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‐ 第11回 未来の世界の…科学本棚 ‐

子どもの頃に胸おどらせたマンガはありましたか?実は、瀬名秀明書店には、数々のマンガが並んでいます。
ご存知の方も多いかもしれませんが瀬名さんは藤子・F・不二雄先生の大ファン。何回かご紹介している著作『おとぎの国の科学』の一番最後に収載されたエッセイ「遥かなる白亜紀の大空」でこのように語っています。

――私はドラえもんから「友達」というものの本当の意味を教わり、その友達と一緒に「とっても遠くて近い世界」へ旅することの素晴らしさを教わった――(p.276)

だから、藤子作品を紹介する瀬名さんの口ぶりは、ひときわ熱いのです。

ナビゲーター 瀬名秀明(作家)

1995年に『パラサイト・イヴ』で彗星のごとく現れ、その後『BRAIN VALLEY』『八月の博物館』『デカルトの密室』など傑作SFを世に送り出す。 瀬名さんは薬学博士でもあり、2006年から 2009年まで東北大学で機械系特任教授も務めた。 近年、『おとぎの国の科学』『瀬名秀明ロボット学論集』『インフルエンザ21世紀』『未来への周遊券』(最相葉月との共著)など、科学読み物に力を入れて執筆している。
近著『ロボットとの付き合い方、おしえます』(大城譲司との共著、河出書房新社)、SFアンソロジー『NOVA3』(大森望編、河出書房新社)

印が瀬名さんのおすすめの本です。  印はほんのしるべ編集部おすすめの本です。


ジャングル黒べえ 『ジャングル黒べえ』 藤子・F・不二雄著 小学館

ついにあの封印作品が完全復活! 「よいこ」「幼稚園」連載版も含む、黒べえの全作品をこの一冊で読めます! 改めて読んで、なんとおおらかで楽しいマンガであったことかと思わず顔がほころびます。ベッカンコの神様、フィギュアがあったら家に飾りたいぞ。 なお大全集版『ドラえもん』第7巻では瀬名が巻末解説を担当しましたのでそちらもどうぞよろしく。


それでは、今月も文系人間が読んで面白い科学読み物の紹介をしていきます。

■私たちの生活に、とっても身近な大腸菌。病気の原因になるだけではなく、科学の進歩にもとっても貢献しているのです。


大腸菌 『大腸菌』 カール・ジンマー著 NHK出版

「酵母と大腸菌、どっちがかわいい?」とは、分子生物学を学ぶ学生の定番の話題。 たいていは酵母のほうがかわいいという結論に達しますが、この本を読めば大腸菌が盛り返すこと間違いなし。 遺伝子や進化など、重要な生命科学の研究は、大腸菌を調べることで発展してきたことが改めてよくわかります。 分子生物学を学んだ(あるいはこれから学ぶ)人にこそお薦めしたい好著。


■実は、日本は蝶の研究で世界をリードする存在。著者は建設会社に勤めながら蝶の研究に邁進し、ついには世界の蝶類研究で第一人者となった情熱の人です。


アゲハ蝶の白地図

『アゲハ蝶の白地図』五十嵐 邁著 世界文化社

まだ見ぬチョウを追ってフィリピン、イラン、はてはブータンの山奥まで! ヒルの大群に埋もれるインドの山を行き、インドネシアの小島では乗っていた飛行機がまさかの墜落。 アマチュア採集家のおじさんパワーが全編にわたって炸裂、学術用語も気にならなくなるくらいぐいぐい惹き込まれます。


■思わず「ああ、あの予定があったんだ、気が重い・・・」なんて暗くとらえがちな未来を、「楽しみだ」と認識するようになったら人生明るくなりますよね。 そんな「明るい未来」を記憶するためにはどうすればいいの?


『未来の記憶のつくり方』 篠原菊紀著 化学同人

パチンコの「海物語」がなぜヒットしたかを脳科学的に解明したことで有名な篠原菊紀さんによる、なかなかおもしろい脳の本。 「未来の記憶」とは未来の自分に自分の視点を同調させてゆくことで短時間に心の悩みを解決する方法。 脳を活性化するだけではだめ、活性化と沈静化のバランスが大切とのこと。庶民的な語り口で親しみやすいです。



さて。
瀬名さんのドラえもん好きの話を冒頭にいたしました。

実は、2011年3月5日より公開になる「映画ドラえもん 新・のび太と鉄人兵団〜はばたけ 天使たち〜」の公開に合わせて、 なんと映画の原作となった名作『のび太と鉄人兵団』を瀬名さんがノベライズした作品が発売になりました。
少年時代から、ドラえもんに幾度となく支えられてきた瀬名さんはまた、ご存じのとおりロボットに対する深い造詣を持ちます。 思い出の作品の奥の奥を読み、作り上げた「もうひとつの鏡面世界」、なんと本文は349ページに及びます。



小説版ドラえもん
のび太と鉄人兵団
藤子・F・不二雄 原作  瀬名 秀明 著

[ストーリー]
スネ夫のラジコンロボットがうらやましくてたまらないのび太は、どこでもドアで訪れた北極で巨大なロボットの部品を拾う。 「おざしき釣り堀」に「逆世界入りこみオイル」をたらして入り込んだ鏡面世界でロボットを組み立て喜ぶのび太。 しかしそのロボットは実はある企みのために、宇宙から地球に送り込まれたものだった…

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もしもロボットを自分の思い通りに動かせたら。そんな未来の夢を技術的な言葉も交えながらわかりやすく物語の中に織り込み、また、恐ろしい敵に追いつめられる場面の描写には思わず息をのむ。
これぞ瀬名秀明作品、と言いたいところだが、何よりも著者が大事に描き出すのが、友達の素晴らしさ、そして信じ合う心。 これが藤子・F・不二雄作品の素晴らしさなんだよ、というメッセージが全編に満ちている。
コミックよりも分厚くなった活字の束には、ドラえもんが、のび太が、しずちゃんが、スネ夫とジャイアンの気持ちが、そしてロボットたちの気持ちがたくさん詰まっている。 時に葛藤を抱えながらも、信じ、支え、助け合う気持ちが――。
友達でも、家族でもつまらないことでケンカもするし、気に食わないことなんてたくさんある。それでも、根っこのところではお互いを信頼し、思いやる心を忘れない、 こんな仲間に自分も入っていたいなと思う。 大人だって、「ドラえもん」を読んで泣いてもいいんですよね。
また、藤子・F・不二雄ワールドが大好きな人にはとっておきの仕掛けがあるので、お楽しみに!


そうそう、いまだかつてこんな魅力的なスネ夫に出会ったことは、私はありませんでした。