―2点目の『資本主義卒業試験』は、単純に題名だけ見ると試験問題と答えが並んでいるのかなと思うのですが、どういう内容なのでしょうか。
柿内:僕がいままで作った中で一番の変な本になると思うんです。これは正解を出す本ではありません。
成長する、そして勝つ、売り上げを伸ばすことが至上の資本主義は、社会主義とか共産主義とかよりもマシかもしれないけれど、どうやら多くの人を幸せにするシステムではない、ということに最近やっとみんな気づいてきた。勝つか、降りるか。間にいる人が一番苦しむ仕組みで、どんなに働いても働いても幸せになれない。今、特に若い人が苦しみの渦中にいます。
勝てもせず、ドロップアウトもできず「社蓄」のように働かされる。生きづらいこの仕組みの中でどうにか生きていく。そのために「何を失ってはいけないか」を考える哲学の、小説マンガなのです。
―新書で小説でマンガ、なんですか?
柿内:はい。著者の山田玲司さんは漫画家なんです。光文社新書で一緒に『非属の才能』という本を作り、本屋大賞の「中2賞」を受賞しています。
本屋大賞の「中2賞」とは、書店員によって選ばれた「多感な時期でありながら本から遠ざかっている中学2年生男子に、発行日やジャンルを問わず薦めたい本」(本屋大賞公式サイトより)のこと。
『非属の才能』はどう生きるかについて考える本で、今回も同じです。
冒頭の序章と、13章立ての各章の頭に3ページつづマンガが入っています。
資本主義的には、夢を持って、夢を叶えることが良いことだ、って決めつけられる。でも、この本の主人公は、「それはウソだ、むしろ、夢をかなえたことで苦しくなる社会だ」と気付き、資本主義卒業試験を受けるための旅に出るのです。ここまでマンガで描かれ、そしてページをめくると小説が始まります。
そのほかに、エコの国から亡命してきた人きたワーキングプア、エゴの国から亡命してきた人は売上至上主義の商社マンをはじめとする、日本の縮図と言えるような問題を抱えた登場人物が解放されていきます。読者はだれかしら、どこかしらにシンパシーを感じると思う。お金よりも大事なものがあって、その中で何を失ってはいけないか、という事をこの本で語り、ラストはベタですが、自分で考えてもらいます。