出しトイレについて紹介してくれる。同じく鈴木先生の『トイレと付き合う方法学入門』(朝日文庫・632円)はまさにトイレの指南書といえる。トイレでの作法や専門分野の寄生虫の話から、日本のトイレの歴史と世界のトイレの比較分類、はたまたトイレの未来についてまで余すことなく語ってくれる。
 まだまだトイレの先生がいた。昭和7年の『厠攷』刊行以来、様々なトイレ本を世に輩出してきた李家正文氏。『トイレットで語ろう 李家正文対談集』(相模書房・1365円)では50年という長い年月をかけて著名人と語り合ったトイレ対談を披露する。

 「だって、医学的には大事な事ですから。“トイレ”って。」とまえがきを締めくくるのは泌尿器科医であり、登山家でもある今井通子氏の著書『マッターホルンの空中トイレ』(TOTO出版・1020円)である。スイスの名峰マッターホルンの斜面に設置された標高2、3000メートルの空中トイレの体験談や、不便なトイレへの提言などが書かれている。

 プロフェッショナルとはいっても職業は皆ばらばら、しかしトイレやウンチへの熱い思いにより結成された出口問題研究会のはばかりながら』(集英社文庫・480円)は様々なトイレに関する情報交換と仰天の活動をレポートする。中でも面白いのは立派な作家は独自のトイレ哲学を持っているという話だ。『ロシアにおけるニタリノフの便座について』(品切れ)の椎名誠氏や『深夜のヒマ人』(品切れ)の田辺聖子氏、『憤怒のぬかるみ』(集英社文庫・390円)の佐藤愛子氏など(上記は本書で話題とされた作品です)、これらの人々は作品を生み出すにために長時間便座に座っているからトイレ哲学を持っているのだ、などと話が広がっていく。

 文学作品にもトイレや排泄行為に関する興味深い描写はたくさんある。例えば、大江健三郎氏の『河馬に噛まれる』(講談社文庫・650円)は、浅間山荘事件に衝撃を受けて書かれた短編集。「河馬の勇士」と呼ばれる連合赤軍で糞尿処理をしていた若者の話だが、ここでも糞尿が重要なモチーフとして登場する。このような視点をもとにまとめられているのが『トイレ文化誌』(あさひ高速印刷・2100円)である。谷崎潤一郎氏の『蓼食う虫』など、小説の中に点在するトイレ文化をまとめた小論集となっている。特に興味深いのは、多くの作家が記述している京女の立小便に関する記述だ。

トイレのこぼれ話

 トイレというのはヒトと実に密接な関係にあるがゆえ、思いがけない本の中に面白エピソードとして出現する。ここではそんな本のホンの一部分を紹介しよう。人は外見から様々に分析することができるという逆説的な発想により話題を集めた『人は見た目が9割』(新潮新書・714円)では、男子トイレにおける立ち位置と排尿にかかる時間はパターン化することが出来るというトイレ内でのヒトの心理分析が紹介されている。また、NASAの宇宙船の中でのトイレがどうなっているのかということが書かれているのは『宇宙とNASAの面白雑学』(講談社+α文庫・780円)だ。女性は使い捨て液体吸収用トランクスをトイレ代わりに装着しなくてはならなく、その履き心地は「鞍にまたがったよう」で特大パンパースを履いてるような感じだそうだ。

 ユニセフの仕事は多岐にわたっているが、その中にはトイレづくりというものも含まれている。ユニセフの歩みとあまり知られてはいないその仕事について紹介している『ユニセフ最前線 戦争を止めた人間愛』(井上和雄著・リベルタ出版・1575円)にはユニセフ職員としてインドに赴任した著者によるトイレ普及活動の様子が綴られている。

 データによって素朴な歴史の疑問を解き明かす『データが語る日本の歴史 もっと知りたい』(ほるぷ出版・1890円)では肥料となった人糞がいくらだったか、が取り上げられている。

 子どものころ、「糞」という漢字は「米が異なる(変化する)」などと考えてこの漢字を覚えたが、この解釈はとんだ勘違いのようだ。この「糞」の字の由来や「厠」の字の由来などを、古き中国の小話を交えながら解説しているタブーの漢字学』(阿辻哲次著・講談社現代新書・756円)では、性や死・排泄などのタブーと思われがちな漢字の字源を知ることが出来る。雑学ではあるが、読むとちょっぴり賢くなって、ひとつひとつの漢字に愛着がわいてくる。
 「みんなのうた」といえば言わずと知れたNHK教育テレビの子供向け歌番組だが、その中の「むかし、トイレがこわかった」という歌をご存知の方はいるだろうか。『「みんなのうた」が生まれるとき』(ソフトバンク新書・735円)ではこの歌を作ったのが漫画家楳図かずお氏であり、その歌が作られるまでの番組製作者と楳図氏の苦労話が語られている。




 身近であるがゆえ、あまり深く考えられていない。しかしながら、時には淫靡な笑いを禁じえない秘密の話だったり、人間の生活文化に深く根ざしたありがたい話だったりするトイレの話。あなたも一冊手にとりフンフンと読めば、あっという間にトイレのうんちく王になれるでしょう。