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第二次大戦後の1947年以降に生まれた人たちは、2007年ごろから定年を迎える。戦後のベビーブームに生まれたこの団塊の世代が大量に退職することにより、何が変わるのか。団塊の世代とは、狭くとれば1947年〜1949年、広義だと1947年〜1951年ごろに生まれた人のことをいう。 今から30年前の1975年〜1976年に雑誌に連載されたものを集めた『団塊の世代』(堺屋太一著・文春文庫・500円)。この小説によって「団塊の世代」という言葉が生まれた。これには彼らの将来・80年代から2001年までがいったいどのようになっているのかを分析した4編が収録されている。このような「予測小説」を、堺屋太一は「精密な事実分析の中に『あり得るべき事件――テーマ・マター』を挿入した場合、どんな状態が起こるかを可能な限り正確に予測し、具体的な人間ドラマ(つまり小説)で表現するもの」としているが、その予測はだいぶ当たっていて苦い。リストラ、子会社へ出向、日本に力があった頃を無為無策で過ごした責任世代だなどと、今まさに起こったり指摘されたりしているようなことが頻出する。労働人口の減少、消費や税収への影響、高齢化社会の到来など、団塊の世代が与えるインパクトがどれくらい大きいのか、今回は探っていきたい。
退職金をもらい、年金もおそらく満額もらえ、さらに遺産もころがりこむかもしれない団塊の世代はプチ富豪だとして注目されている。 『見えない若者市場より見えている団塊市場を狙え』(井徳正吾著・はまの出版・1575円)は、移り気でお金もあまり持っていない若者を狙うよりも団塊世代のほうがターゲットとして確実だとして、どうすれば中高年がお金を使ってくれるのかを指南する。ポイントとして「成功体験を刺激せよ」「ライフスタイル創造心を刺激せよ」「現役志向を刺激せよ」「誇りやプライドを刺激せよ」「うんちく志向を刺激せよ」などが挙げられている。アメリカのベビーブームと日本のベビーブームの違いなどマーケティング以外にも役立てられる歴史的知識も載っている。 『団塊サードウェーブ』(博報堂エルダービジネス推進室編著・2415円)は、これまでも「若者文化」をつくりだし、「ニューファミリー」など特徴的な消費行動を生み出してきた団塊世代によって、これから新しい大人文化が生まれていくだろうと予測する。数が多すぎてマスマーケティングしにくいといわれている団塊の世代の志向を若いころの流行を通して研究し未来の消費をよむ。 辻中俊樹著『団塊が電車を降りる日――トランジットライフマーケティング白書』(東急エージェンシー・2100円)は、団塊世代のなかで、特に男性の消費心理を研究している。 日経産業消費研究所編の『団塊世代男性が拓くシニア消費市場』(12600円)は団塊世代の意識や消費行動について、1937年〜1939年生まれにも同様の調査をして比較する。 いっぽう『団塊・シニアビジネス7つの発想転換』(村田裕之著・ダイヤモンド社・1680円)は、団塊の世代をひとかたまりで捉えるのは高度成長期の産物で、消費行動が多様化した現在にその見方は合っていないと主張している。発想転換のためのヒントを提案する。 また、『「都市型シニア」マーケットを狙え!』(山崎伸治著・日本経済新聞社・1680円)は、団塊世代は子どもも独立しているだろうからこれから「夫婦」単位での行動が増えるとして、インタビューも交えてマーケットの広がりを模索していく。 『図説団塊マーケット』(日本経済研究センター編・日本経済新聞社・1995円)は、団塊の世代が60代になることで消費だけではなく金融資産や住宅事情がどのように変化するのか、また団塊世代はこれからどう生きていこうとしているのかをアンケート調査などから提示する。研究者と企業の実務家のどちらもが論じる『団塊世代の定年と日本経済』(樋口美雄ほか著・日本評論社・3360円)は、消費や雇用ばかりではなく企業経営や不動産市場への影響についてもプラスマイナス両方の面を考察している。 『まだ間に合う!団塊世代のマネー対策 じっくり挑戦インターネット株式投資』(インプレス・1365円)は、引退後の団塊世代に株をすすめている。株とはどういうものなのかということから、株のインターネット取引について、値上がり銘柄、株式用語などを初めて株を買う人でもわかりやすいように一通り説明していく。
戦争を知らない世代・団塊の世代はどんな人生を送ってきたのだろうか。成長する過程でテレビ、洗濯機、冷蔵庫が家にきて、その後は車まで。そんなにモノが増えていった人生を送る世代はこれから先にはないだろう。 団塊世代の子ども時代〜思春期である昭和30年代の東京下町をノスタルジックに描いた映画「Always三丁目の夕日」は去年公開された。オフィシャルガイド(メディアファクトリー・1400円)やオフィシャルフォトブック(日本テレビ放送網・1700円)など関連本も人気だ。映画とはまた異なる味わいの原作コミックの西岸良平著『夕焼けの詩 三丁目の夕日』は続編も多数出版されている。映画化にあわせ、映画と関連した部分だけを集めた『三丁目の夕日 特別編』(小学館・500円)も発売された。 団塊世代と馴染み深いキーワードをクイズ形式で紹介する『団塊部長攻略講座』(DECO編・東京書籍・1260円)はくだけた雰囲気の本。「赤胴鈴之助」「月光仮面」「力道山」「三種の神器」などを説明してくれ、当時の世相の解説も付けられている。これを若い世代に読んでもらえばダジャレや死語も使いたい放題。また若い世代にとっては団塊世代と仲良くなるきっかけづくりに役立つ。 学生運動のデモなどで追われた学生の逃げ場にもなったというジャズ喫茶。1960年代と1970年代前半のジャズ喫茶を描いたのが『昭和ジャズ喫茶伝説』(平岡正明著・平凡社・1890円)。学生運動にも深くかかわっていた評論家の著者が青春をすごしたジャズ喫茶を、オーディオや音がどのようだったかだけではなく自分がジャズ喫茶で何を考えていたのかまでを記す。『青春デンデケデケデケ』(芦原すなお著・河出文庫・515円)は、ラジオから流れるベンチャーズを聴いてバンドを結成する少年たちの話で、著者の自伝的な物語。1965年の春、四国のお話だ。 初版は1966年の発売である、五木寛之著『青年は荒野をめざす』(文春文庫・570円)はトランペットをかかえてユーラシア大陸をさまようジュンの物語。ジャズと放浪の人生。 1953年生まれの四方田犬彦著『ハイスクール1968』(新潮社・1680円)は、進学校で学んだ著者の高校時代の自伝。ビートルズのシングルが発売されるたびに買い集め、「COM」や「ガロ」など新しいマンガに触れた日々。 学生運動の吹き荒れた時代を知ることができる小説として、日本版「ライ麦畑」ともいわれ、芥川賞を受賞した庄司薫著『赤頭巾ちゃん気をつけて』(中公文庫・620円)がある。学生運動が激しく、東大の入試が中止になった年の青春小説。三田誠広著『僕って何』(角川文庫・399円)も芥川賞受賞の学生運動の時代の青春小説で、田舎から東京にでてくることになった主人公の今風にいえば自分探し小説。 柴田翔著『されどわれらが日々』(文春文庫・470円)も学生運動の時代の大学生を主人公とした小説。 1969年に鉄道自殺をした高野悦子著『二十歳の原点』(新潮文庫・420円)は、死後に日記をまとめた本。1971年のベストセラー。 映画化もされた村上龍著『69』(集英社文庫・460円)は、長崎県佐世保の高校生時代を描いた著者の自伝的小説。 『安田講堂 1968-1969』(島泰三著・中公新書・1029円)は、全共闘と機動隊のあいだで起こった闘いについて、「本郷学生隊長」として安田講堂に立てこもった著者が37年前の記憶をたどる本。1968-1969年の年表や図版も多数収録されている。写真集『東大全共闘・68-70』(平沢豊著・春風社・2940円)も出版されている。『東大落城』(文春文庫・540円)は、警備幕僚長としてその警備にあたった佐々淳行による記録。双方の認識の食い違いがわかる。 1970年に赤軍派のメンバーが「よど号」をハイジャックした事件については、『「よど号」事件122時間の真実』(久能靖著・河出書房新社・1680円)や、犯人たちのその後を取材した『宿命―「よど号」亡命者たちの秘密工作』(高沢皓司著・新潮文庫・900円)など多くある。 管理人の妻を人質にして連合赤軍メンバーが立てこもった「あさま山荘事件」の、同じく佐々淳行による記録が『連合赤軍「あさま山荘」事件』(文春文庫・540円)。TV中継もされ、今ではオウム真理教の事件などとよく比較されるこの事件については、事件当時未成年で赤軍に参加していた著者による『連合赤軍少年A』(加藤倫教著・新潮社・1470円)や、坂口弘著『あさま山荘1972 上下』(彩流社・各1937円)、連合赤軍幹部の永田洋子著『十六の墓標 上下』(彩流社・上巻1575円・下巻1890円)など、これも数多く出版されている。 坪内祐三の『1972』(文藝春秋・1890円)は、そのあさま山荘事件のあった1972年の出来事を、1958年生まれで、1972年に14歳だった著者が振り返る。 学生運動については、ヤクザの息子として生まれ、グリコ森永事件の犯人「キツネ目の男」に擬された宮崎学の自伝『突破者 上下』(幻冬舎文庫・各600円)を読むとその雰囲気がよくわかる。 『ぼくたちの七〇年代』(平哲郎著・晶文社・1785円)は、「宝島」の編集者などを経験した1947年生まれの著者が、70年代の思い出を振り返る。テレビの仕事もしていた著者らしくタモリや赤塚不二夫など有名人がたくさんでてくる。 1947年生まれの団塊世代・沢木耕太郎がインドからロンドンまでをバスで行こうと思い立ち旅立ったのは1974年の26歳のとき。旅行記を小説にした『深夜特急1〜9』(新潮文庫・420円〜460円)は今ではTV番組のネタ本としてのほうが有名なのかもしれない。 このような時代を生きた団塊世代によく読まれた本には何があるだろうか。まずマルクスの『資本論1〜9』(大月書店・1050円〜1260円)。新訳の『資本論 第一巻 上下』(筑摩書房・上巻3360円・下巻3675円)も去年出版された。読むのを挫折した人、難しすぎるという人は宮沢章夫著『「資本論」も読む』(WAVE出版・1680円)で悩みを共有してみたらいかがだろう。1958年生まれの著者も、読んでから死にたいと思いながらも難しくて苦悩している。 1966年に来日したジャン・ポール・サルトルの著作もよく読まれた。『存在と無』は新装版(人文書院・上下巻・各7980円)も刊行されている。 アンドレ・ブルトン著『ナジャ』(岩波文庫・735年)は、「私とは誰か?」を追求したシュールレアリスム小説。 吉本隆明著『共同幻想論』(角川文庫・567円)は「国家とは何か」を論じている。 ついに文庫化された埴谷雄高の『死霊1〜3』(講談社文芸文庫・各1470円)は存在の秘密や宇宙についての形而上学小説。 「ぼくは二十歳だった。それがひとの一生で一番美しい年齢だなどとだれにも言わせまい。」というフレーズも有名。ポール・ニザン著『アデンアラビア』(晶文社・1890円)で読むことができる。
なぜだか団塊世代に対して攻撃的な本は多い。 『昔、革命的だったお父さんたちへ』(林信吾、葛岡智恭著・平凡社新書・777円)は、現在40代の著者たちが団塊世代を総括する。帯には「年金持ち逃げと言われますか? それとも有終の美を飾りますか?」とある。学生運動に明け暮れた青春時代から、バブルのつけを下の世代におしつけて逃げ切ろうとする現在までを振り返る。 翻訳家としても有名な1954年生まれ・金原瑞人の『大人になれないまま成熟するために』(洋泉社新書y・777円)は、団塊世代のように、歳はとっても大人になれない大人が現在多いが、そういう人がどのような青春時代を過ごしてきたのかを明らかにしている。 10年以上も前、バブルのころ、栄養ドリンクのCMで「24時間戦えますか」というものがあった。『24時間戦いました』(布施克彦著・ちくま新書・714円)は、安月給で24時間戦って何も悪いこともしていないはずなのに、団塊世代が邪魔者扱いされリストラのターゲットにされるのはどうしてなのか1947年生まれの著者が論じている。これから団塊世代はどう生きていったらいいのかを指南する。 チェース・マンハッタン銀行の元人事部長・梅森浩一著『「クビ!」論』(朝日文庫・525円)も団塊世代に厳しい。しかし、一千人以上のクビを切ったという著者は、仕事をしない、あるいは仕事ができなくても会社に居座る人間にも厳しいが、成果主義などと言いつつ会社に都合のいい制度ばかりをアメリカから輸入してくる企業にも厳しい。クビにする側とされる側の論理がわかる。 『団塊の世代とは何だったのか』(由紀草一著・洋泉社新書y・777円)は、団塊の生きてきた戦後を振り返り反省している。団塊世代がどうして嫌われるのか。1954年生まれの著者は、団塊世代は全共闘などに全く責任をとっていないと主張し、その世代に対して厳しいが、それは戦後の歴史全体にも言えることだとしている。 パオロ・マッツァリーノ著『反社会学講座』(イーストプレス・1500円)は、巷に流布する紋切型の言説を検証し「おなじ理屈ならこうも言える」とまぜっかえす本。その中の一節「キレやすいのは誰だ」では、現在少年犯罪の凶悪化や増加が叫ばれているが、1960年代の13歳以下の少年による殺人事件も54件と多かったことなどをデータを基に検証していく。 『団塊世代・新論――“関係的自立”をひらく』(天野正子著・有信堂高文社・2940円)は、団塊世代の男性のジェンダー意識、会社からの自立、夫婦について調査している。この本にも他の世代からの団塊世代に対する悪口が紹介されているが、ひとくくりにされてきた「団塊」は本当に一枚岩なのかどうかを研究している。 『団塊の世代』では団塊世代の暗い未来を描いていた堺屋太一だが、2005年に出版された世代論『団塊の世代「黄金の十年」が始まる』(文藝春秋・1680円)では、希望があるように書いている。再就職し年金を子や孫にやらないようにすれば、これまでも新しい価値観を創造してきた団塊の未来は明るいそうだ。 団塊世代が団塊世代について言及する本も多い。 三田誠広著『団塊老人』(新潮新書・714円)は、1948年生まれの著者からもうすぐ定年を迎える自分の同級生たちに向けたメッセージ。「妻に嫌われない方法」「子供と親にお金を使わない」など実感のこもったテーマに分かれている。 残間里江子著『それでいいのか蕎麦打ち男』(新潮社・1470円)は、ゆとりや家族志向などと言いつつ、蕎麦を打ってまわりの人間に振る舞うような団塊世代は結構多いが、もう一歩ふみこんで何か勝負してみろと、1950年生まれの著者が叱咤激励する。 『沈黙の艦隊』で有名なかわぐちかいじも1948年生まれだ。『回想 沈黙の団塊世代へ』(ちくま文庫・714円)は自伝で、漫画や同世代への思いを綴る。 『銀幕同窓会――高田文夫と映画育ちの団塊者たち』(白夜書房・1500円)は2000年映画館文芸座復活記念のトークイベントを記録した本で、団塊ご用達の懐かしい映画について団塊世代の映画を愛する有名人が語り合う。参加したのはイッセー尾形、北野武、大滝詠一、中野翠など。 1949年生まれで、コピーライターとして活躍していたがリストラされ離婚・ホームレスになったこともあるという関節夫が詠んだ短歌を集めたのが『たそがれはまだ早い――団塊のお父さん応援短歌』(アートン・1000円)。渋谷道朗によるイラストもついている。 1948年生まれの藤原伊織著『テロリストのパラソル』(講談社文庫・650円)は、江戸川乱歩賞と直木賞を受賞した小説で、学生運動に参加していたが今はアル中のバーテンダーである主人公が、新宿中央公園で爆弾テロに遭遇し、犯人探しをすることになる。 1948年生まれの森巣博著『蜂起』(金曜日・1890円)は「週刊金曜日」に連載された小説で、日本というシステムを壊すために蜂起を決意する主人公は団塊世代を熱くさせることでしょう。 矢作俊彦著『ららら科學の子』(文藝春秋・1890円)は、1968年の大学紛争の中、中国にわたって文化大革命などを体験した主人公が30年ぶりに日本へ帰ってくるというストーリー。 先月出版された『団塊ひとりぼっち』(山口文憲著・文春新書・935円)はずっとシングルで生きてきた団塊世代の著者がその世代の人生をまるごと振り返るエッセイ。
団塊世代は定年を迎えても仕事をしなくなるとは限らない。 |